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 様に導入

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ブラザー工業株式会社

 様に導入

Microsoft Office 365 によるメール システムのクラウド化で BCP 対応を実現
運用管理も大幅に効率化、ワーク スタイル変革にも道を拓く

写真:ブラザー工業株式会社

ブラザー工業株式会社

一世紀以上にわたって独自性の高い製品やサービスを提供し、現在では 40 を超える国と地域でビジネスを展開するブラザー工業株式会社。ここではメール システムの災害対策を実現するため、オンプレミスから Office 365 によるクラウドへの移行が行われています。これにより被災時にもメールの継続利用が可能になり、運用管理も効率化、メール ボックス サイズの拡張も可能になりました。またシステム設計と構築に マイクロソフト コンサルティング サービス ( MCS )、運用設計に プレミア サポートを活用することで、短期間で円滑なメール移行とプロアクティブな運用も実現。将来は Microsoft SharePoint Online や Yammer なども活用することで、ワーク スタイル変革の基盤になると期待されています。

<導入の背景とねらい>
オンプレミスで運用されていたメール システムを、
東日本大震災を機にクラウド化を検討

ブラザー工業株式会社
IT 戦略推進部
情報企画第 3 グループ
グループ・マネジャー
日比野 正明 氏

ブラザー工業株式会社
IT 戦略推進部
情報企画第 3 グループ
シニア・チーム・マネジャー
佐々木 量一 氏

社内 SNS や Web 会議など、企業におけるコミュニケーション手段は多様化しつつあります。しかしそのような状況の中でも、大多数の企業にとって最も重要なコミュニケーション手段は、電子メール (メール) だと言えるでしょう。メールはメッセージをやり取りするだけではなく、ファイル添付によるドキュメント送付の手段としても定着しており、メーリング リストによる情報共有が日常的に行われているケースも少なくありません。メールは依然として、企業活動を支える "生命線" の 1 つなのです。

その安全性をより高めるため、オンプレミス型で運用していたメール システム (Microsoft Exchange Server) をクラウド化したのが、ブラザー工業株式会社 (以下、ブラザー工業) です。

1908 年にミシン修理業からスタートした同社は、一世紀以上にわたって独自性の高い製品やサービスを提供し続けており、現在では 40 を超える国と地域でビジネスを展開するグローバル企業に成長しています。その活動を支えるメール システムは、日本/アジア、欧州、北米の三極体制で構築および運営されてきました。しかし 2011 年 3 月の東日本大震災の発生を機に、この体制を見直そうという動きが始まったのです。

「当社は地震リスクの高い東海エリアを本拠地としており、いつ被災してもおかしくない状況です」と語るのは、ブラザー工業株式会社 IT戦略推進部 情報企画第3グループ グループ・マネジャーの日比野 正明 氏。また世界各地の拠点で大規模な自然災害に巻き込まれる危険性も、決して小さくはないと指摘します。「このような状況の中、グループ全体で安全に継続利用できるシステムを実現するには、自社でサーバーを保有するのではなく、信頼できるクラウド事業者に任せる方が得策です。特にメールは当社にとって最も重要なシステムの 1 つなので、できるだけ早いタイミングでクラウド化したいと考えていました」。

2012 年には移行に向けた検討を本格化。既存のメール システムのハードウェア保守期限が 2014 年 6 月だったため、このころまでに移行を完了することが目指されました。基本的な要件として掲げられたのは、災害時でもビジネスを継続可能にする BCP 対応、業務に対する影響の最小化、グローバル対応の 3 点。そのうえで、オンプレミスの Exchange Server と Microsoft Exchange Online、Google Apps for Business の比較検討を行い、すべての要件を最も高いレベルで満たせるのは Exchange Online であると判断されたのです。

「Exchange Online は、クラウド サービスなので BCP 対応が行いやすいうえ、オンプレミスの Exchange Server と使い勝手がほぼ同じであるため、業務への影響も生じません」と説明するのは、ブラザー工業株式会社 IT戦略推進部 情報企画第3グループ シニア・チーム・マネジャーの佐々木 量一 氏です。また各拠点にサーバーを設置する従来の方法に比べ、運用管理の集中化が容易になるというメリットもあると言います。「当社は継続的な発展を遂げるため M & A などを積極的に進めていますが、このようなビジネス変化にも柔軟に対応できると考えました」。

<導入の経緯>
1 万 1,000 名のメール移行を短期間で安全に行うため、
MCS と プレミア サポートを積極活用

ブラザー工業株式会社
IT 戦略推進部
エグゼクティブ・エンジニア
谷崎 康浩 氏

アビームシステムズ株式会社
ソリューション事業部
冨永 龍太 氏

ブラザー グループにおけるメール システムのクラウド化は、まず北米地域の現地法人が先行する形で始まりました。2013 年 10 月には約 1,000 名分のメール ボックス移行を完了。ただしこのプロジェクトは、決して順調に進んだとは言えなかったと佐々木 氏は振り返ります。現地のインテグレーターに移行計画と作業を任せたところ、想定外のトラブルが発生してしまったのです。この時マイクロソフトの営業担当者がプレミア サポートの活用を提案。2013 年 6 月に プレミア サポートを導入し、無事本番稼働へと漕ぎ着けています。

