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大府市教育委員会

 様に導入

モラルを含めた ICT 教育の実現へ向け、市内すべての公立小中学校に Surface Pro 3 を導入した大府市教育委員会。教員を交えたデバイス検討と密な研修プログラムにより、教員に支持される基盤構築を実現

写真:大府市教育委員会

愛知県大府市に 13 ある小中学校の
1 つである、大府市立大東小学校

知多半島の北端に位置し、緑豊かな自然に恵まれる愛知県大府市。同市では、2010 年に総務省が推進する ICT 教育 の実証プログラム「フューチャースクール推進事業」の実証校として大府市立東山小学校が選定されたことをきっかけとし、2015 年 9 月より、13 ある市内すべての市立小学校、中学校へ 2 in 1 タブレット デバイスを導入しました。

全校導入の背景は、授業効率や学習効果の向上もさることながら、児童生徒にとって ICT がすでに特別なものではなく普段の生活に入り込んでいることを受け、そこにおけるモラルや活用方法を併せて教育することが学校教育に求められることだと同市が考えた点にあります。2 in 1 タブレット デバイスには、学校生活において場所にとらわれない「携行性」と、ストレスなく用いることができる「性能」を重要視し、Surface Pro 3 が採用されています。現在の配置数は小学校 3 年生以上へ 3 人に 1 台の導入ですが、同市では 2016 年度に小学校 3 年生以上へ 2 人に 1 台、2017 年度には中学校のみ 1 人 1 台、そして 2018 年度には小学校 3 年生以上に 1 人 1 台と段階的に導入を進めることで、学校教育に求められる ICT 教育の実現を目指していきます。

<導入の背景とねらい>
モラルを含めた「ICT をツールとして有益に扱える人材」の教育には、児童生徒へのデバイス配付が必須だった

2015 年に市制施行 45 周年を迎えた愛知県大府市。「大府市まち・ひと・しごと創成総合戦略」の策定のもと、若い世代の転入を維持し、市民が住み続けたいと実感できる街づくりを推進する同市では、少子化が社会問題となる昨今においても、市内の児童生徒数が増加傾向にあります。

市民へ向けたさまざまな先進的な取り組みを行う大府市ですが、将来を担う子供たちに対しては、市を挙げて ICT 教育の推進を行っています。

大府市が ICT 教育において現在推し進めているのは、公立の全小中学校へのタブレット デバイス導入です。同市がタブレット デバイスの全校導入を注力したきっかけについて、大府市教育委員会 指導主事 (取材当時) 渡部 一夫 氏は次のように説明します。

写真:大府市教育委員会 指導主事 渡部 一夫 氏

大府市教育委員会
指導主事
渡部 一夫 氏


写真:大府市教育委員会 学校教育課 庶務施設係 係長 長坂 規代 氏

大府市教育委員会
学校教育課
庶務施設係
係長
長坂 規代 氏

「2010 年に、総務省が推進するフューチャースクール推進事業の実証校として、市内の東山小学校が選定されました。これは ICT 機器を使ったネットワーク環境を構築し、学校現場における情報通信技術面を中心とした課題を抽出、分析するための実証実験なのですが、そこで、児童生徒にとって ICT とはもはや特別なものではないのだと実感しました。すでに ICT は児童生徒の生活の中に入り込んでいますので、学校教育においてはその活用方法だけではなく、悪用しないためのモラル指導が求められます。そのためには常日頃から指導するべく、児童生徒へデバイスを配付したうえでの教育が必須だと考えたのです」(渡部 氏)。

もちろん、モラルや活用方法の教育のみでなく、普段の授業効率や学習効果の向上についてもタブレット デバイスは有効だと判断し、導入計画は進められたと、大府市教育委員会 学校教育課 庶務施設係 係長 (取材当時) 長坂 規代 氏は続けます。

「東山小学校で行われたフューチャースクール推進事業は、試行錯誤を重ねることで、授業効率や成績向上にも効果を出し始めていました。当市には小学校が 9 校、中学校が 4 校、計 13 の公立学校があります。大府市が一丸となって、ICT を有益に扱える人材を教育していくためには当然、東山小学校の実証実験で蓄積した知見や効果を市内の他の学校にも展開する必要があります。そこで、市内全校へのデバイス配付を、2013 年より検討開始しました」(長坂 氏)。

