612
導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • コスト

国立研究開発法人 産業技術総合研究所

 様に導入

日本最大級の公的研究機関が災害時事業継続に向けて、パブリック クラウドを活用。コスト削減、省電力化、研究環境構築の迅速化で継続的なイノベーションを支援

国立研究開発法人 産業技術総合研究所は、日本の発展に不可欠なイノベーション・ナショナルシステムの構築と運用に向けて、政府、地方自治体、大学、企業、そして他の研究機関との連携を密にし、研究成果を「橋渡し」することに努めています。その一環として運用されている研究情報公開データベースなどが、東日本大震災による停電の影響で停止したことや、所内のハードウェアの老朽化を契機に、同研究所は災害時の事業継続のためにクラウド活用を決断。入札の結果、採用されたのが Microsoft Azure でした。

<導入背景とねらい>
更新時期が迫っていた高性能データベースのクラウド化を端緒として、クラウド活用を促進

写真:正木 篤 氏

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
情報基盤部 部長 工学博士
正木 篤 氏

写真:久保 真輝 氏

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
環境安全本部 情報基盤部 情報基盤グループ グループ長
久保 真輝 氏

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 (以下、産総研) は、日本最大級の公的研究機関として日本の産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や、革新的な技術シーズを事業化に繋げるための「橋渡し」機能に注力しています。

気候変動や地球温暖化、水資源や食糧問題など地球規模の課題や、日本企業が世界をリードするためのイノベーション創出に貢献する産総研の研究活動は、インターネットを通じても公開されており、さまざまな分野で役立てられています。

日本のイノベーションの中心に位置する産総研では、日々の研究活動や情報公開などを支える ICT インフラとして従来からスーパー コンピューターを始めとして、ハイ スペックなハードウェアが数多く稼働していましたが、そうしたシステム環境に今、大きな変化が起きています。

それが、"パブリック クラウドの活用" です。

最先端の研究機関として、ICT 環境に高度なセキュリティを求める産総研がパブリック クラウドの活用に踏み切った大きなきっかけは、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災にあると、産総研 情報基盤部 部長 工学博士 正木 篤 氏は振り返ります。

「産総研では数十のデータベースが、研究及び情報公開などに活用されていますが、東日本大震災後の停電ですべて停止してしまいました。これにより災害対策の重要性が改めて浮き彫りになりました。ちょうどハードウェアの老朽化によるリプレースの時期を迎えていた『研究情報公開データベース』を、更改後もオンプレミスで維持しながら、災害対策まで施すことは困難でした。時代の流れを見ても、システムを仮想化し、クラウド サービス上で冗長化を図るのが最善だろうという結論になりました。」

さらに正木 氏は、産総研がクラウド活用によって解決を求めた課題は「災害対策だけではない」と続けます。

「震災以前から、研究所全体のコスト削減という課題があり、さらに大震災の国内の電力不足も重なり、省電力化などを視野に入れる必要がありました。研究所全体で見ると、何台あるかわからないほど多くのサーバーが稼働しています。これらハードウェアは 24時間365日稼働しており、消費電力もかなりの量に上ります。さらに、システムの増設や廃止などによるサーバー リソースの増減を迅速化し、効率の良く業務環境を提供することも、情報基盤部の課題となっています。クラウド サービスに機動性の高い多くのシステムを移行することができれば、こうした複数の事柄に対し、一度に解決の道筋を通すことができると考えました。」

こうして産総研では、「研究情報公開データベース」など、外部公開用の Web サーバーおよびデータベースをクラウドに移行する方針を決定。入札の結果、研究所全体のコスト削減と所内における消費電力量の削減、そして必要なサーバー リソースの増減などに柔軟に応える機動性の確保などを満たすソリューションとして、日本マイクロソフトの提供するパブリック クラウド、Microsoft Azure が導入されることとなりました。

<Azure 活用の概要と導入の経緯>
Web サーバーやデータベースはすべてクラウドへ
セキュリティに関する杞憂は不要

2013 年 4 月に、Azure が導入されて以降、研究情報公開データベースのクラウド化は順調に進行。今では、新しく公開用の Web サーバーを立てる場合には、クラウド上に構築することが、産総研の基本方針となりつつあります。

順調に進む産総研のクラウド活用ですが、「セキュリティを懸念する声も多数あった」と、産総研 環境安全本部 情報基盤部 情報基盤グループ グループ長 久保 真輝 氏は、振り返ります。

