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導入事例

 様に導入

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富士吉田市

 様に導入

円滑な自治体運営を支えるために、税務の複雑さに潜む非効率を "誰にでも使える BI" で解消。職員の異動や調査項目の変更などの事態にも動じない体制構築へ

世界文化遺産登録で注目を集める富士山。その北麓地域の中核都市として古くから発展してきた、山梨県富士吉田市。生活の豊かさや心の豊かさを実感できる「富士吉田市づくり」を目標とした市政運営を進める同市では、以前から現場職員の声を業務改善に積極的に取り入れてきたと言います。そして 2013 年、同市の財政を担う税務課では、職員個人のスキルに依存せずに、ミスのない公平公正な課税・収税を継続するための体制作りに向けて、Microsoft SQL Server と Microsoft Excel による "誰にでも使える BI (Business Intelligence)" の活用に踏み出しました。

<導入の背景とねらい>
ボトムアップによる業務改善で、
個人の IT スキル依存を脱却し、庁内の効率化を

信仰の対象と芸術の源泉として人々に愛され、2013 年 6 月に世界文化遺産登録された霊峰・富士。「北口本宮冨士浅間神社」や「吉田胎内樹型」など、世界文化遺産を構成する 5 つの名勝に恵まれた富士吉田市は、富士北麓地域の中核都市として発展してきました。人口約 51,000 人 (2014 年 1 月時点) の同市は、古くから富士山信仰の町として栄え、御師文化の面影を今に残しています。

そうした歴史と文化を感じさせる一方、市の業務については積極的に現場の声を吸い上げ、基幹システムのオープン化や GIS (地理情報システム : Geographic Information System) の活用など、効率化のための施策にいち早く取り組んできたと言います。

そして、富士の世界文化遺産登録とほぼ時を同じくして富士吉田市では、生活の豊かさや心の豊かさを実感できる「富士吉田市づくり」を目標とした市政を実現するためのデータ活用に向けて、その第一歩を踏み出しています。
それが、さまざまなデータソースから自由な形式でレポートを作成できる Microsoft SQL Server と Microsoft Excel を利用した BI (Business Intelligence) システムの活用です。

基幹システムに蓄えられたデータから、庁内サイトにグラフなどのレポートを出力するだけでなく、担当者が自由に分析できるように Excel 形式にファイルを書き出すことができるこの BI システムは、定期的に人事異動が繰り返される庁内にあって「誰が担当となっても、間違いなく操作できること」を前提として設計、構築されています。

そして、この BI の実践に取り組んでいるのが、富士吉田市 環境税政部 税務課の市民税担当チームです。

写真: 堀内 明義 氏

富士吉田市
環境税政部
税務課 課長
堀内 明義 氏

写真: 萩原 美奈枝 氏

富士吉田市
環境税政部
税務課 課長補佐
萩原 美奈枝 氏

写真: 名取 泰 氏

富士吉田市
環境税政部
税務課 主幹
名取 泰 氏

写真: 白井 政人 氏

富士吉田市
環境税政部
税務課 主任
白井 政人 氏

市の財政を司る重要部署である税務課の業務には、ミスが許されません。年単位、四半期単位で国や県に報告を上げるだけではなく月に 2 度、課税と納税の差異を確認、精査するほか、必要に応じて納税義務者への調査確認を行うための文書作成など、細かな業務が数多く存在し、職員は膨大な業務量に追われています。

しかも、この税務課の業務を支える基幹系税務システムは、国や県への報告に必要な基本的な帳票類を出力する機能は持っていても、自治体ごとに異なる細かなニーズまではフォローしていません。そのため、業務の一部が、きわめて属人的な運用に陥っていたと、環境税政部 税務課 課長 堀内 明義 氏は説明します。

「税務業務においては従来、分析や報告に必要なデータ作成については、庁内でも特に IT スキルの秀でている名取主幹に頼ってきました。彼に Microsoft Access で手作りしたデータベースを使ってデータを加工してもらい、各種業務に活用してきたのです。しかし当然ながら、どの職員もいずれは異動します。1 人が異動することで税務業務に支障をきたすようでは困ります。個人のスキルに過剰に依存しないで済むしくみが必要でした。」

こうして業務変革の必要性を意識しながらも、日々の業務に忙殺されていた税務課にとって、2011 年に 1 つの転機が訪れます。それが、基幹系システムのリプレースでした。

このリプレース以前に富士吉田市で活用していた基幹系税務システムは、庁内への詳細なヒアリングに基づき、カスタム開発されたものでした。税務課が毎月求めるデータも、担当者が伝えた条件に沿って常駐 SE が抽出し、報告に必要なデータの形に加工された上で提供されていたために「手元で少し工夫するだけで、特に問題がなかった」と税務課 主幹 名取 泰 氏は振り返ります。

