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有限会社サークル・ドット・エムエス

 様に導入

夏、冬ともに 50 万人以上の来場者を集める国内最大級イベント「コミックマーケット」のカタログを Windows Azure 上で Web 化。"オタク文化" の世界発信へ

3 日間で延べ 50 万人以上が来場する国内最大級の同人誌即売会イベント「コミックマーケット」。有限会社サークル・ドット・エムエスは、このイベントを運営するコミックマーケット準備会から、1,300 ページにもおよぶカタログ版下の制作や、出展サークルの申し込みシステム、およびサークル当落検索システムなどを委託されています。2012 年、「コミックマーケット準備会」はより最新の情報を掲載し、さらに海外への発信力を強化することを念頭に、「電話帳」とも称されてきたコミケ カタログの Web 化を計画しました。平常時とピーク時のトラフィック量の変化が激しい Web システムに相応しいプラットフォームとして、複数のクラウド サービスを詳細に比較。もっとも信頼できるプラットフォームとして同社が選択したのが、Windows Azure でした。

<導入の背景とねらい>
情報の鮮度を高め、海外からの集客力を高めるためにカタログを Web 化

国内最大級の同人イベント「コミックマーケット (以下、コミケ)」には同人誌を頒布するサークルが 3 万組以上出展しています。混雑を極める会場内をくまなく回ることは困難なため、ほとんどの来場者は、重量 1.2 キロもある電話帳サイズの分厚い "コミックマーケット カタログ"、もしくは "コミケット DVD-ROM カタログ" に掲載された情報を頼りに目当てのサークルの出展場所を巡ります。

しかし、ここに 1 つの課題がありました。それが「情報の正確さ」です。カタログに掲載されている情報は、コミケの数か月前に各サークルから提出された申込書、またはオンラインの申込みシステムに入力された情報から作成されています。しかし、数か月の間には各サークルの思いも変化し、コミケ当日にはカタログ掲載作品とは、まったく違うものが頒布されていることが多かったのです。
こうした状況に来場者からの改善要望も高まってきたことを受けて、コミケを主催している「コミックマーケット準備会 (以下、準備会)」は、カタログの Web 化を検討。参加サークルに管理画面を提供し、ギリギリまで出展内容のアップデートを行えるようにすることを決断しました。
また、カタログの Web 化が実現すれば、海外への情報発信が容易になり、オタク文化を担ってきた「本家」として、より多くをアピールでき、また集客力を得ることにもつながっていくという期待がありました。
「コミケ Web カタログ」と名付けられたこの新しいサービスの開発は、従来からカタログ製作などを請け負っていた有限会社サークル・ドット・エムエス (以下、サークル・ドット・エムエス) が開発することになりました。同社 取締役の佐藤 一毅 氏はしかし、「コミケ Web カタログ」の開発には大きな懸念があったと話します。それは「ピーク時に、極端なアクセス集中が発生すること」でした。
「当社では、以前からコミケの Web サイトやサークルからの出展申請を受け付けるオンライン システムおよび出展可否の当落検索を行うオンライン システムをオンプレミスで運営してきました。平常時は 30,000 程度のアクセスなのですが、イベント前日や新機能リリースの日など、年数回だけアクセスが 100 倍以上に跳ね上がります。カタログを Web 化すれば、それ以上のアクセスが予想されましたが、ピーク時の想定に基づいてサーバーの増設や回線の増強を行うのは、費用的に無理があります。また、オンプレミスで構築した環境に想定以上のアクセスが集まれば、大きな機会損失が生じます。この課題を解決するために、クラウド サービスの採用を決定しました」。
実は、サークル・ドット・エムエスでは東日本大震災をきっかけとして、2011 年から Amazon Web Service など複数のクラウド サービスの比較検討を行っていました。
「震災までコミケ関連のシステムはすべて、サーバーを当社内に置いていましたが、計画停電を経験した結果データセンターへの移設を実行、コストとパフォーマンスのバランスが取れなくなってしまいました。この課題を解決するためもあって、クラウド サービスの比較検討を行っていたのです」(佐藤 氏)。
この時に得たナレッジに基づき、コミケ Web カタログのサービス提供基盤に適したクラウドとして同社が選択したのが、マイクロソフトの Windows Azure だったのです。

