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エルピクセル株式会社

 様に導入

人工知能を研究助手として、ライフサイエンス研究を加速! 誰でも研究画像の高度な解析が行える革新的なプラットフォームを、クラウドサービスとして提供

エルピクセル株式会社は、2014 年 3 月に、代表取締役を務める島原 佑基 氏を中心とした東京大学の研究室の 3 名が設立した大学発ベンチャー企業です。「21 世紀はライフサイエンス × IT の時代」というスローガンの下、独自の画像解析に関する知識と経験を活かし、研究者支援アプリケーション等を提案しています。そして、2017 年 6 月には "AI (人工知能) を研究助手として活用する" 革新的な画像解析プラットフォーム「IMACEL」をリリースしています。そして、この「IMACEL」のサービス提供基盤として採用されているのが、Microsoft Azure なのです。

<背景とねらい>
この 10 年で 100 倍もの量に達した研究画像の「処理作業」から、研究者を解放するために

"ライフサイエンス" は、再生医療に代表される医療の革新や、画期的な薬の開発、農作物生産の効率化など、21 世紀の社会において重要な役割を担うものとして、世界中の多くの研究機関が精力的に取り組んでいる研究分野です。

しかし、多くの研究機関を悩ませている大きな課題があります。それが、"研究画像の処理と解析" です。

電子顕微鏡や MRI などの研究・医療機器の急速な進歩によって、研究に欠かすことのできない画像データが大量に得られるようになると共に、画像ごとに含まれる情報量も一気に増大。この 10 年で 100 倍にもなったと言われる膨大な画像を解析し、研究用のデータを整えるまでに、多大な時間と労力を費やすようになっています。しかも、多くの研究機関には「ライフサイエンスの研究者」は揃っていても、画像解析などのインフォマティクスを担う「エンジニア」が在籍しているケースは少なく、多くの研究者たちが専門外の作業に忙殺されています。中には IT 化が進まず、1 枚 1 枚の顕微鏡画像にいくつの細胞が含まれているか、目視でカウントしているケースさえあると言います。

エルピクセル株式会社 (以下、エルピクセル) は、こうした状況の改善に貢献する "架け橋" となるべく、2014 年 3 月に東京大学の研究室から生まれたベンチャー企業です。

エルピクセルの起源となった研究室には、ライフサイエンス領域の知識と、画像処理・解析技術の双方に精通した人材がバランスよく揃っていたことから、数多くの研究機関と共同研究を行い、それぞれの画像解析に貢献してきました。しかし、画像解析のニーズに応えきれないケースが出てきたため、事業化を検討。お互いに研究目的を持ったアカデミア同士でいるよりも、"画像解析を担う企業" として立場を明確に分けた方が、あらゆる面でメリットが大きいという判断もあり、現在に至っていると、エルピクセル 研究開発本部  チーフエンジニアの菅原 皓 氏は振り返ります。

写真:エルピクセル株式会社 研究開発本部 チーフエンジニア 菅原 皓 氏

エルピクセル株式会社
研究開発本部
チーフエンジニア
菅原 皓 氏

「ライフサイエンス研究において、画像の適切な処理と解析は必要不可欠なプロセスです。しかし、研究者が大学で画像解析の技術を学ぶ機会はありません。当社がセミナーを行った時のアンケートでも、約 3,300 名の参加者のうち、『大学で学ぶ機会があった』と回答した人はわずか 3% しかいませんでした。そうした状況が背景にあるため、私たちの画像解析技術が期待される案件が非常に多く、パンク状態にあったのです。そこで、画像解析システムの受託開発などを行う会社を立ち上げることになりました。法人化すれば、事業の拡大に応じて、自由にエンジニアの採用を行うことができます。さらに、自分たちの研究を抱えた "アカデミア" から "会社" へと立場を変えて協力することで、依頼先のニーズに専念することができます。」

ライフサイエンス研究における画像解析の複雑さを示す例として菅原 氏は、「画像処理に用いるアルゴリズムの種類の多さ」を挙げて説明します。
「画像処理の方法として、一番分かりやすいものに 2 値化が挙げられます。閾値を任意に設定して白と黒の 2 階調に変換するのですが、よく知られているアルゴリズムだけでも約 20 種類あり、まじめに数えていくと 100 種類はあるでしょう。こうした中から、それぞれの研究に適したアルゴリズムを選択して細胞の画像を 2 値化します。しかし、それだけでは研究に必要な画像にはなりません。さらに複数のアプリケーションを使って画像処理を重ねていくことで、解析が進んでいくのです。もちろん、それぞれの画像処理に無数のアルゴリズムが存在しますので、処理によってはアルゴリズムの組み合わせが数百万通りにもなります。その中から、最善と思われる 2 ~ 3 の組み合わせを見出していきます。そのため、各研究機関によって必要とされる画像解析システムの仕組みが異なってくるのです。」

