612
導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • コミュニケーション
  • 効率化
  • 最適化
  • コスト

クラリオン株式会社

 様に導入

経営基盤強化に資するグローバル PSI マネジメント システムの実現に向けて、現場に蓄積された "経験価値" を掘り起し、業務プロセスの本質的な改善に取り組む

写真:クラリオン株式会社 外観

クラリオン株式会社は、大きな変化の続く自動車業界にあって経営基盤をさらに強化するべく、さまざまな取り組みが進められています。その一環として、部分最適されてきた PSI マネジメントを、グローバルで一元管理するためのシステム構築に着手。時差をまたいで多様な意思決定者が絡み合う PSI を効率化するために同社では、独自に体系化した "Exアプローチ" を実践。膨大かつ複雑な「現状の課題」の整理とシステム概要の作成に Microsoft Visio を活用し、円滑かつスピーディーに上流の合意形成を達成しています。

<導入背景とねらい>
部分最適で進められてきた PSI マネジメントをグローバル規模で円滑化し、SCM を強化

写真:伊藤 智之 氏

クラリオン株式会社
生産技術本部
TSCM推進部 部長
伊藤 智之 氏

写真:光井 邦雄 氏

クラリオン株式会社
経営推進本部
情報システム部 マネージャー
光井 邦雄 氏

写真:中山 良輔 氏

クラリオン株式会社
経営推進本部
情報システム部
中山 良輔 氏

"車載情報機器メーカー" から "車両情報システム プロバイダー" への変革を掲げるクラリオン株式会社 (以下、クラリオン) では、2020 年に向けた経営基盤強化として、「Intelligent Safety (安全運転支援システム)」と独自の自動車向けクラウド情報ネットワーク サービス「Smart Access」事業の強化、および「コスト造成力向上」と「品質の革新」を推進。

2018 年 3 月期に向けた経営目標として、クラリオン グループの "連結営業利益率 5.0% 以上" を掲げ、全商品のコスト構造改革とグループ全体での SCM (サプライ チェーン マネジメント) の業務プロセス改革に力を注いでいます。

そうした取り組みの一環として、日本本社を中心として、北・中・南米、ヨーロッパ、アジア各国に広がる需要 / 供給領域の最適化に貢献する、グローバル PSI (Production Sales Inventory : 製造・販売・在庫) マネジメント システムの構築プロジェクトが、2013 年からスタートしています。
クラリオン 生産技術本部 TSCM推進部 部長 伊藤 智之 氏は、次のように説明します。

「製造・販売・在庫の管理については従来から、会社ごとに相応のシステム活用を行い、部分最適されてきました。しかし今、グループ全体の経営基盤強化を達成するためには、販売拠点から生産拠点までグローバルに、会社の壁を越えてシームレスに管理できるシステムを活用する必要がありました」。

海をまたいで分業するグループ会社を 1 つの PSI マネジメント システムでつなぐことで互いの稼働状況が可視化されると、需給調整業務上に発生する「需要の増減」や「生産の遅れ」といったイレギュラーへの対応がスムーズになり、機会損失などのロスを防ぐことができるようになります。

しかし、「地理的な距離」はもちろんのこと、「国や会社ごとの文化の違い」や「時差」など、さまざまな阻害要因が存在するグローバル ネットワークの全体最適を図ることは、容易ではありません。
加えて、課せられた目標も、非常に高度なものでした。

「目標は、在庫回転率 15 回転を達成することにあります。現時点で、当社の回転率が 8 ~ 9 回転。競合他社で、もっとも回転率の高い企業が、約 10 回転ですから、15 回転という目標は、高くて険しい場所にあります。この達成を支援するシステムを構築する以上、導入後になって各所から『意図と違う』といった意見が出てくるような状況は許されません。上流の合意形成を綿密に行う必要があり、難航していました」(伊藤 氏)。

そこで、クラリオンでは日立グループ全体で活用を期待されている「合意形成のための手法」を取り入れて、延 5 か月にわたってワークショップを実施。"超上流工程 (業務プロセス設計からシステム スコープとシステム要件定義までのプロセス)" から現状の課題整理と、目標に向けた要求設計を行いました。

その手法が、日立製作所が開発した "Exアプローチ" です。
この手法について、株式会社 日立製作所 ITビジネスサービス本部 ソリューション本部 Exアプローチ推進部 主任技師 後神 義規 氏は次のように説明します。

