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導入事例

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  • 効率化
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アステラス製薬株式会社

 様に導入

日本発の高品質なアーキテクチャを展開することで、2 万人の Microsoft Exchange Server 2010 のグローバル統合をスムーズに行う。DAG の活用で災害対策と BCP もスマートに実現

アステラス製薬株式会社

アステラス製薬株式会社

日本発のグローバルな製薬会社を目指すアステラス製薬株式会社 (以下、アステラス製薬) では 2011 年、日本国内の Microsoft Exchange Server 2007 および米州、欧州、アジアで展開している Microsoft Exchange Server 2003 を Exchange Server 2010 にアップグレードすると共に、メッセージング インフラのグローバル統合を実施。日本で設計、検証やサイジングを行ったシステムを世界の各地域に展開することで、高品質で効率的な構築を実現しています。

<導入の背景とねらい>
経営ビジョンに基づいて
5 か年計画でインフラを統合

アステラス製薬株式会社
コーポレート IT 部
インフラグループリーダー
塩谷 昭宏 氏

市販薬やジェネリック医薬品ではなく、医療用医薬品に特化したビジネスを展開しているアステラス製薬は、高い専門性が必要とされる領域に絞って研究開発を行っています。2015 年には、その領域においてグローバルに付加価値の高い製品を提供する「グローバル・カテゴリ・リーダー (GCL)」を目指し、経営ビジョンとして「VISION2015」を策定しています。

この VISION2015 を IT インフラの面で支えるため、日本国内で Exchange Server 2007 を導入した 2007 年から 5 か年計画を立て、Exchange Server の次期バージョンでは「グローバル Exchange 統合」を目指しました。その計画についてコーポレート IT 部 インフラグループリーダーの塩谷昭宏氏は次のように話します。「ビジネスをグローバル化するためには、業務システムもグローバル化する必要があり、その前には、まず IT インフラを整備する必要があります。Global IT Infrastructure Task Force として日米欧で部隊編成しロードマップを作り上げました」。

また、日本国内で Exchange Server 2007 を導入したことも、次期バージョンでのグローバル化を見据えたためだと続けます。「海外では 2005 年に Exchange Server 2003 が導入されていたため、2003 でバージョンを合わせるという選択肢もありました。しかし、日本はグローバル本社としてグローバル化プロジェクトをリードしなければならないため、より最新のアーキテクチャである 2007 を選択し、ノウハウを蓄積することに努めました。結果的にはこの決断が正解で、今回のバージョンアップはスムーズに行うことができましたね」。

日本、米州、欧州、アジアの 4 地域で異なるインフラを使っていたアステラス製薬では、まず各地域の Microsoft Active Directory を統合し、ID 管理をグローバル標準化することで各地域の HR (Human Resource) システムと連動したアカウントのライフ サイクル マネージメントの一元化と自動化を行いました。また、クライアント PC もグローバルで Microsoft Windows 7 Enterprise に標準化しました。5 か年計画の最後に Exchange Server のコラボレーションや情報共有をグローバルに行うことを目指しました。メッセージング インフラをグローバル統合することによって、日本、欧州、アジアの各開発部隊と開発の中心である米国との連携を密にすることも大きな目的の 1 つです。

<導入の経緯>
必要なことを具現化して海外に示すことで
グローバル展開をスムーズに行う

2010 年 10 月にグローバル Exchange 統合プロジェクトをスタートさせたアステラス製薬では、2011 年 3 月まで要件定義や設計、方針策定、テスト、検証を行い、2011 年 4 月から構築を開始。2011 年 6 月にはアジア地域での統合および移行を完了。日本では 8 月にすべてのユーザーが移行されています。今回のグローバル統合の特長は、日本でアーキテクチャを決定し、RFP を作成し、サイジングの検証までをしっかりと行って各地域に展開したことです。塩谷氏は、「日本でしっかりとした検証を行ったアーキテクチャをそのまま他の海外地域に展開するため、ゴールが明確で海外側も受け入れやすく、スムーズにプロジェクトを進めることができました」と話します。

アステラス製薬では、机上で立案された設計をテスト環境で検証して設計をフィックスし、さらに準本番環境である同じステージング環境で検証して確立させ、さらに本番環境で確認するという手順を踏み、日本での環境構築を行いました。その各段階で「我々のビジネスを熟知している開発会社の株式会社シーエーシーと技術的な信頼性の高い MCS (マイクロソフト コンサルティング サービス) のレビューがあったことが、高品質なシステムを構築する成功の秘訣でした」と説明します。これらの手間のかかる手順を行い、先に日本で品質を担保したのには、グローバル本社としてプロジェクトをリードする塩谷氏のこだわりがあったと言えます。日本で検証済みのアーキテクチャを使うことで、各地域は検証やテストを省略でき、プロジェクトをスムーズに効率化することができます。