こうした状況に対応して、エルピクセルは、クライアントとなる研究機関や企業のニーズに合わせて、画像解析システムを 1 つ 1 つオーダーメイド開発することに努めると共に、画像の処理・解析技術を伝えるセミナーなどを精力的に開催してきました。

しかし、画像解析システムをゼロから開発していく作業は負荷が高い上に、予想を超える案件数があったことから、法人化の後もリソース不足に悩まされたと言います。
そこでエルピクセルは、自社製品として多くの企業・研究機関が活用できる画像解析のプラットフォーム開発へと事業の主力をシフト。世界的に活用されている画像処理のフリーソフトウェア「ImageJ」のプラグインを無償リリースしたことを皮切りとして、Windows 環境で動くインストール型のソフトウェア開発などを実施。

そして、2015 年から "クラウド" と "AI" をキーワードに構想してきたライフサイエンス研究者向け画像解析プラットフォーム「IMACEL (イマセル)」が、2017 年 6 月、正式にリリースされました。

図. IMACEL について [拡大図]

膨大なアルゴリズムの中から、AI が適正な処理方法をリコメンド

IMACEL は、機械学習やディープラーニングなどの技術を活用し、AI を "研究助手" のように活用できる画期的な画像解析プラットフォームです。

IMACEL はクラウド上で稼働しているため、研究者がわざわざシステム環境を構築する手間もなく、PC の Web ブラウザーからシステムに画像をアップロードして、画像の処理と解析を行うことができます。また、システムは常に最新の環境に保たれている上に、計算リソースやストレージ容量の心配をする必要もありません。
さらに、システム画面で画像の処理方法を選択すると、AI がいくつかのアルゴリズムを、処理後のプレビューと共にリコメンドします。1 つの処理を終えるごとに、「次に推奨される処理」まで AI が提案してくれるために、高度な画像解析の知識を持たなくとも、スムーズに目的を達成することが可能になっています。

写真:エルピクセル株式会社 エンジニア 後藤 良輔 氏

エルピクセル株式会社
エンジニア
後藤 良輔 氏

エルピクセルのエンジニアである後藤 良輔 氏は、「研究に費やすべき時間を、環境構築のために失わなくて済むだけでも、大きなメリットがある」と話します。
「従来は画像解析システムを独自に構築するために、サーバーの調達から始まって各種ツールのインストールから環境構築までに数か月を費やすことが普通だったと思います。しかし、IMACEL は OS やハードウェアに依存することなく、サービス申し込み後に、各種 Web ブラウザーから即座にご利用いただけます。それまで埋没してしまっていた数か月の間に、AI の提案を受けて、さまざまな発見を得ることができます。これだけでも、メリットは大きいと思います。」

AI によるリコメンドはあくまでもサポート機能に過ぎないため、研究者は AI を無視して、任意のアルゴリズムを選択することも可能です。しかし、すでに画像解析の経験を重ねている研究者にとっても、"まだ試したことのないアルゴリズム" と手間なく出会えることに「意義がある」と菅原 氏は強調します。
「IMACEL の最大の特徴は、AI を研究アシスタントとすることで、画像解析の知識やスキルを必要とせず、視覚的な操作のみで複雑で高度な解析を、正しく行えるという点にあります。AI に示唆されて、新しい発見が生まれ、ベストプラクティスにたどり着くなど、さらに次の研究にまでつながっていく成果が生まれていくことが、私たちの理想とするところです。」

IMACEL を使って、AI のリコメンドを交えながらたどり着いた処理手順はすべて記録が残されており、論文にも使用できるよう PDF で出力できる上、複数の画像を一括してアップロードして、同一のプロセスをバッチ処理できるようになっています。さらに、別のプロセスによって処理された複数の解析結果を比較することも、簡単な操作で行えるようになっています。

機械学習・ディープラーニングの学習モデル構築に必要な初期データには一般に公開されているパブリックデータが利用されています。さらに、ユーザーごとに蓄積されたデータや解析ステップを学習することで、"ユーザーが活用するたびに" 画像解析の精度が向上していきます。

そして、ライフサイエンス研究に携わる企業や研究機関が非常に重要な画像データを預けることになる IMACEL のサービス提供基盤として活用されているのが、マイクロフトのパブリック クラウドサービスである、Microsoft Azure です。