この時の経験から、1 万名を超える規模となる日本/アジア地域での移行プロジェクトは、当初から プレミア サポートとマイクロソフト コンサルティング サービス (MCS) を利用することに決定。2013 年 9 月には MCS が参加した概要設計がスタートします。

「MCS はユーザー企業と同じ目線で一緒に考えてくれるうえ、技術力も申し分ありません」と言うのは、ブラザー工業株式会社 IT戦略推進部 エグゼクティブ・エンジニアの谷崎 康浩 氏です。また技術的な問題が発生した場合の対応も迅速だと指摘します。「ブラザー工業のメール システムは複雑かつ大規模です。他社のコンサルタントやエンジニアでは、これだけスピーディかつ的確な対応は難しかったのではないかと思います」。

その後の詳細設計や構築作業にも MCS が参加。日本/アジア向けの Exchange Online 環境の構築を、2014 年 2 月までに完了します。これと並行して移行設計も、MCS 参加の下に進められていきます。ここで大きな課題になったのが、ブラザー工業および国内子会社など合わせて約 5,000 名分もあるメール ボックスを、環境構築完了からわずか 1カ月後の 2014 年 3 月末までに、いかにして完全移行するかということでした。

この課題を無理なく解決するための手法として、MCS は、インドにある、データ移行業務を専任とするマイクロソフト グローバル デリバリーの活用を提案。データ移行業務をオフショアで作業を進めていくというものです。これによって、日本では平日夜間にあたる時間帯に 100 ~ 200 名/日、土日は約 400 名/日のペースでメール ボックスを移行。要求どおりの期日に作業を完了しています。「オフショアなので料金も安く、作業精度も十分に高いサービスでした」と佐々木 氏。優れたコスト パフォーマンスが認められ、その後のメール ボックス移行でもグローバル デリバリーが活用されています。部門または拠点単位で順次作業が進められ、今回のメール移管の対象となるグループ会社 28 社の対象者全員のメール ボックス移行が、2014 年 7 月までに完了しているのです。

その一方、2013 年 12 月に始まった運用設計では、プレミア サポートの運用コンサルタントも参画。ブラザー工業では 2007 年 5 月からプレミア サポートが契約されていますが、運用時に発生し得る問題を事前に回避する、このプロジェクトをきっかけに、プロアクティブな運用設計支援を実施しました。

ここで大きなテーマになったのが、従来の Exchange Server の運用方法をベースに、クラウド特有の要素を追加かつ融合していくことでした。「ブラザー工業が基幹系システムでクラウドを本格利用するのは初めてだったので、どのような考え方で運用を行うべきなのか、最初はほとんどわかりませんでした」と振り返るのは、ブラザー グループの IT企業であるアビームシステムズ株式会社から今回のプロジェクトに参画し、MCS や Premier サポートのエンジニアと共に設計・構築作業の中心的な役割を果たした冨永 龍太 氏です。ブラザー工業とプレミア サポートの運用コンサルタントは合計 6 回にわたるミーティングを行い、クラウド運用に関する疑問解決や注意すべきポイントの明確化などを実施。「このような情報提供は非常に有意義でした。グループ内だけの議論では出てこなかった内容も、運用設計の中に数多く盛り込むことができました」。

2014 年 2 月~ 3 月には、グローバルでの運用を考慮した、プレミア サポートが提供する Cloud Service Dependency Map (CSDM) の作成も実施。これは、より効率的な運用を実現するために、社内システムの相互依存性をチェックし、マップとして可視化するというものです。「オンプレミスの時にはシステム間の依存関係をほとんど意識していませんでしたが、CSDM を作成することで社内システムの全体像がひと目で把握可能になりました。これによって、システムに変更を加えた時の影響範囲が明確になり、障害発生時の対応迅速化も可能になりました」 (冨永 氏) 。

プレミア サポートではこれらに加え、Office 365運用担当者向けのワークショップも開催。Office 365 の基本概念や実際のオペレーションに関する最新情報をレクチャーしています。これに関しても、講師のスキルが高く、Exchange Server の経験がない人でもわかりやすい内容であり、予定アジェンダになかったテーマについても相談できて助かったと、高く評価されています。

ブラザー工業におけるメール移行スケジュール。システム設計および構築に MCS、運用設計にプレミア サポートが参画することで、1 万 1,000 名規模のメール移行を短期間で実現すると共に、運用時に発生し得る問題を事前に回避するプロ アクティブな運用設計も可能になっています。 [拡大図] 新しいウィンドウ


