山中伸弥教授率いる京都大学 iPS細胞研究所CiRA(サイラ)の研究チーム

京都大学 iPS細胞研究所、通称CiRA(サイラ)は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が率いる、世界初のiPS細胞に特化した中核研究機関だ。iPS細胞の安全性を高める基盤技術を開発して国内外で主要な基本特許を取得し、医療用iPS細胞ストックの構築も始まっている。パーキンソン病や血液疾患について臨床研究への準備も整いつつあるほか、患者様由来のiPS細胞を用いた治療薬の開発でも成果を上げつつある。そして渡辺様のチームは、iPS細胞をもちいて次世代の生命科学を考える未来生命科学開拓部門に属している。

チームの主要な研究テーマは、iPS細胞を利用したがんの研究だ。人ががんになるプロセスを、iPS細胞を使って観察し、がん細胞ができる瞬間をとらえることで、がんの原因を見つけ、それを制圧する薬を作ろうとするものだ。これは、一般的ながん研究のアプローチである「できてしまったがん細胞をいかに死滅させるか」を研究するものとはまったく異なる、iPS細胞研究所ならではのアプローチと言える。

京都大学 iPS細胞研究所、通称サイラ。(左)/渡辺様のチームの実験エリア。チームメンバー7人が働いている。(右)

共同研究プロジェクトの増加で、情報整理が困難に

チャットワーク導入のきっかけを教えてください。

渡辺 : 共同研究プロジェクトが増えたことが最大のきっかけです。私のグループは、当研究所の高性能DNA解析マシン「次世代シーケンサー」を使って細胞の性質を明らかにしています。このシーケンサーは約30億文字(広辞苑200冊分のデータ)のDNA配列を2日間で読む能力があり、数千のコアをもつサーバを活用して、膨大なDNAの解析をしています。この最先端のシーケンサーを用いた共同研究が2014年ごろから急激に増えました。

これに追い打ちをかけるように、当時利用していたチャットツールのサービスが終了し、業務連絡方法がメールに一本化されました。すると、プロジェクト数が多いため、重要な連絡からちょっと来てくれる?程度のものまで膨大なメールが飛び交うようになり、これは情報整理が必要だ!と感じました。

どのように情報整理を進めましたか?

渡辺 : チャットツールの便利さを知っていたので、同じようなものを探し始めました。最も重視したのは操作感です。リアルタイムに、 アクティブに、勢い良く入力ができ、会話をするようにコミュニケーションができる、そのようなチャットツールです。

いくつかのチャットツールを試した中で、私の希望する操作感を得られたのは、共同研究先がいいよ!と教えてくれたチャットワークでした。チャットワークの「情報の整理がしやすいレイアウト」も気に入りました。画面の左端に「プロジェクト名」や「連絡相手の名前」が縦に並ぶため、ひと目で「目的のプロジェクト」にアクセスできるのです。

2〜3人で試し、使えそうだ!と意見が一致したため、チャットワークを渡辺グループのオフィシャルな連絡ツールに決めました。この時、チャットワークとメールの使い分けのルールも決めました。今では頻繁にやり取りする共同研究先にはチャットワークを入れてもらっております。

チャットツールを比較し、チャットワークが優れていると感じた点

  • 操作感が良い
  • リアルに会話できる
  • 情報整理ができる(目的のプロジェクトがひと目でわかる)
  • 検索ができる
  • スマートフォンアプリがあり、その操作感もよい

国内外の大学・企業と、自由自在にデータ共有&コミュニケーション

チャットワークの使い方を教えてください。

渡辺 : チャットワークでつながっているのは頻繁に業務上のやり取りをする人たちで、私を含めた研究室のメンバー8名と仕事関係者(他大学の先生・共同研究先の企業)です。プロジェクトや目的ごとにグループチャットを作っています(プロジェクトAのグループチャットでは、Aの関係者だけが参加し、Aの話だけがおこなわれる)。

たとえば、「渡辺G(実験関係)」グループは、実験に関する連絡や報告をするグループチャットです。実験手順の話し合いや実験結果の報告など、あらゆるコミュニケーションをおこなっています。

渡辺 : 国内外の大学や企業との共同研究にも利用しています。のみならず、海外の大学など、海外の大学や研究者ともスムーズにコミュニケーションが取れています。

渡辺 : 読んだ論文をシェアするグループチャットでは、読んだ論文のID・タイトル・要約2〜3行を各自が投稿します。投稿はどんどん増えていきますが、キーワードがチャットワークに残っているので必要な時に検索できます。

情報整理の手間が2割減り、膨大な「共同研究」がスムーズに進む!

