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導入事例

 様に導入

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荒川区教育委員会

 様に導入

荒川区内の小中学校全校に 9,500 台の Windows 8.1 タブレット PC を導入
学校や教員中心の自由な授業作りによって、主体的な学習活動へのさまざまな取り組みを行い、他地域との情報共有も行う

写真:荒川区教育委員会

荒川区教育委員会

荒川区は、区内の 34 校 (中学校 10 校、小学校 24 校) すべてに合計約 9,500 台の Windows 8.1 タブレット PC を導入。現行の学習指導要領でのタブレット PC の効率的な活用に向け、小学校 1 ~ 2 年生は 4 人に 1 台、3 ~ 6 年生は 2 人に 1 台、中学校は 1 人 1 台の環境を整え、授業や校外学習、校内行事等の学校教育で活用しています。社会でも一般的に使われている Windows ベースのタブレット PC を採用し、「21 世紀型スキル」を育成するツールとしての活用を目指しています。授業での活用においては、教員や児童生徒の発想に活用方法を任せることで、荒川区の独自の授業スタイルを確立し、区内はもちろん全国の自治体へも広めながら、先進的な教育体制を構築していくことに挑戦しています。

<導入の背景とねらい>
社会で一般的に使われている ICT 機器を導入し
アナログとデジタルの良いところと融合させる

荒川区
教育委員会事務局指導室
統括指導主事
駒﨑 彰一 氏

荒川区教育委員会では、「未来を拓き、たくましく生きる子どもを育成する」という教育目標を掲げ、「子育て教育都市 荒川区」を実現する学校教育ビジョンを策定してきました。ICT の活用においては、2005 年度 (平成 17 年度) に教育委員会、全教員、全普通教室をつなぐ「あらかわ教育ネットワーク (Aen)」を敷設。2010 年度 (平成 22 年度) には小中学校全普通教室に電子黒板を導入し、2012 年度 (平成 24 年度) にはデジタル教科書のネットワーク配信を開始しています。

2013 年度 (平成 25 年度) に 4 校のモデル校で 1 人 1 台のタブレット PC (1,200 台) を導入、タブレット PC の導入を進めた背景について、荒川区 教育委員会事務局指導室 統括指導主事の駒﨑 彰一 氏は次のように話します。「教育の情報化は、単なる ICT 機器の導入だけでなく、さまざまなメディアを使って「情報の力」をうまく引きだすことが重要だと考えています。そのため、学校図書館の充実も進めています。小学校では、最初に学校図書館の書籍で調べ学習を行い、次に新聞などを活用し、最終的にインターネットにつながるタブレット PC などの ICT 機器を効果的使っていくことを考えています。また、授業での活用においては、タブレット PC は万能なツールではなく、わかったつもりにさせるツールであると考えています。ツールとしての活用によって児童生徒をわかったつもりにさせ、従来のアナログの読み書き計算でしっかりと理解、定着させることが重要です。さらに、児童生徒が自分のツールとしてタブレット PC をしっかりと使いこなし、リテラシーを高め、インターネットを主体的かつ適切に活用して、情報を得られるように指導して “21 世紀型スキル” を育成していきたいと考えています」。

アナログとデジタルの良いところを融合させ、「グローバル社会」で求められる資質・能力を身に付け、「21 世紀型スキル」の習得を目標としている荒川区では、教育用に特別にカスタマイズされた物ではなく、社会で一般的に使われているタブレット PC を必要としました。教育の現場でのみ使われている使い方ではなく、社会の常識に学校の常識を近づけ、ICT のリテラシーを高めていくことを目指したのです。そのためには、社会の動きに合わせて最先端の物をすべての児童生徒が触れるような環境が必要です。いち早く、すべての児童生徒が使えるようにしたいという荒川区長の西川 太一郎 氏の強い思いもあり、タブレット PC 導入モデル事業の 4 校での実践を検証し、1 年後の 2014 年 9 月には区内の小中学校全校に導入するように計画を進めています。

<導入の経緯>
社会で即戦力となる人材を育て
現在の財産を活用できる Windows を選択

荒川区
教育委員会
指導主事
菅原 千保子 氏

2013 年のタブレット PC 導入モデル事業では、Windows 8 Pro を搭載した富士通製のタブレット PC「STYLISTIC Q702」が採用されました。社会で即戦力となる人材を育てたいと考え、社会に出て一般的な業務で使われている Windows が選択されました。また、タブレットの導入によってコンピューター室を廃止でき、これまでの PC で利用していた運用管理ツールやコンテンツなどの財産をそのまま利用できることも、Windows を選択した決め手となりました。Microsoft Active Directory で端末管理ができ、従来のセキュリティなどをそのまま利用できることや、タブレットとして活用するだけでなく、キーボードを使ってこれまでの PC と同じような使い方ができることも、他の OS とは異なる Windows の利点です。