「"Ex" は、"Experience (経験)" を意味しており、私たちが "経験価値" と呼ぶ、『現場の想いや考え方』を汲み上げて、システム設計にまで活かしていくことを、とても重要視しています。そのためにまずは、関係者を集めたワークショップを開催し、それぞれが抱える現状の課題に関するヒアリングと議論を深く重ねることで、お互いの理解を徹底的に深めていきます。そうした整理されたフローを "グループの経営目標" という経営的な目線から俯瞰し、最適化に向けた合意形成を図っていくものになります」。

当然のことながら、クラリオン グループの PSI マネジメントのフローは膨大なステップから構成されており、PSI に携わる各社から挙げられる現状の課題は、複雑多岐にわたります。
Exアプローチの一環として業務プロセス モデルをドキュメント化するために、PReP (Products Relationship Process) モデル手法を採用しており、従来は Microsoft Excel や Microsoft PowerPoint がツールとして利用されてきました。
しかし、Excel のような汎用ツールでは、「とてもではないが整理しきれない」と言うのは、Exアプローチの共同開発者であり、PReP の開発者でもある有限会社ケイプラス・ソリューションズ 田中 康 氏です。

「従来は、PowerPoint でフロー図を描き、Excel シートに数値データを記述し、個別に編集、管理していました。しかし、グローバル PSI のようにスケールの大きな話を、間違いなく図面化し、印刷 / 更新 / 共有していくためには、機能が不十分で、管理も煩雑化してしまいます。専用ツールを開発することも考えられるのですが、時間もコストも限られていました。そこで、クラリオン における Exアプローチ実践のために、最小限のカスタマイズで、有効に活用できるツールを検討しました」。

そして、ケイプラス・ソリューションズより提案を受けて、日立製作所 ITビジネスサービス本部 ソリューション本部 Exアプローチ推進部が今回のワークショップで選択したツールが、Microsoft Visio Professional 2013 でした。

<システム概要と Visio 活用の成果>
独自に体系化したアプローチで浮き彫りにした業務プロセスを
わかりやすく整理・共有するために Visio を活用

写真:後神 義規 氏

株式会社 日立製作所 ITビジネスサービス本部
ソリューション本部
Exアプローチ推進部 主任技師
後神 義規 氏

写真:田中 康 氏

有限会社ケイプラス・ソリューションズ CEO
東京工業大学大学院情報理工学研究科
特任准教授
田中 康 氏

Microsoft Visio は、業務フローや組織図、ネットワーク図など、複雑な情報やプロセスを図式化し、わかりやすく表現できるビジネス用グラフィック ツールです。
クラリオンで行われた Exアプローチのワークショップでは、この Visio に対し、PReP の実施に適したアドイン機能をケイプラス・ソリューションズが開発し、活用しています。

PReP モデルの特長は、業務プロセスを「~する」というタスク視点からモデル化するのではなく、業務プロセスの意味を正確に把握して課題を掘り下げ、システムの要件定義につなげるために成果物視点からモデル化を図る点にあります。そのためにはまず、参加メンバーが各業務で積み重ねてきた経験を存分に伝え合い、闊達に議論を通じて、十分に理解を深めることが欠かせません。

クラリオンにおけるワークショップでは、Visio で描き、出力された業務プロセス モデルを基に、全員で分析を実施。広い会議室の壁一面に発言されたキーワードのメモが貼られ、議論に応じて縦横に整理され、並べ直されていきます。そうして、まとめられた結果は、書記役のメンバーが Visio の画面上にあるオブジェクトをドラッグ アンド ドロップで動かしていくだけで即時的に反映され、アップデートされていきました。

後神 氏が「Visio があればこそワークショップが円滑に進行し、足掛け 5 か月という短期間に、グローバル PSI という困難な課題の合意形成を図ることができたのでしょう」と振り返ると、ワークショップにおいて書記役を務め、Visio の操作を行っていたクラリオン 経営推進本部 情報システム部 中山 良輔 氏も、「今まで Excel で感じていたような苦労が一切なかった」と声を揃えます。

「これまで、私たちの部門でシステム開発を請け負う際にも、上流での合意形成時には Excel を使ってドキュメントを整えていましたが、Visio および今回開発したアドイン機能を活用すると、システム概要図や業務プロセス モデルの作成が容易で、ファイル間の整合性を保ったまま編集を重ねていくことができます。さらに、いつも使用しているジョブ ランチャートにまで一気に落とし込めますので、非常に便利です。今回の手法によってドキュメントの作成と管理に要する労力は、Excel と PowerPoint で作業する場合の半分程度で済むのではないでしょうか」。