タブレット デバイスの導入においては、検討の早期段階から Windows を OS とした 2 in 1 タイプのデバイスを採用することが決定したと渡部 氏と長坂 氏は続けます。

「デバイス配付に際しては『そこで何をするか』が重要ですので、稼働させるソフトウェアの検討に向け、まずは OS を決定しなければなりません。始めは、教育市場での実績が多い iPad も検討したのですが、社会で広く使われている OS はやはり Windows です。当市の ICT 教育が目指すのは、学習効果面だけでなく、モラル教育を含めた『ICT をツールとして有益に扱える人材』の育成ですので、迷わず Windows OS を選定しました。また、PC 教室など特定の場所に限った形ではなく、学校生活のどんな場面でも ICT 教育を行うためには、2 in 1 タイプのタブレット デバイスがベストだと考えました」(渡部 氏)。

「これまで大府市では、多くの学校がそうしているように、デスクトップ PC を常設している PC 教室にて ICT の利用方法を教育してきました。当市では嬉しいことに児童生徒の数が年々増えているのですが、そうすると教室の不足も懸念されます。2 in 1 タイプのデバイスではキーボード入力も可能ですので、PC 教室で行っていたような授業も普通教室で行うことができ、PC 教室を普通教室へと転換できます。常日頃の教育シーンでの ICT 教育の実現だけでなく、教室の不足も同時に解消することができると考えたのです」(長坂 氏)。

<システム概要と導入の経緯>
各校から 2 名を募り編制した「大府市情報教育委員会」にて注視された性能と操作性。それを満たすとして、Surface Pro 3 を採用

大府市では、2013 年より 2 in 1 タブレット デバイスの機種検討と、そこに搭載するソフトウェアの選定が並行して進められました。ICT 教育の成否を左右する機種とソフトウェアの検討に際し、長坂 氏は「現場の教員が本当に有効だと判断する」ことを重要視したと振り返ります。

「各学校から教員を 2 人ずつ選抜した『大府市情報教育委員会』を編制して、デバイスとソフトウェアの検討を進めました。本当にデバイスを教育シーンで活用してもらうためには、現場の教員に参加してもらうのが一番ですので、定期的に会議を重ね、どのようなソフトウェアが必要なのか。またそこに求められるデバイスの要件は何なのかを協議していきました」(長坂 氏)。

大府市情報教育委員会において、デバイスの処理性能とインターフェイスの安定性は特に注視して検討が進められたと、渡部 氏は続けます。

「タブレット デバイスを活用した授業では、たとえ 1 台であっても、性能やネットワークが原因で画面が表示されないということがあると、授業が滞ってしまうことになります。大府市情報教育委員会に参加する教員のメンバーも、授業が停止してしまうことだけは避けたいという思いがありました。また、小学 3 年生から中学 3 年生での配付を計画していましたが、利用する児童生徒の年齢に幅があることも、高いスペックを求めた理由です。小学 3 年生なら低スペックのものでも満足できるかもしれませんが、中学 3 年生ともなると低スペックのものでは満足がいかず、積極的に利用してくれないかもしれません。管理性を考えると、機種は可能な限り統一したく、そうすると中途半端な製品を採用したくなかったというのが、大府市情報教育委員会での総意でした」(渡部 氏)。

大府市教育委員会では、十分な性能とインターフェイスの安定性を保持していることを条件とし、2015 年にて、複数ベンダーを募った Windows 2 in 1 タブレット デバイスの入札を実施。さまざまな機種の中から、「性能」「操作性」「携行性」の 3 点を評価し、Surface Pro 3 の採用を決定しました。Surface Pro 3 に決定した理由について、渡部 氏と長坂 氏は次のように説明します。