タブレット PC 導入モデル事業での 1 年間の活用の中で、ハードウェアとしてもさまざまな要望を取り入れ、全校導入では Windows 8.1 Pro が搭載された富士通製のタブレット PC 「ARROWS Tab Q584」が採用されています。CPU は STYLISTIC Q702 の Core i5 のほうが高性能ですが、省電力性に優れた Atom Z3770 を搭載した ARROWS Tab Q584 でもパフォーマンスに支障がなく、バッテリの持ちがより良いというのがその理由です。

堅牢で、防塵と防水機能を備えてほしいという要望も機種を変更した理由の 1 つです。机から落ちたくらいでは簡単に壊れない堅牢性に加え、校庭の砂埃やチョークの粉、雨の中での課外授業など、利用シーンを考えていくと、防水と防塵も必要だと考えました。また、荒川区教育委員会 指導主事の菅原 千保子 氏は、カメラの性能や活用アプリに関する問い合わせが多かったと明かします。「教員からは、印刷に耐えられるような画質のカメラ性能がほしいといった要望や、スローモーションやズーム アップ機能を求める意見や問い合わせが多く出されていました。教科に関係なく、さまざまな場面でカメラを活用するような学習が行われており、教員もどのように活用するかを一生懸命考えています」。

2014 年 9 月に区内の 34 校 (中学校 10 校、小学校 24 校) すべてに 9,500 台の Windows 8.1 タブレットを導入した荒川区では、学習指導要領に基づき、中学生は 1 人 1 台、小学 1 ~ 2 年生は 4 人で 1 台をシェア、小学 3 ~ 6 年生は 2 人で 1 台シェアできるようにしています。小学 1 ~ 2 年生は 4 時間に 1 時間、つまり 1 日に 1 回はタブレットに触れるようにし、小学 3 年生からは総合的な学習の時間とローマ字学習が始まるので、2 時間に 1 時間使えるように頻度を上げています。中学生からは、自分のツールとして活用できるように 1 人 1 台のタブレットを使えるようにしました。

導入に際して、操作に関する研修などは行わず、授業での活用についても学校や教員、児童生徒の自主性に任せていることも荒川区の導入の特長です。導入前に各学校を回って、最初はタブレットを使った教育の考え方について話し、2 回目はタブレットの機能を使った授業の例を体感してもらうだけで、操作研修などは行っていないといいます。教員は、だれでも自分の授業を良いものにしたいと考えているため、それぞれが授業でどのように活用するかを考えることが重要だというのが荒川区の考え方です。操作に関しては、ICT 支援員を各学校に 1 年間常駐させ、「習うより慣れろ」で、わからないところは支援員に聞いてもらうようにしています。企業や導入事業者に任せずに、教育委員会が自ら教員の視点で研修を行うことで、操作よりもどのような教育を行うかをしっかりと伝えることが重視されました。

荒川区内の全小中学校では、Windows 8.1 タブレット PC が導入され、電子黒板との連動など、さまざまな授業でタブレットを活用している。

小学校では、ドリル学習でタッチ ペンを使って何度でも問題を繰り返して解いて着実に身につける学習や、インターネットを使った調べ学習に活用している。

<導入効果>
児童生徒の表現力やコミュニケーション力を高め
教員の指導力も活性化させる Windows 8.1 タブレット

Windows 8.1 タブレットを導入した小学校では、ドリル学習でタッチ ペンを使って何度でも問題を繰り返して解いて着実に身につける学習や、インターネットを使った調べ学習が行われています。また、体育、理科、生活などのさまざまな授業でカメラを使ったり、社会や英語などでレポートや発表を行うときにも活用されています。ユニークな授業としては、学校図書館でタブレットを使い、書籍とインターネットのどちらが調べ物に適しているかを考え、それぞれの良いところを理解するような学習を行った例もあります。

中学校では、スマートフォンの是非についてのディベートを行い、どちらにも属さない生徒が否定派と肯定派の意見を聞いて、どちらの意見に賛成するかを投票し、電子黒板にリアルタイムに映す試みも行われました。リアルタイムに否定派か肯定派の数が見えるので、聞く側を意識して論理的にわかってもらえるように演説を行うような意識が高まり、自分の意見に根拠を持って発言することで、生徒たちの表現スキルが上がっているようです。また、操作に困っている生徒を近くの生徒が自然に教えている場面もあり、タブレットを介してコミュニケーション スキルが上がりました。

タブレットを使うシーンが飛躍的に増えていることも、1 人 1 台利用できる中学校での授業の特長です。PC 教室は限られているため、授業の機会も少なくなっていましたが、全生徒がタブレットを使えれば、毎回の授業で必要なときに活用することができます。たとえば、美術では、タブレットを持って美術室に集まり、インターネット上のさまざまな美術作品の画像を拡大して細部までチェックしたり、美術室の自分や先輩の作品、美術に関する資料などの教材を活用することで、アナログとデジタルを融合させて授業を進めることができます。

英語や社会での発表でもタブレットが活用され、電子黒板に自分や友だちの発表が大きく表示されることによって、生徒たちが真剣に取り組もうという気持ちになっているのではないかと感じている教員もいると言います。理科では、高価な機材を使わなければならない実験でも、タブレット上の動画を活用することで、生徒の手もとで繰り返し確認することができるようになりました。