しかし、この旧世代システムに代わって、自治体へのシステム導入実績が豊富な日本電気株式会社 (以下、NEC) のソリューションが導入されると、ノンカスタマイズであるためコスト削減などの効果があった一方で、提供されるデータが全国の自治体に共通の最大公約数的なものに変わりました。自治体ごとに異なるニーズへの対応は、必要なデータを CSV 形式で提供するというシンプルな方法に変更されました。

この変化に応じて、Access のデータベースも名取 氏の手で改修されました。しかし、それは問題を根本的に解決する方法にはなり得なかったと堀内 氏は言います。

「基幹系システムが新世代に変わったことで、入手できるデータの形式、内容が随分と変わりしました。Access にも変更を施し、その場の対応は無事に完了しました。しかし、彼が作り上げたシステムは、今後も彼しか直せないシステムになってしまう可能性があります。データという『食材』をうまく調理する方法が 1 人の『シェフ』にしか習得されていないと言った方がわかりやすいでしょうか。そこで、ある程度の技術を持ったシェフであれば調理できるような『レシピ』を残すことが、急務として再認識されたのです。」

名取 氏も、個人による作り込みの限界について次のように話します。

「富士吉田市は、人口約 51,000 人です。所得や住民税のデータを手作業で確認しようと思えば、気の遠くなるような作業量です。効率化のためにはシステムが不可欠です。しかし、個人が手作りしていたのでは、本来の業務にかける時間が圧迫されてしまいますし、操作に "コツ" が必要なインターフェイスでは、利用者のミスを誘発し、業務効率を下げてしまいます。必要なのは Access の作り込みではなく、誰が操作しても間違えることなく、確実なデータを得ることのできるしくみだったのです」。

堀内 氏もまた、「個人のスキル レベルに関係なく、誰にでも操作できるシステムこそ必要」であると強調します。

「私たちの業務は、市民に対して公平公正な運用を図るという面でも、国や県からの地方交付税、補助金等の交付を、正確に受けるためにも課税、収税には間違いが許されません。しかし、しくみが複雑であるがゆえにシステムが重用され、IT スキルが重視されたのです。しかし、そのようなニーズに適応できる人材は、そう多くありません。私を含む大半の職員は、初級、中級レベルのスキルしか持ち合わせていません。このため IT スキルに頼らず誰でも間違いなく操作ができるシステムの構築を決断しました。」

こうして富士吉田市では、税務に活用する BI システム構築の要件を整えて、調達を実施。これに同市にとって最も有効な提案をしたのが、SQL Server の活用を提案した株式会社エーティーエル システムズ (以下、ATL) でした。

<導入の経緯とシステム概要>
基幹システムから書き出した CSV を使って
グラフィカルなレポートをノンストップで作成

写真: 田村 崇 氏

株式会社
エーティーエル
システムズ
SI事業部
チーフシステム
エンジニア
田村 崇 氏

写真: 鍋島 千夏 氏

株式会社
エーティーエル
システムズ
SI事業部
システムエンジニア
鍋島 千夏 氏

ATL が構築した BI システムでは、基幹業務システムのデータベースと SQL Server を直接つなぐのではなく、間に EUC ツールを仲介させ、必要な範囲で CSV 形式のデータを書き出し、分析に利用しています。
同社 SI事業部 マネージャー 中村 崇文 氏は、「この連携方法が、今回の活用ではもっとも効率がいい」と説明します。
「今回の BI では、活用するデータとその目的が当初から明確でした。基幹系税務システムから書き出すデータ量も比較的少なかったことから、データベースを直接連携させるよりもはるかに低コストに、効率よく運用できる方法を採りました。基幹系のデータベースに頻繁にアクセスする仕様にすると、運用も難しくなります。基幹系データの有効活用という意味で、庁内でも初めて使用するタイプのシステムでしたので、一番導入しやすい形を考えました。」

書き出した CSV は SQL Server Integration Services (SSIS) を通じて SQL Server に格納され、データマートとキューブに加工されます。あとは SharePoint Server で構築されたポータル サイト上のボタンをクリックするだけで、Reporting Services を使った分析・統計結果のレポートが表示されるようになっています。
ここまでの操作の手間は、CSV を取り込む際に一回入力を行う程度で、後はほぼノンストップでレポート表示まで進めるようになっています。

データの分析・統計に必要なクエリは、名取 氏が作成していた Access を参考に、よりシンプルにまとめていったと、同社 SI事業部 チーフシステムエンジニア 田村 崇 氏は説明します。
「税の計算は複雑ですが、すでに運用されていた Access の中身を分析して、今回の構築に活かしています。今後、集計方法が変更されることもあるでしょうから、長期に運用する中で、誰がシステムの運用保守を担当しても戸惑わないよう、極力シンプルに使いやすく、整理していきました。