<Azure の採用理由とシステム概要>
高度なセキュリティと国内法を順守した透明性、3 省 4 ガイドラインにも適合している事実を評価

写真:エルピクセル株式会社 経営企画本部 人事 / 広報マネージャー 五十嵐 美樹 氏

エルピクセル株式会社
経営企画本部
人事 / 広報マネージャー
五十嵐 美樹 氏

エルピクセルが、Azure を選択した最大の理由は、「セキュリティと信頼性」にあると、エルピクセル 経営企画本部 人事 / 広報マネージャー 五十嵐 美樹 氏は言います。
「お客様にとって、非常に大切なデータを取り扱う以上、セキュリティをおろそかにすることはできません。その点、マイクロソフトの Azure であれば、世界最高レベルのセキュリティが施されているために安心ですし、日本リージョンのデータセンターで、日本国内の法律に準拠して運用されているため、お客様にもご理解いただきやすくなっています。」

Azure に関してはさらに、システム開発中の 2016 年には日本セキュリティ監査協会JASA-クラウドセキュリティ推進協議会が制定したクラウド情報セキュリティ監査制度において、日本で初めて「クラウドセキュリティ (CS) ゴールドマーク」を取得したことが評価されています。

さらに、IMACEL と並ぶもう 1 つの事業の柱として、同じく AI を活用した医療画像診断支援システムの開発を進めている同社にとって非常に大きなポイントとなったのが、医療機関に対して国から提示されている情報セキュリティ対策、いわゆる「3 省 4 ガイドライン」への対応状況や適合性が日本マイクロソフトによってキチンとまとめられ、公開されたことでした。

後藤 氏は、「3 省 4 ガイドライン」への適合に加えて、2017 年 9 月にリリースされる新製品 Microsoft Azure Stack が「有効に使えるかもしれない」と期待を寄せています。
「Azure Stack を使えば、Azure 環境をギュッとコンパクトにまとめて、UI や API が Azure とまったく同一のプライベート クラウドを実現可能になると聞いています。病院などの医療機関では、情報系と医療系でネットワークを区別して、電子カルテなどの医療システムを外部ネットワークから遮断しているところも多いため、こうした新しい製品やサービスが次々と出てくることも、私たちとしては心強いです。」

    3 省 4 ガイドライン
  1. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第 4.2 版 (厚生労働省)
  2. 医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン (経済産業省)
  3. ASP・SaaS 事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン (総務省)
  4. ASP・SaaS における情報セキュリティ対策ガイドライン (総務省)

<今後の展望>
すべての画像処理を一括して完了できる "業界標準" プラットフォームの実現へ

エルピクセルの飛躍は、まだ始まったばかりですが、2016 年 10 月には約 7 億円の資金調達に成功するなど、その活動は多くの注目を集めています。

創業当初から、ライフサイエンス研究者向けに展開している画像処理・解析技術に関する啓もう活動は「IMACEL ACADEMY」と名称を新たにして、コンテンツを充実。さらに、毎月 1 回主催する MeetUp や Webinar (Web セミナー) は、毎回のように満員を記録しています。

五十嵐 氏は、「それだけ困っている研究者が多い。当社としても、今後ますます IMACEL ACADEMY などの活動に力を入れていく」と話します。

「ライフサイエンス領域の研究では、この 10 年間で取得できる画像データの量が非常に膨大化しています。当社が設立時から抱いている理想は、製品やサービスを通じてライフサイエンス研究の世界から、革新とワクワクを生み出すことにあります。100 人規模のセミナーなどを重ねていくことで、少しでも多くの人たちに貢献していきたいと思います。」

後藤 氏と菅原 氏も、「IMACEL を通じて、多くの研究者が、"研究者本来の仕事" に注力できる環境を整えることに、今後さらに力を注いでいきたい」と声を揃えます。

「IMACEL については、Azure の機能やサービスをさらに活かして、データのアップロードをスムーズにするための仕組みなど、今後もさまざまなアップデートを行っていく予定です。ディープラーニングの学習モデルをさらに磨き上げていくためのパートナーになってくれる企業や研究機関が現れるようになれば、進化はさらに加速すると思います。」(後藤 氏)

「私自身、今も研究者として共同研究などを続けていますので、研究現場の苦労は、強く実感しています。複数のアプリケーションをまたいで解析を行うため、どうしてもデータを自動連携できず、人による再入力が生じる場合などもあります。こうした手作業は、研究者が、研究に費やすべき時間を奪ってしまうだけでなく、エラーの原因にもなります。非効率を排して、研究者が研究者らしくある時間を増やすことに貢献したいと思います。そのために今目指しているのは、複数のアプリケーションを連携活用できる、"業界標準" と呼ぶべき画像解析プラットフォームの構築です。これが実現すればプロセスをすべてトレースできますので、研究の透明性も確保しやすくなりますし、画像解析の処理時間も、場合によっては 10 分の 1 ほどに短縮されるでしょう。日本のライフサイエンス研究が加速していくことに、少しでも貢献できるよう、今後も努力を続けていきます。」(菅原 氏)

写真:3 名様集合写真

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