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導入事例

 様に導入

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盛岡市

 様に導入

被災地の復旧・復興のために派遣された市職員の業務とメンタルをサポートすることを目的として、Office 365 を活用したクラウド ベースの情報共有基盤を整備

盛岡市役所

盛岡市役所

「がんばろう! 岩手」のスローガンの下、東日本大震災からの復興を目指す岩手県。2011 年 3 月 11 日の震災発生から 2 年が経過した今も、津波による甚大な被害を受けた沿岸部の復旧・復興は、終わっていません。1 日でも早い復興に全力で取り組む沿岸部の各自治体を支援するために、盛岡市からも職員が派遣されています。
しかしその一方で、今なお津波の爪痕が残る派遣先で業務に従事する職員たちは、「被災地復興のために」という志の高さゆえに、想像以上のプレッシャーを受けているといいます。そこで盛岡市では、派遣された職員をバックアップする試みとして、クラウド サービスである Microsoft Office 365 を採用し、庁舎内にいる同僚などとのコミュニケーションを不便なく行える情報共有環境を整備しました。

<導入の背景とねらい>
派遣される職員の不安を軽減するため、被災地からも不便なく庁内メールを確認できる環境を確保

「黄金の國、いわて。」の中核都市として、そして人口約 30 万を擁する北東北の拠点都市として発展を遂げてきた盛岡市。内陸部にある同市は、東日本大震災の際も津波の被害を受けませんでしたが、盛岡市 総務部 総務課 情報企画室 室長 (取材当時) 吉田 信二 氏は、沿岸部の状況について次のように話します。

盛岡市
総務部 総務課
情報企画室 室長
吉田 信二 氏

盛岡市
総務部 総務課
情報企画室 主任
難波 学 氏

「東日本大震災において、盛岡も震度 5 強の揺れを観測しましたが、被害は限定的でした。一方、今でも沿岸部に足を運ぶと、震災当時とあまり変わらない光景があります。瓦礫は大分撤去されていますが、津波に奪われた町の姿は変わっていません。」

この想いを胸に「がんばろう! 岩手」のスローガンの下、盛岡広域 8 市町村 (盛岡市、八幡平市、雫石町、葛巻町、岩手町、滝沢村、紫波町、矢巾町) が連携し、沿岸の被災地・被災者支援を行うなど、岩手県全体の復興に向けた取り組みが着々と進められています。
その一環として、県からの応援要請に応じて、沿岸の各自治体に市の職員も派遣されています。派遣された職員が担当する業務は「避難所における業務支援」や「行政回復のための業務支援」、「水道施設の復興支援」など多岐にわたっており、震災直後は、大船渡市や陸前高田市、釜石市、山田町や大槌町などの自治体に、緊急対応として延べ 1,642 人が派遣されました。現在は、行政機能回復のための人的支援として、年間約 30 人の長期派遣が中心となっています。

市職員が、被災地に派遣される期間は、2013 年度から原則 1 年に延長されると言います。これは、被災地側の負担をできる限り軽減するための対応であると、吉田 信二 氏は続けます。
「震災の直後には、避難所の運営支援や水道の応急復旧などに、全国から入れ替わり立ち代わり、支援の人々が被災地に入っていました。しかし、1 か月で人が代わってしまうということは、被災地側の職員から見ると『せっかく仕事を覚えて慣れた頃に、また新しい人の教育をしなければならない』ということになります。そこで、少しでも長く勤務して欲しいという要請があり、今年度は半年、そして 2013 年度からは原則 1 年という任期になりました。」

しかし、長期間の派遣は、職員にとっても大きな負担になります。その理由は、慣れない業務や環境への急な異動にあります。内示を受けてから派遣されるまでの期間は 1 ~ 2 か月程度のため、業務の引継ぎにもあまり多くの時間はかけられません。

実際に陸前高田市に派遣されていた環境部 廃棄物対策課 計画整備係 主事の土橋 和也 氏は、その経験から次のように話します。
「私の場合は、陸前高田市で『被災者支援室』に所属し、亡くなられた方々に対する見舞金の支給や、国や市から出ている補助金の受付、その他、被災された方々からの相談を受け付ける窓口業務を担当させていただきました。こうした業務自体が盛岡市にはありませんので、当初は戸惑いもあり、被災者の方々ももどかしく思われたかもしれません。その一方で、引き継いできた業務の状況も気になるため、盛岡市役所で受け取るメールの閲覧、確認が欠かせませんでした。」