また、ポータル サイトに表示されるグラフィカルなレポートについて、同社 SI事業部 鍋島 千夏 氏は「構築が容易で、他の業務への転用もしやすい」と話します。
「税務では地方税法や住民税という画一的に扱うことができない法律に基づいてデータを扱うため、とかく集計ロジックが複雑になります。今回、BI システムの仕様を決めるまで、税法と照らし合わせながらお客様と何度も打ち合わせを重ねました。システムの View (表示) を担う Reporting Service は、集計結果の整形と出力が容易で、HTML と CSS を用いた開発に比べ大幅に工数を削減できました。その分多くの時間をお客様との打ち合わせに割くことが可能となり、納得のいく集計ロジックを作成できました。これから手探りで BI 活用を始める原課にとっても、トライ & エラーを繰り返すに適したシステムだと思います。」

この BI システムが表示するレポートは、図 2 に示した 7 種類です。ネットワーク経由で確認できるため、庁内 LAN に接続している端末であれば、どれを使ってもアクセスできるようになっています。また、それぞれのレポートは Excel ファイルもしくは CSV ファイルで取り出し、自由に分析できるようになっています。

また、手戻りなどが発生しにくいように、データの流れもシンプルに整理されています。基幹系税務システムのデータの更新は毎日行われていますが、データの確定処理は月 2 回。ここで確定されたデータを収税や介護保険、後期高齢者医療保険など、税や所得の情報を利用するシステムに流していきます (国民健康保険は月 1 回の処理)。
SQL Server へのデータの取り込みも、この 2 回のタイミングと合わせているため、データに間違いが発生する心配もほとんどないと言います。

<導入効果>
誰にでも容易に扱える BI 環境によって人事異動による
ジョブ ローテーションもスムーズに

写真: 中村 崇文 氏

株式会社
エーティーエル
システムズ
SI事業部
マネージャー
中村 崇文 氏

富士吉田市 環境税政部 税務課のねらい通り、SQL Server を活用した BI システムは、職員の IT スキルに依存しない、フラットな業務環境の実現に役立っていると、税務課 課長補佐 萩原 美奈枝 氏は話します。
「ちょっとした書類作成でも、職員個々のスキルによって作成スピードが変わります。使用するソフトウェアが難しくなればなるほど、その差は開くでしょう。私など、Excel で簡単な表計算は行えても、Access となるとまったく操作が分かりません。だからこそ、集計から分析といった業務について、IT の得意な職員に作業が集中するという非効率が続いていました。しかし、今は違います。必要とするデータを得るための作業は、誰でも行える、シンプルなものに変わり、庁内のジョブ ローテーションにも柔軟に対応できるようになりました。」

萩原 氏が言うように、名取 氏のスキルに頼っていた業務も、今は 2013 年 4 月に異動してきた税務課 主任 白井 政人 氏が、BI システムを活用することで、しっかりと引き継いでいます。
「異動してきた当初は Access でデータを加工していたのですが、データをコピー & ペーストするセルが 1 マスもずれないようにしなければならないなど、慣れが必要でした。また、集計結果にエラーが出た場合など、その原因がなかなか見つけられないという苦労もありました。しかし今は、SQL Server にデータを入れたら、ボタンを押すだけで求めているデータが正確に出てくるようになりました。この BI システムがあれば、安心して業務を引き継いでいけると思います。」

こうした業務改善の効果は「数値化しにくいのですが」と前置きして、堀内 氏は、次のように話します。
「今回構築した BI システムのおかげで、職員の IT スキルのレベルに左右されないで、より確実で間違いのない課税業務が行えるしくみができてきました。個人のスキルに対する過剰な依存がなくなれば、その職員も本来の業務に集中でき、業務時間短縮にもつながるでしょう。さらに、使いやすく効果的なシステムのおかげでジョブ ローテーションがスムーズになれば、人材活用も活性化していくのではないでしょうか。」

図 1 : システム構成図 [拡大図] 新しいウィンドウ


図 3 [拡大図] 新しいウィンドウ

<今後の展望>
庁内に BI 活用を広げ、
より多くの成果を生むことに期待

こうして着実な成果を収めている富士吉田市の BI 活用ですが、「今はまだ、理想に向けた入り口に立った段階」であると、堀内 氏は強調します。

「税務課の仕事は多岐にわたりますが使い続けることによって、より効率化していけると感じています。また、効率化のみではなく、さまざまなデータから得られる分析によって新たな気づきが出てくることを期待しています。加えて今はまだ、私たち税務課で活用しているだけですが、今後、庁内での活用が広まり、さらに大きな成果が生まれてくるのではないかと期待します。実は今回のプロジェクトは 2012 年に情報推進室が実施していた BI 活用のトライアル プロジェクトに端を発しており、最初から税務への適用だけが目的ではありませんでした。自治体のシステム運用にかかる費用を、5 年 10 年のスパンで最適化していくためには、個々の職員の IT スキルに依存しない、使いやすいしくみを全庁レベルで実現させることが欠かせません。SQL Server と Excel を活用したこの BI システム活用を、今後どこまで広めていけるか、楽しみにしています。」

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