「限られた予算の中での入札でしたが、性能が他の製品と比較し高かったことがまず挙げられます。また、段階的な導入のため当初は小学校 3 年生以上へ 3 人に 1 台という規模での導入でしたが、いずれは 1 人 1 台を目指しており、将来的には小学 1 年生から導入配付することがあるかもしれません。そうすると、低学年の児童でも容易に扱えるような操作性や本体の軽さも必要になります。カタログ ベースではなく、実際に大府市情報教育委員会でも検証のうえで検討しましたが、Surface Pro 3 は性能のみでなく、操作性や携行性にも優れており、文句がありませんでした。細かいですが、教室に配置されたコンセントの数は多くないため、バッテリの持ちが良い点も高評価でした」(渡部 氏)。

「ちょうど同時期、株式会社ベネッセコーポレーションの『ミライシード』という授業支援ソフトウェアを採用することが決まっていました。ミライシードは、デバイス上で ID とパスワードを入力し各校に設置したサーバーと通信することで、各児童生徒のユーザー情報をデバイスへ適用することができるソフトウェアで、参加型学習に向けた機能も実装された優れた製品でした。多機能な点も特徴ですが、そのすべての機能が Surface Pro 3 上で動作することも確認できましたので、ソフトウェアとの親和性についても不安はありませんでした」(長坂 氏)。

システム概要図

大府市内の 13 の小中学校にはそれぞれ、タブレット デバイスへのコンテンツ配信やユーザー情報のデバイスへの適用を行うためのサーバーが構築され、無線 LAN などのネットワークを介し、校内のデバイスと通信を行う [拡大図] 新しいウィンドウ

性能と操作性、携行性を特に評価し、大府市教育委員会ではソフトウェアの動作確認が取れた 2015 年 6 月、Surface Pro 3 の採用を正式に決定しました。夏休みである 7 月と 8 月にかけた、市内 13 の全小中学校へのサーバー構築や無線 LAN ネットワークの整備、一部教室への電子黒板システムの構築を経て、同年 9 月の新学期より、Surface Pro 3 を用いた ICT 教育が市内の全校にて開始されています。

<導入の効果>
ベンダー協力の研修がもたらした、教員の積極的な授業における ICT 活用と、それに伴う学習効果の向上

夏休み明けの 2015 年 9 月より開始した全小中学校での ICT 教育ですが、いかに ICT の拡充を行っても、それが現場で活用されなければ意味がありません。大府市教育委員会では ICT 教育の効果を最大化するべく、夏休み期間を利用した教員の研修を行ったと渡部 氏は語ります。

「教員の年齢は 20 代から 60 代までと幅広く、ICT への意向も人それぞれです。まずは ICT 教育の意義に理解を示してもらえるよう講習を行いました。インフラ面の構築と並行での研修でしたので、いち早く無線 LAN やシステムの構築が完了した学校へ集まってもらい、Surface Pro 3 とソフトウェアの使い方についてベンダー担当者を講師に招き、レクチャーを重ねました。デジタル教科書を使った授業の例なども紹介してもらったのですが、教員の方々も非常に熱心に取り組んでくれたと思います」(渡部 氏)。

ベンダー協力による集中的な研修もあり、2 学期からの ICT 教育はスムーズに開始され、そこでは、「これまでよりも授業内容が理解できるようになった」「興味が湧くので、授業に集中できる」といった前向きな声も同市の児童生徒から多く上がっているといいます。

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Surface Pro 3 や電子黒板システムにて行われる同市の ICT 教育は、すでに児童生徒の積極性や集中力向上の面で効果が出ている

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児童生徒に配付した Surface Pro 3 上ではペン入力も用いられており、授業のインタラクティブ性の向上にも寄与している

渡部 氏と長坂 氏は、2 in 1 タブレット デバイスを用いた ICT 教育の効果について、これら児童生徒の声だけでなく、ICT を積極的に授業で活用しようとする教員の動きが加速化できたことが大きいと説明します。