「海外子会社が言うことを聞いてくれないという話をよく聞きますが、そんなことはありませんでした。サイジングまでしっかりとやって指針も示し、ジャパン クォリティとして提供したので信用してくれたのだと思っています」と話す塩谷氏は、グローバル展開のコツを次のように話してくれました。「今まではステージング環境を利用していなかった米国でも、その重要性を理解してくれ、今回はステージング環境を構築して機能検証などを行っています。どうすれば安心して本番環境に移行できるかを実際に見せて具現化し、理解してもらうことが重要ですね。進め方をしっかりと考えて、ジャパン クォリティで提供することが我々のこだわりでしたから」。

また、情報基盤として Exchange だけでなく、Microsoft SQL Server や Microsoft SharePoint Server などのマイクロソフト製品を活用しているアステラス製薬にとって、MCS だけでなく製品にも信頼と期待があると言います。「私は合併前から Exchange Server を使っており、合併時に新たなプラットフォームに変更するかどうかを検討しましたが、引き続きアステラス製薬でも Exchange Server を使うことにしました。当時でも、冗長構成などの安定して使えるしくみを早くから、比較的安価に提供していたからです。こういった新たな技術を提供してくれる企業としての信頼感や安心感はありますね」。

アップグレード時の移行作業では、多くのメール ボックスを「できるだけ短時間で一気に移行したかった」と言います。「何回かに分けてやるという方法もありましたが、新旧が混在し無用なトラブルに繋がるリスクは避けるべきと考えました。そこで日本では、サーバー間でのデータ同期を行わずに Microsoft Outlook キャッシュ モードのローカル コピーを利用することにしました。クライアント側でデータを移行することで、新サーバー側では空のメール ボックスを作成するだけでよく、たった一晩で約 1 万人分のメール移行を実現できました。アジア地域でも同様な方法でメール ボックスを移行させています」。

<導入効果>
新機能の DAG で DR 環境を構築し
従来のテープ バックアップを廃止

2012 年 3 月に米州と欧州の 2 つの地域での統合が完了することによって、アステラス製薬はさまざまな効果の実現を期待しています。まず、カレンダーを共有することによって、各地域の開発部門がミーティングやビデオ カンファレンスを行う際のスケジュール設定をスムーズに行うことができるようになります。また、ID 管理によるメール ボックスのライフ サイクル マネージメントをグローバルに一元化することで運用を効率化し、各種コンプライアンスに対応できます。また、組織に基づく自動作成の配布リストは、これまで各国各地域が手動で行っていた作業を自動化することが可能となります。「これまでは、Active Directory が別々であったため、Microsoft Identity Integration Server を使って他の地域の連絡先を同期化していましたが、その必要もなくなります。アドレス帳をシンプルに運用できるようになったので、助かりますね」。

また、グローバル化に伴い、これまで「jp.astellas.com」のように各国ごとのサブ ドメインを使っていたのを「astellas.com」のようにシングル ドメインにすることができたのも大きなメリットの 1 つです。「日本だけで展開している企業が .com のメール ドメインを利用することは非常に簡単ですが、グローバル展開している企業でサブ ドメインを廃して .com のシングル ドメインにすることは非常に困難なことです。シングル ドメインにするためには、グローバルで ID 管理を統一することが必要不可欠です」と塩谷氏は説明します。

もちろん、アステラス製薬はただ単にシングル ドメインにすることだけを目指したわけではありません。

さらなるグローバルでの人材交流を IT 面から支えることができるようになりました。アステラス製薬では海外への出向や長期出張などグローバルでの人材の交流が激しく、これまではサブ ドメインがあったため、日本から海外出向している社員のメールを転送したり、メール ボックスを移行するなど手間をかける必要がありました。シングル ドメインに統一したことにより、わざわざ手間をかけることなく、どこにいても通常通り .com 上のメール ボックスからメールを読むことができるようになりました。

さらに、営業部門などがスマートフォンを使って外部からスムーズにメールを読めるようになりました。アステラス製薬では、Exchange Server 2010 への移行とほぼ同時期にスマートフォンの導入を行いましたが、Exchange ActiveSync を使ってメールの同期を簡単に行えるようになっています。日本だけでなく、海外でも簡単に利用できるため、アジア地域でも既に ActiveSync によるスマートフォンからの同期を展開しており、塩谷氏も「安価でセキュアにモバイル展開できるので、今後も欧州や米国でも活用しようと思っています」と期待を話してくれました。