体育の授業では、Windows ストアアプリの「見ん者」というアプリを使って、たとえば跳び箱を跳べない生徒が、跳べた生徒とフォームを比較し、全員がうまく跳べるような指導が行われています。見ん者は、体育などで非常に使いやすいアプリという定評があり、生徒が客観的に自分のフォームをチェックして、すぐに理解できて、効率的な授業が行えます。また、完全防水のデバイスを採用したことにより、水泳の授業で水中から足の動きや水面での手の掻き方を確認できたこともユニークで、生徒たちの興味も非常に高まっているようです。荒川区では、体育だけでなく、理科の実験や家庭科の実習、音楽の演奏など、実技を伴う学習でも、見ん者を活用できるのではないかと考えています。

活用しているソフトウェアとしては、Microsoft Office 2013 と Office の活用支援ソフトウェアである Dr.シンプラー 2013、授業支援システムが中心です。また、「見ん者」と共によく活用しているのが、電子百科事典で、学校図書館の書籍から情報を得る力を学び、次に電子百科事典で調べるようにして、子供向けのポータル サイト、インターネットの世界へと徐々に広げていくことで、リテラシーなどをスムーズに学習できるようにしています。その際には、最初に書籍で調べるときに常にいつだれが書いたかを意識して奥付を確認するように指導することで、インターネットの世界に行っても、その情報が正しいことの根拠をしっかりと調べられるようにしています。

特定の活用方法を指示せず、学校や教員に活用を任せることで、教員間のコミュニケーションも活性化していると言います。たとえば、放課後のちょっとした時間に教員が集まって操作方法を自主的に学びあうなど、タブレットという共通の話題を中心にして、コミュニケーションが高まっているようです。自然と学びあうことで、若手の操作スキルとベテランの授業力が職員室の中で融合し始めて学校の中で活気が生まれ、それを児童生徒が見ることでよい刺激にもなっています。

水泳の授業では、完全防水のタブレットを採用したことで、動画撮影機能を使い、水中の手足の動きを確認するなどユニークな活用も行われており、生徒たちの興味も非常に高まっている。

理科の授業では、高価な機材を使わなければならない実験でも、タブレット上の動画を活用することで、生徒の手もとで繰り返し確認することができる。

<今後の展望>
他地域や海外などとも連携しながら
さまざまな施策を行っていく

タブレットの導入により、教員達のコミュニケーションが広がっている中で、荒川区では、今後はもっとコミュニティを強め、教員同士で学び合い、よりよい授業が展開されていくことを期待しています。教育委員会からタブレットの活用や研修を行う方法もありますが、よりよい授業を行うためには教員の主体性が重要です。学校やコミュニティの中で、教育研究会という形で、教科ごとや学年ごとの集まりを深め、情報共有や活用が進むように、今後はポータル サイトや掲示板を整備して、教師が主体的に教材を見せあい、情報を共有して授業作りに取り組んでもらいたいと考えています。

荒川区は、2014 年 10 月に文部科学省が推進する「先導的教育システム実証事業」と「先導的な教育体制構築事業」の実証地域として、福島県新地町と佐賀県と共に選ばれています。この実証事業では、Creative Computing という形で、音楽や芸術などのさまざまな分野でデジタルを活用することを考えたり、テレビ会議システムで区内の学校どうしの連携だけでなく、大学や高校との共同授業や海外の学校との連携を行うことも考えており、既に取り組みを始めています。また、学習履歴を蓄積して児童生徒の学習カルテを作り、弱い部分をドリル型コンテンツで強化し、どうしてもつまずくところは動画などで説明するような Learning Contents Management System を構築することも考えています。さらに、ビッグ データを蓄積し、専門家に解析してもらうことで児童生徒の学習に役立てるのはもちろん、教員の指導履歴も活用して指導方法の改善に役立てたり、保護者への学習状況の通知も細部まで行えるようになることも期待されています。そのためには、校務などの個人情報を含むものを使うプライベート クラウドと、ドリル型コンテンツや動画などを使うオープン クラウドをうまく組み合わせる必要があります。

また、教員研修においては、21 世紀型スキル育成研修を拡充させるため、日本マイクロソフト、インテル、ピアソン・ジャパンが協働で運営する「21 世紀型スキル育成支援連携」 (21CS support alliance) にも積極的に参加し、公開しているレポートや資料などのコンテンツや情報共有の場も活用していく予定です。

荒川区教育委員会では、今後も「未来を拓き、たくましく生きる子どもを育成する」という教育目標に基づき、従来のアナログの教育の良いところと ICT 機器を使った教育の情報化の良いところを融合させ、荒川区ならではのスタイルを確立して、全国の教育委員会のモデルとなるような先進的な教育に取り組んでいきます。

ある中学校では、スマートフォンの是非についてのディベートを行い、否定派と肯定派の意見を聞いて、どちらの意見に賛成するかタブレットを使って投票するなど、リアルタイム学習に役立てている。

学校図書館でタブレットを使い、書籍とインターネットのどちらが調べ物に適しているかを考え、それぞれの良いところを理解するという学習を行った例。

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