盛岡市では、これまでに数多くの職員を派遣してきた経験から、「市の状況を知りたい」というニーズと、慣れない業務と土地にあって「相談者が欲しい」というニーズの 2 つに応えるために、2012 年初頭に被災地から、庁内のメール環境へアクセスできる新たなコミュニケーション手段の提供を検討しました。
そして、選ばれたのが、マイクロソフトのクラウド サービスである Microsoft Office 365 でした。

<システム概要>
サーバー調達やセキュリティ再構築の手間もコストも省くためにクラウド サービスを採用

盛岡市
総務部 総務課
情報企画室 主査
吉田 央 氏

盛岡市
環境部 廃棄物対策課
計画整備係 主事
土橋 和也 氏

盛岡市では庁内メールを外部から確認するためのツールとして Office 365 の Exchange Online を、2012 年 4 月から希望する派遣職員に提供しています。
派遣された職員は、Outlook Web App 機能を使って、ブラウザ経由で、庁内のグループウェアから転送されたメールを確認。Exchange Online 用に提供された外部メールアドレスを使って返信できるようになります。
職員は、庁内のオンプレミスの Exchange Server から「転送されたメールのコピー」を閲覧するだけであり、外部からは直接メールサーバーにアクセスしない、セキュアな運用となっています。メールの原本は庁内のグループウェア上に残っているため、職員がスマートフォンなどの操作を誤ってメールを削除してしまうといった心配もなく、安心して利用できるようになっています。

盛岡市では、Exchange Online を採用した理由として次の 3 点を挙げています。
 1. 導入も利用停止も簡単にできるクラウド サービスであること
 2. 既存システムのセキュリティに影響を与えることなく導入できること
 3. Outlook などの Microsoft Office 製品に慣れた職員が、戸惑うことなく操作できること

盛岡市 総務部 総務課 情報企画室 主任 (取材当時) 難波 学 氏は、次のように説明します。
「今回、盛岡市では派遣される職員をサポートするために、盛岡市役所に残った同僚たちといつでもコミュニケーションを取れる環境を整えました。しかし、同様のシステムをオンプレミスで構築すると、外部接続のためにセキュリティ設定の見直しが必要になり、開発が非常に大規模に及んでしまうのです。そこで、システム開発の負荷が少なく、導入がスピーディーにできて、利用停止も容易にできるクラウド サービスを利用するのが適切だということになりました。」

さらに難波 氏は「被災地ごとに状況が違う」ことも、重要なポイントだったと話します。
「被災自治体ごとに、グループウェアや PC などの環境には差があります。そのため、年間約 30 人の派遣職員のうち、何人が利用できるのかは、はっきりとしていませんでした。そこでインターネットさえあれば、個人のスマートフォンやノート PC などから柔軟にアクセスでき、ライセンスに関しても人数単位で柔軟に調達できるというクラウド サービスの利点が重要となりました。
そこで盛岡市では複数のクラウド サービスを比較、検討したと、難波 氏は続けます。
「業務に使⽤する上で必要な機能は、他のサービスと比べて Office 365 の⽅が揃っているという印象はありました。加えて、3 年ほど前から Exchange Server など、マイクロソフトの製品およびサービスを多く活⽤していることもあり、職員への操作説明等がほとんど不要だったというメリットもありました。」

盛岡市では 2012 年 2 月に Office 365 の採用を決定し、同年 4 月から利用を開始しています。
職員は、利用に際してセキュリティ上の注意事項を確認し、「グループウェアシステム外部使用許可申請書」に署名・捺印を行います。後は、「『利用許可通知』と併せて、ログイン方法を書いた簡単なマニュアルを送付するだけで、問題なく利用してもらえています」と難波 氏。土橋 氏も、「市で使っている環境と大きく違うのはログイン方法だけでしたから、特に戸惑うことはありませんでした」と相槌を打ちます。