統合後 Exchange 環境

統合後 Exchange 環境 [拡大図] 新しいウィンドウ

「Exchange Server 2010 にして最も大きなメリットは、DAG (データベース可用性グループ) ですね」と塩谷氏は言います。今回の構築で Exchange Server 2010 の新機能である DAG を活用することで、サーバー構成を大きく変革できたと明かしてくれました。日本では東京と大阪で BCP (Business Continuity Plan) と DR (Disaster Recovery) のしくみを作ったため、Exchange Server 2007 の場合はストレージ システムでデータベースの同期を行っていました。しかし、Exchange Server 2010 では DAG を使って簡単に DR 環境を構築できることは大きなチャレンジになったと言います。

「ストレージ システム ベースでデータベースを同期させることは、コスト的にも技術的にも海外では非常に困難でしたが、DAG を使うことによって海外でも DR 環境を実現できるようになりました。J-SOX 法でも海外拠点のリスク管理や事業継続について定められており、これらにスムーズに対応できるようになったことも非常に助かります」。

DAG を活用することによって、これまで行ってきたテープ バックアップを止めることができたことも大きな変革の 1 つです。「メール データは非常に重要であるため、これまでは 3 時間ごとに増分バックアップをテープで行っていました。しかし、テープ デバイスの故障やバックアップの失敗などのリスクもあります。また、テープのハンドリングなども面倒でした」。

移行の検討段階では、バックアップをなくすところまでは考えていなかったそうですが、トランザクション ログを送ることによってデータベースのコピーを作れる DAG を使えば、より緻密にバックアップを取ることができ、DR 環境を構築することで東京大阪間でオフサイトのバックアップを作って災害にも対応できると考えました。実際には、Active サーバーの即時バックアップを Stand-by サーバーで取り、BackUp サーバーで 14 日分遅延させて反映。DR/BCP サイトである大阪のサーバーには 1 日分遅延させて反映させて、ジャーナル アーカイブなどで 3 年分のメール アーカイブを残すことで不測の事態に備えています。「このようなバックアップ体制の変更は、自社のポリシーなどにもかかわることなので他から提案されても受け入れづらく、なかなか実現しないと思います。製品の機能やアーキテクチャをしっかりと設計段階で理解し、ユーザー企業自らが判断し、決断することが重要だと思います」。

DAG の構成イメージ

DAG の構成イメージ [拡大図] 新しいウィンドウ

<今後の展望>
Microsoft Lync Server 2010 の導入によって
プレゼンスの強化を図る

2012 年春に欧州と米州での Exchange Server 移行が完了すれば、2 万アカウントの大規模なグローバル統合されたメッセージング インフラが構築されます。今後はそのインフラをベースに、Lync Server 2010 の導入も検討していると塩谷氏は話します。「Exchange Server に加えて、Lync Server も活用すれば、グローバルで各国の相手のプレゼンスを簡単に知ることができるようになります。インスタント メッセージは新たな社内ツールとなるので、ルール化も含めて考えていきたいですね。Exchange Server とは異なり、各地域に配置するのではなく日本にホストするだけで環境を構築できると考えています」。

4 つの地域においてオンプレミスで Exchange Server を展開しているアステラス製薬ですが、クラウドに集約することへの興味がないわけではありません。「今回も、オンプレミスとクラウドの両方で導入を検討しました。クラウドでも必要な機能が提供されていると感じましたが、現時点では世界各国から海を越えて 1 つのデータ センターへアクセスさせるには、帯域面でオンプレミスのほうが有利だと考えました。また、コストも 2 万アカウントで利用するのであれば、ハードウェアを安価に調達したり、きちんと設計して自動化できるところは自動化して運用管理コストを抑えれば、トータルでそれほどかからないと判断しました」と塩谷氏は話します。Exchange Server の大きな魅力の 1 つとして、オンプレミスとクラウドの両方が選択肢として提示され、ユーザーは、規模や導入コスト、管理者のスキルや技術力などを基に最適なものを選択することができることがあげられます。塩谷氏も、「いつになるかはわかりませんが、将来的にはクラウド化も考えていく必要が出てくると思います」と話します。

「Exchange Server のサービスをクライアント側で受ける Outlook は、全員が必ず使い、長時間利用するという意味で、ユーザーの No.1 アプリケーションと言ってもよいでしょう。Exchange Server は長く使っている間にインフラ中のインフラとなり、文化としても染み付いてきているので、単なるメッセージング システム以上の存在となっています。これからも、正常に進化してさまざまな機能を我々に提供してほしいですね」と今後の進化にも期待している塩谷氏。アステラス製薬は、グローバルな IT 基盤をベースに国際的な競争力を身に付け、世界中で新たな新薬を開発することで病気や疾患で困っている人々を助けていきます。

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