プレミア サポートが提供する Cloud Service Dependency Map (CSDM) のレポート例。システムの相互依存性を可視化することで、より効率的でプロアクティブな運用が可能になります。 [拡大図] 新しいウィンドウ

<導入効果>
台風で工場の建物や設備の一部が破損した時もメールに影響なし、
システム集約で運用管理も効率化

今回のメール移行の最大の効果は、BCP 対応をリーズナブルなコストで実現できた点にあります。「日本/アジアでのメール移行完了直後に台風 9 号が発生し、フィリピンの工場の建物や設備の一部が破損してしまうという被害がありましたが、この時もメール システムは問題なく利用でき、業務再開をスムーズに進めることができました。効果の高さを実感しています」 (佐々木 氏) 。

メール システムをクラウドに集約することで、運用管理の効率も向上しています。以前は日本だけで 40 台近くのメール サーバーがあり、月に 1 回は故障に伴うハード ディスク交換が発生するなど、ハードウェアのメンテナンスに大きな負担がかかっていましたが、今ではその問題も解消されています。また拠点ごとに設置されたシステムでは、運用管理の品質もばらつきが生じやすくなりますが、クラウドならその心配もありません。M & A などによる組織やビジネスの変化にも、柔軟に対応できるようになったと評価されています。

Office 365 への移行は、これら以外にも効果をもたらしています。その 1 つがメール ボックス容量の拡大です。以前のオンプレミス環境では、1 ユーザーあたりのメール ボックス容量は 300 MB に制限されていました。しかしブラザー工業ではファイル添付されたメールが多く、メーリング リストも数多く利用されていたため、メール ボックスが一杯になることも少なくなかったと言います。しかし Exchange Online のメール ボックスはユーザーあたり最大 50 GB 確保でき、ブラザー工業でも現在 1 ユーザーに 5 GB 割り当てています。これだけの容量があれば、ほとんどのユーザーにとっては十分であり、必要に応じて割り当て容量を拡大することも容易です。

時間や場所を問わないワーク スタイルに道を拓いたことも見逃せません。現在は既存のセキュリティ方針と整合性を取るため、社内に設置されたリモート アクセス サーバーを経由して Office 365 に接続する運用になっていますが、今後は利用形態をさらに拡大するため、セキュリティ方針の見直しを進めていく計画だと言います。

なお現在は、日本/アジア地域のうち中国拠点だけはオンプレミスのメール サーバーが残っており、欧州もまだオンプレミスでのメール運用が続いています。これらに関しても今後順次 Office 365 へと移行し、将来は全世界のメールを Exchange Online に統合する方向で検討を進めています。

ブラザー工業におけるメール システムの将来構想。最終的には全世界のメール システムを Office 365 に統合し、運用/管理業務の効率化や社内統制、セキュリティ管理のレベルアップを実現、M & A を含むビジネス変化への迅速かつ柔軟な対応も可能にしていく計画です。 [拡大図] 新しいウィンドウ

<今後の展望>
SharePoint Online や Yammer などの機能も活用、
ワークスタイル変革の基盤に

現在は Office 365 が提供する機能のうち、Exchange Online を中心とした活用が行われていますが、今後は他の機能も活用していく方針です。

その筆頭に挙げられているのが SharePoint Online です。「実は Microsoft SharePoint Server もオンプレミスで運用していましたが、社内ネットワークではグローバルな情報共有に限界がありました」と佐々木 氏。これを Office 365 でオンライン化すれば、地域の壁を超えた情報共有が行いやすくなるはずだと語ります。世界中から情報を収集する必要のある部署では、既に SharePoint Online 上にサイトを構築し、情報共有が行われていると語ります。

社内 SNS で気軽にコミュニケーションが行える Yammer にも、大きな期待が寄せられています。これに関しても、グローバルな活動を行っている営業担当者や開発担当者の一部で、既にトライアルが始まっていると言います。

「Office 365の多様な機能とともに急激に進化を続けているクラウド / モバイル関連技術などをうまく活用すれば、ますますグローバル化、多様化が進むと思われるワーク スタイルの進化にも柔軟に対応できるような業務支援環境が提供できると期待しています」と日比野 氏。ブラザー工業では 2015 年の活動テーマの 1 つとして「ワーク スタイルの変革」を挙げていますが、Office 365 はそのための基盤になり得る環境だと語ります。

災害対策の実現を目的に始まったクラウド化が、グローバルな情報共有へとつながり、さらにワーク スタイルの変革へと広がっていく。このような発展的な活用が可能なのも、企業が必要とする多様な機能を網羅し、ワールドワイドで使えるスケーラビリティとクオリティを持つ、Office 365 を選択したからだと言えるでしょう。

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