「入札当時の Azure は日本データセンターの開設前であり、複数の研究者から国外のデータセンターにデータを保管することに対しての不安の声も上がりました。しかし、私たちの目的は公開情報をパブリック クラウドへ積極的に導入することです。また、情報セキュリティに関しては国際的標準が存在しており、特に PaaS (Platform as a Service) として提供されている Azure のプラットフォーム部分には、日本マイクロソフトによって適宜セキュリティ パッチが適用されています。その意味で、セキュリティ面でのメリットは高いと考えました。」

写真:国立研究開発法人 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所

しかし、現時点においてもクラウド化の推進には「知財の国外流出の可能性」を案じる声が数多くの研究者から寄せられています。クラウド サービスに向けられるこうした不安の背景には、「サービス提供側の説明不足」もあるだろうと、久保 氏は続けます。

「多くの方が不安を抱かれる背景には、米国の『米国愛国者法、いわゆるパトリオット法』などが誤解されて、『どんな情報もアメリカ政府に制限なく見られてしまう』という印象のみが広まった影響があると思います。」

しかし実際には、テロ事件やスパイ行為に関係した際に、捜査権限の法的根拠を示した上で、特定のアカウントに対する最低限のデータの提供が求められるだけで、際限なく捜査権限が拡大されるわけではありません。現在、日本マイクロソフトでは、各国における法執行機関からの情報開示請求対応について統計情報を Web で公開しています。

<導入の効果と今後の展望>
所内の省電力化に加え、サービス提供の迅速化や
一元管理によるガバナンスの向上など複数の課題解決に、効果を実感

Azure 導入後の評価について久保 氏は、「最新の機能が次々と提供されていることなどは、好ましく感じている」と話します。

「IaaS (Infrastructure as a Service) として Azure を活用する際の、仮想マシンのテンプレートなどもきちんと揃えられていますし、PaaS として活用する際のアプリケーションやサービスも、時と共に充実しています。さらに、まだ当研究所では利用していませんが、さまざまな大手パートナー企業との協業が進んでいることも、Azure の良い点として評価しています。」

さらに、2014 年 2 月に日本データセンターが開設されたことも、産総研における活用促進を後押しする要因と、久保 氏は続けます。

「産総研が公開する各種データベースのレスポンスについては、海外のデータセンターとの通信が発生することによるレスポンス遅延がありました。しかし、東日本と西日本の 2 つのリージョンのデータセンターが利用できるようになったことで、快適に接続できるようになりました。海外のデータセンターに置いたリソースも、日本データセンターに随時移行する予定であり、今後、新規に設置するサーバーに関しては、すべて日本データセンターを利用することを考えています。」

このほか、Azure 活用による主メリットとして下記の 3 つが挙げられます。

    【主なメリット】
  1. 産総研が事業活動を進めるためのサーバー リソースの迅速な調達
  2. オンプレミス環境の削減に伴う、研究所内の消費電力量の削減
  3. サーバー環境の一元管理によるセキュリティの向上
Azure 導入による変化を示した図


「私たちの立場としては、サーバー リソースを迅速かつ柔軟に提供できるようになったことが一番のメリットと言えます。それに、オンプレミスと違い、仮想マシンならばサーバー ハードウェアの陳腐化やリプレースを心配する必要もなくなります。また、当初の目的である消費電力量の削減に関しては、確実に成果が出ているものと思います。」(久保 氏)

「敷地内に散在していた 多くのサーバーが Azure 上で一元管理できるようになったことは、大きな成果だと思います。たとえば、過去に公開されて、今はアクセスが少なくなった Web サーバーなど、設置した時にはきちんと運用されていても、いつの間にか放置状態になり、セキュリティ ホールと化すケースがあります。オンプレミスの時は、敷地内の該当するサーバーを追うだけでも時間を要しましたが、Azure 上にあれば一目瞭然です。不要となったサーバーを止めることも容易です。」(正木 氏)

さらに、データベースへのアクセス増減が激しい中、ネットワークの帯域幅まで柔軟に拡張できることが、大きな安心感につながっていると久保 氏は言います。

「テレビなどで産総研の研究が紹介された時などは特に、データベースへのアクセスが集中します。過去の話となりますが、2004 年のスマトラ島沖大地震に関して、津波の映像などと共にさまざまなデータを公開していたのですが、映像だけで数 GB の容量がありますので、数十人がアクセスするだけで産総研が接続しているインターネットの帯域を使い切ってしまう状況となり、運用には苦労が伴いました。しかし、クラウド化の推進、Azure の活用が進んでいる今は、帯域の心配をする必要もなくなりました。」

最後に、久保 氏は次のように言います。

「運用ルールなどの検討は現在進行形ですが、今後、外部公開するシステムは可能な限りクラウド化を推進していく方針となっていますので、パブリック クラウドの多彩な機能も検討した上で、さらに活用の場を広げていきたいですね。」

正木 氏と久保 氏

コメント