「導入からまだ半年しか経過していないため、効果を具体的な数値で示すことは難しいのですが、児童生徒から前向きな意見が多くあがっているのは事実です。もちろんそれも重要なのですが、なによりも教員側から『学びのツールとしてタブレットは非常に有効だ』『個に応じた指導ができる』という評価を受けた点が、大きな効果だと感じています。現場の教員が効果を実感することで、学習効果や効率をさらに高めるためのアイデアも生まれてきますし、ICT を授業で積極的に取り入れる教員も増えていきます。そうすればいずれ、授業の中で児童生徒と教員が ICT を活用することが普通となり、先に触れたモラルを含めた ICT 教育も実現されていくでしょう」(渡部 氏)。

「たとえば国語の授業で、『わからない言葉が出てきたときには検索をしなさい』という形でデバイスを利用しているケースもあるのですが、児童生徒が調べた際に、言葉の意味だけではなくそれを説明する画像も出てくるので、児童生徒の理解が進んでいると報告を受けています。また、書写の授業では筆遣いを、体育の授業では実技を、実際に児童生徒どうしで Surface Pro 3 に搭載されたカメラを用いて撮影させることで、従来の指導よりも児童生徒が直すべき点を明確化させられたという報告もあります。我々が教育支援ソフトウェアなどで構想した使い方ももちろん行ってくれていますが、教員自身がこういったおのおのの工夫で ICT を積極的に活用してくれているのは、非常にうれしいですね」(長坂 氏)。

<今後の展望>
2018 年度には小学 3 年生以上への 1 人 1 台の配付を計画。より教員が ICT を積極活用する基盤を整え、ICT 教育の実現を目指す

小学校 3 年生以上の児童生徒へ向けた約 2,200 台の Surface Pro 3 導入にて本格開始した、大府市の ICT 教育。「2018 年度を 1 つのゴールとして、ICT 環境の整備を進めていきたい」と渡部 氏が語るように、2016 年度には 2 人に 1 台、2017 年度には中学校で 1 人 1 台、そして 2018 年度には小学校においても 3 年生以上に 1 人 1 台の タブレット デバイスの配付を行っていくことを、大府教育委員会では計画しています。

「先進的に ICT 教育を進めている学校の中には、さまざまなデバイスを導入している学校も多いのですが、たとえば解像度や性能などの面で、デバイスが異なると使い勝手も変わってしまいます。それは授業の方法やシステム管理へ複雑性が生まれることを意味し、教員や児童生徒のことを考えれば、今後もできるだけ同じデバイスを導入していくのが理想だと考えています。2015 年 9 月に ICT 教育を本格開始して以降、ネットワークなどでさまざまなトラブルが発生し、その都度解消を行ってきているのですが、実はデバイス面ではこれまでほとんどトラブルがないのです。その点で、Surface には非常に信頼を寄せています」(渡部 氏)。

大府市の ICT 教育の計画は、タブレット デバイスの導入だけではありません。電子黒板や新たなソフトウェアについても強化を行っていくことで、総合的に充実した教育環境を構築していくと、渡部 氏と長坂 氏は力強く語ります。

「2017 年度には特別教室を含め、すべての教室に電子黒板を導入する予定です。また、ミライシードと連携させて活用するための別の学習支援サービスの採用も予定しています。これらと Surface Pro 3 を組み合わせることで、よりインタラクティブな授業を行うことができると考えています。また、その環境の利用をさらに加速するべく、各校に配置されている専任の ICT 支援員をさらに活用していきます」(渡部 氏)。

「各学校に設置されているサーバーを大府市が管轄するセンターへ移行し、一元管理を行う体制についても、計画を進めています。ソフトウェアのアップデートごとに発生する各校を巡ってのインストール作業は、どうしても教育のスピード感を落としてしまいます。また、サーバーにトラブルがあった場合、ICT 支援員がいるとはいえ少なからず教員へも負担がかかります。授業や指導へ集中してもらうべく、こういった負荷を減らすようなしくみも構築していきたいですね」(長坂 氏)。

フューチャースクール推進事業を機に、市内の小中学校への ICT 教育が加速した大府市。ICT が児童生徒にとってもあたりまえのものとなりつつある今、同市ではタブレット デバイスを活用した教育と、そこへの深い理解を持つ教員の指導をもって、モラルを含めた有効な ICT 教育の実現へ向けて、今後もまい進していきます。

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