Visio によって作成されたドキュメントは、ひと目でわかりやすく可視化された業務プロセス モデルに、詳細な属性まで記述されています。
クラリオンでは、このドキュメントを PDF 化して共有。普段は遠く離れた場所で勤務する参加メンバー間のコミュニケーションにも役立てていましたが、「活用の幅は、もっと広くある」と、後神 氏は言います。

「今後、たとえば Microsoft SharePoint を併用して、遠くにいるメンバーが同一の Visio ファイルを相互に編集、更新できるような環境を利用すれば、さらに円滑にプロジェクトが進行するかも知れません。そうした可能性まで用意されているのも、Visio の良いところなのだと思います」。

図.システム概要図

互いの業務現場への理解を深め、経営視点から業務を俯瞰し直す
独自のアプローチで、これまでにない気付きを獲得

システム開発を統括する立場として、このワークショップに参加したクラリオン 経営推進本部 情報システム部 マネージャー 光井 邦雄 氏は、Exアプローチについて、次のように振り返ります。

「当社の業務システムは、ほとんどの場合、業務部門の要望に沿ってフル スクラッチで開発してきました。その点において、従来から業務部門との距離は短く、コミュニケーションをとる機会にも恵まれてきたと思います。しかし、今回 Exアプローチを体験したことで、『従来は、業務部門が要求するタスクを追うことに捕われて、発想が制限されていたのかも知れない』という考えも生まれたほどです。それだけ、全員でグループの経営目標から業務を俯瞰して、プロセスの最適化に向けてシステムの概要を固めていくアプローチが刺激的で、有意義な体験でした」。

伊藤 氏も、Exアプローチを経験したことで、1 つ大きな気付きがあったと言います。
「一番発見があったのは、『言葉の定義』ですね。今までは、社内で話をしていたために通じていた言葉も、相手が変わると通じなくなってしまうことがありました。グローバル PSI のように大規模なシステムを定義していく上で、言葉の理解にズレがあっては台無しになってしまいます。その点、ケイプラス・ソリューションズさんにも入ってもらって、いろいろな角度から質問を重ねて要件を引き出してもらえたことは非常に良かったと思います。『一般的に見ても、業務のコアな部分ほど、言葉の定義が曖昧になることが多い』といった話も聞けて、とても興味深かったです」。

「今の時代は、IT システムなしで業務を行うことはできません。今回のように密度の濃いコミュニケーションと、対話の成果をわかりやすく整理できるツールを活用することは、今後のさまざまな開発にも応用できるのではないでしょうか。Exアプローチによって現場の課題意識を明確に共有し、私たちの社内に潜んでいた "解決策" を引き出せたことは、大きな収穫だったと思います。このプロセスを踏まえていなかったら、システム概要をまとめることも非常に困難だったでしょう」(光井 氏)。

<今後の展望>
24 時間 365 日止まらないグローバル PSI マネジメント システムで
クラリオン グループの SCM に新たな活力を注入

最後に、クラリオン グループにおけるグローバル PSI マネジメント システム活用について、「経営目標の達成に貢献するべく、継続的な改善などを続けていく」と、伊藤 氏と光井 氏は声を揃えます。

「グローバル PSI も、1 つのツールに過ぎません。システムが稼働を開始した後にどのように使いこなしていくか、あるいは、今後さらに改善されていく業務プロセスに合わせてどのように磨きこんでいくか。いずれにしても、システムの運用を続ける中で真価を発揮していけるよう、今後も取り組みを続けていきたいと思います。理想は、システムを介して "血の通った情報" と言いますか、各現場の経験やナレッジを共有していけるような環境ができあがることです。販売の現場で蓄積したナレッジを商品開発にフィードバックする。あるいは、開発の現場で突き詰めた商品の価値を、販売の最前線に正確に届けて、販売力強化につなげていく……。グループ全体でそのような、熱のある SCM の実践を目指していきたいと思います」(伊藤 氏)。

「私たちの立場から言えば、やはり 24 時間 365 日のシステム運用を、しっかりと実現していきたいという思いが一番ですね。当グループの販売拠点および生産拠点は、アジア、アメリカ、ヨーロッパに存在しています。時差を考えれば、本当に 24 時間止まることが許されません。非常に大変な責任を感じますが、挑戦を続けていきたいと思います」(光井 氏)。

全員の集合写真

コメント