<導入の経緯>
もっとも信頼できるプラットフォームとして Windows Azure を選択

同社 技術統括 田邊 浩靖 氏は、Windows Azure 選択理由について、PaaS (Platform as a Service) 型のサービスであることが重要だったと語ります。
「IaaS (Infrastructure as a Service) と PaaS の 2 つのクラウド サービスを比較した結果、PaaS の方がサーバー環境構築の手間が省けて開発期間が大幅に短縮できると判断しました。それに Windows Azure であれば、サーバーへの最新パッチの適用といったセキュリティ対策はマイクロソフトが責任を持って運用してくれます。しかも、Azure を IaaS として利用し、Linux 環境を移行させることもできます。他社の IaaS のサービスと比べて、まったくそん色はありませんでした」。
佐藤 氏はまた、「Windows Azure が一番信頼できた」と話します。
「マイクロソフトは各サービスのロードマップを明確に提示しています。他社のサービスに関しては、急にサービスが終了されたり、3 年以上のサポートがないなど、不安定な印象を受けるものも多くありましたが投資をする以上、長く安心して使用できるサービスでなければ意味がありません。その面でも Windows Azure には抜群の信頼を抱いています」。
こうして 2012 年の 6 月から Windows Azure をサービス提供基盤としたコミケ Web カタログ開発プロジェクトがスタート。「なるべく早くサービスを提供したい」という準備会の意向を受けて、翌 7 月末には「サービス公開日は 11 月 2 日」と発表。開発を急ピッチで進めることになりました。
このスピード開発を確実に進めていくために、サークル・ドット・エムエスはマイクロソフトに対し、Windows Azure におけるアプリケーション開発、およびパフォーマンスチューニングを行う開発パートナーの紹介を依頼。ほどなくクラウド サービスのコンサルタント、Web アプリケーション開発を行う株式会社 pnop をパートナーに迎え、10 月から本格的な開発に取り掛かることになりました。

<導入効果>
想定を大幅に上回るアクセス数にも、遠隔からのチューニングを行い迅速対応

約 1 か月というタイトな開発スケジュールでしたが、コミケ Web カタログは、予定通り 11 月 2 日にサービス インを迎えています。このスピード開発が可能だったのは、第 1 に Visual Studio や ASP.NET など慣れ親しんできた開発ツールをそのまま活用できたこと。第 2 にオンライン申込みシステムで活用していた SQL Server 内のデータを、Azure 上にある SQL データベースに手間なく移行できること。そして、最後にテスト環境も Windows Azure 上に置くことで、遠隔地を結んだ開発をスムーズに進めることができたという、3 つの要素が大きかったとアプリケーション開発を担当した pnop 取締役 亀渕 景司 氏は説明します。
「コミケ Web カタログの開発は、私が大阪、もう 1 人のスタッフが埼玉、サークル・ドット・エムエス様が東京と、3 か所に分かれて開発を進めていました。しかし、テスト環境は Azure 上で共有していますので、まったくコンフリクトもせずスムーズに進行していきました。開発には Visual Studio など汎用的なツールが利用できますし、データベースの構築に苦労することもありません。確かにスケジュールは厳しかったのですが、何とか乗り越えられるだけの条件は揃っていたと思います」。
そして迎えたサービス提供の初日。佐藤 氏が想定していたよりもはるかに多くの出展サークルが登録内容を更新するために殺到し、パフォーマンスに影響が出るという事態が発生しますが、遠隔地からシステムの再チューニングを実施。ほどなくシステムの安定稼働を回復できたと言います。
こうして、最大のピークを迎えるコミケ本番前日の 12 月 28 日から、最終日となる 31 日の間、何の問題もなく過ぎ去ったと、佐藤 氏は振り返ります。
「もし、オンプレミスで構築していたら、公開初日でパンクして大変な損失を生んでいたでしょう。しかし、Windows Azure を活用していたことで、そうした事態を避けることができました。28 日以降、1 日約 30 万件のアクセスがありましたが、まったく問題がありませんでした。本当に良かったと思います」。

<今後の展望>
日本発! コミケカルチャーと世界のクリエイターの橋渡しを行っていきたい

コミケは今後、日本のオタク文化、サブカルチャーを担うクリエイターたちの活躍の場を世界に拡げるため、海外への情報発信を本格的に強化していく予定であると佐藤 氏は言います。
「今回のコミケ Web カタログは日本語版しかありませんので、海外への発信という意味では不十分です。また、Web サイトの見た目なども重要になりますので、見せ方にもこだわっていきたいと思っています。まずは 2013 年内にスタートさせることを目標に、コミケ来場者のコスプレ写真なども公開できる Web サイトを Windows Azure で開発しています。クラウドなので、データ容量の心配もありません。またゆくゆくはアメリカ、ヨーロッパなど各国語版の Web サイトを構築したいと思います。その意味でも、世界中にデータセンターを持っている Windows Azure を選択したことは、本当に良かったと思っています」。

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