<導入効果>
運用管理負荷が「ゼロ」のシステムで、職員を効率サポート

土橋 氏は、派遣先から盛岡市役所内のメールが確認できたことで、業務が助けられたと振り返ります。
「私が派遣された陸前高田市では、市のグループウェアが復旧していましたので、日常の業務に関しては、そのグループウェアを利用させていただきました。ただ、私の場合は派遣されるまでの間に外部への異動連絡などが十分にできなかったため、派遣先でも『引き継いだ業務に問題が生じていないか』、『引き継ぎ漏れはなかったか』、『外部から重要な連絡が来ていないか』といったことが非常に気になっていました。スマートフォンを使って庁内のメールを確認していたのですが、気がかりなことをすぐに確認できるのはありがたかったですね。」

また、Office 365 の採用は、システムの管理者にとってもメリットが大きかったと盛岡市 総務部 総務課 情報企画室 主査 吉田 央 氏は話します。
「私たちシステムを管理する側としても、手元にメールサーバーがない上に、基本的な運用管理に関してはマイクロソフトの方で担保してくれますので、日々の稼働監視やセキュリティパッチの適用など、オンプレミスであれば必ず発生してしまう管理負荷がありません。正直、Exchange Online に関しての運用管理負荷はゼロに等しいです。」

図 1 外部から庁内アカウントへ送信された場合の流れ

図 1 外部から庁内アカウントへ送信された場合の流れ [拡大する] 新しいウィンドウ

図 2 モバイル アカウントから送信された場合の流れ

図 2 モバイル アカウントから送信された場合の流れ [拡大する] 新しいウィンドウ

<今後の展望>
チームサイトの構築などで、派遣された職員間のコミュニケーションを促進

盛岡市では、今後、SharePoint Online を活用して、派遣職員同士の交流を図ることも検討していると吉田 央 氏は言います。

「庁内でも SharePoint Server によるポータルを活用していますので、そのノウハウを使って、派遣職員向けのチームサイトを作ろうとしています。非常に少ない負荷で開発できますので、派遣された職員間のコミュニケーションを深めていくためにも、ぜひ進めていきたいと思っています。」

派遣職員同士がその経験と知識、そして想いを共有するためのチームサイトの重要性について、吉田 信二 氏と土橋 氏は、次のように説明します。
「やはり、派遣先の各自治体と盛岡市役所では、業務の内容や進め方にも違いがあります。たとえば、内陸の土木建設と、沿岸の港湾建設では、スキルもノウハウも大きく異なります。また、先ほど話に出た『被災者支援室』など、被災地にしかない業務もあります。ですから、現地で業務を覚えるほかはありません。しかし、チームサイトにノウハウなどを蓄積することができれば、派遣職員同士の引継ぎができるようになり、もっと円滑に支援できるのではないかと思います。」(吉田 信二 氏)。

「被災地に赴いて実感したのですが、『派遣職員』としての悩みは、『派遣職員同士』が一番分かりあえます。被災者の方々のご要望に全力でお応えしたいのですが、やはり、現地の人間ではないために、理解しきれないこともあり、焦ってしまったり、戸惑ったりすることがありました。盛岡に残っている同僚たちに相談しても、被災地にいないとわからない問題はなかなか共有できませんでした。その意味では、岩手県内各地に派遣されている盛岡市職員同士のコミュニティが完成すれば、スキルやナレッジの伝達だけではなく、心の支えとしても有効に機能するのではないかと思います。」
最後に、吉田 信二 氏は言います。
「東日本大震災から 2 年が過ぎました。テレビの全国放送などを見ると、もう過去の話になりつつあると感じることがありますが、まだ、被災地の復興は終わっていません。東北に住む私たちの願いとしては、どうかこの現実を忘れないでいただきたいということにあります。
ボランティアは無理でも、観光に来ていただくだけでもいいかもしれません。あるいは、遠方にあって東北の名産品を購入していただくだけでもありがたいと思っています。
いずれにしても、今も、東北では復興に向けた努力が続いています。たとえば陸前高田市でも、市街地の復興計画がようやく具体的に動き始めたところです。被災地の自治体業務は、今後さらに忙しくなるでしょう。盛岡市からの職員派遣も続いていきます。全国の皆様にも、ぜひ温かい目で見守っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。」

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