チャットワークを導入したことによる最大の効果は何でしょう?

渡辺 : チャットワークの最大の効果は、グループチャットで目的別にコミュニケーションをとることで、「誰とどの話をしたのか」を整理できるようになり、「仕事がスムーズに進む状態」を得られたことです。情報整理にかかる手間を2割ほど減らせた実感があります。

グループチャットを通じて「物理的に忙しい」などの状況を共同研究先が理解してくれるようになり、「あの案件、忘れている?」といった相手の不安も解消されました。

京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 特定拠点助教/主任研究者 渡辺 亮様。渡辺様は、「正常」から「がんになる分岐点」を、iPS細胞を使って見つけようとしている。正常な状態をiPS細胞でつくり、がんの原因の可能性が高い「変異」を与えて観察する。この実験を繰り返すことでがんの原因が特定できれば、癌予防も夢ではなくなるという。

メンバーへ効率的に仕事を依頼できるようになった

そのほか、チャットワークの導入で変化したことはありますか?

渡辺 : メンバーに仕事を依頼する流れがスムーズになり、なるべく偏りのない分配ができるようになり、 大量の仕事を効率良く動かすことができています。たとえば、仕事を依頼する時に、重要度を伝えますが、今週と来週で優先順位が変わる場合は、順位の入れ替えをチャットワークで連絡します。これにより、優先度・重要性・急ぎの案件の3つをコントロールできるようになりました。

これらのタスクはチャットワーク上でリストとして閲覧できるため、余裕のあるメンバー、ないメンバーを把握できるようになり、うまく割り振りできるようになりました。そして「言った・言わない」の問題もなくなりました。文字に起こしてタスクを伝達できることはとても良いですね!

またどこにいても会話が可能になり、コミュニケーションを効率化できました。私のオフィスとメンバーが常駐する実験エリアは少し離れているので、これまでは歩いて行かなければ仕事を依頼できませんでしたが、研究室から実験エリアにいるメンバーに「口頭の感覚」で仕事依頼をできるようになりました。スマートフォンアプリがあるので、出張などで外にいる場合でも連絡を取りやすくなりました。

今後の研究に活かせるアイデアをストックする場として有効

チャットワークのメリットは業務効率だけではないそうですね。

渡辺 :アイデア・ロスが少なくなりました。私は、時間に余裕がある時のディスカッションはチャットワークを利用しています。電話の場合も会話をしながらチャットワークにメモをして、お互いの考えをシェアしています。以前は、面白い!と感じたアイデアでも、ディスカッション後に忘れてしまうことがありましたが、今はチャットワークを見返せば思い出せます。われわれ研究者にとってはアイデアが一番大事です。アイデアが文字となって残り、今後の研究に活かせることは、大きなメリットですね。

また物事が決定に至った経緯をいつでも再確認できるようになりました。たとえば、「あるプロジェクトの実験方法を3つに絞った経緯」や「材料Cを買った理由」などを、チャットワークの検索機能で名前やキーワードで検索すると、過去のログが出てくるので、なぜそういう結論に至ったのかを見返すことができ、考え直す時間が不要になりました。

「良い研究」には「良い研究環境」が大切

最後にメッセージをお願いします。

渡辺 : もしチャットワークがなければ、私たちのグループでは明らかに1〜2割は仕事のスピードが遅くなるでしょう。情報を整理するために余計な時間がかかるからです。同時に、アイデアやディスカッションの内容などが残らないと、研究のクオリティに影響が出るでしょう。これは痛いことです。 コミュニケーションの環境は研究の進捗を左右します。

「研究環境」を重視する山中所長の考えのもとに建設されたCiRAは、他のチームとの間に物理的な壁がないオープンラボスタイルを採用し、コミュニケーションを取りやすい空間として2010年に完成しました。おかげで、すれ違って挨拶をする時に、実験機器の貸し借りや共同研究のきっかけがボトムアップ型でどんどん生まれます。

同じように、研究業務の進行においても「コミュニケーションがうまくいく環境」を整えることが大切です。これからもチャットワークを使いながら、良い研究環境にこだわっていこうと思います。