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導入事例

 様に導入

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  • コスト
  • IoT

西条市教育委員会

 様に導入

多忙感を解消し、教員が教育活動に専念できる環境づくりを目指す。Microsoft Azure をプラットフォームとする教育クラウドを市で整備、運用することで、教育と校務の情報化と、教員の働き方改革を推進

西条市教育委員会

愛媛県西条市にある ICT 教育のモデル校

文部科学省が「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」をスタートした 2016 年以降、各自治体における ICT 教育の推進事業は、本格化の兆しをみせています。教育現場の ICT 整備が進められる中、いかにしてその環境を安定運用するかが、今後多くの自治体が直面する課題となるでしょう。

教育現場で活用される ICT が増えれば増えるだけ、管理すべきシステムや機器の数は増加します。安定したサービス提供には高い知識を持った人員の配備が不可欠ですが、全学校へ専門職員を配備することは容易ではありません。こうした中、市内に 25 の小学校、10 の中学校を構える愛媛県西条市では、教育クラウドという構想のもと、教育委員会が各校の ICT を統合管理する体制を敷くことによって、サービスの安定提供を実現しています。

同市が提供する教育クラウドのユニークな点は、教育用システムだけでなく、校務を支援するシステムもそこで運用していることです。成績情報を取り扱う背景から、プラットフォームにはきわめて高い水準のセキュリティが求められます。愛媛県西条市では、マイクロソフトの Microsoft Azure を採用することで、安定かつセキュアな環境のもとでサービスを提供しています。

<導入の背景とねらい>
教職員が教育活動に専念できる環境を目指して、校務システムを内包した教育クラウドを整備

愛媛県東予地方の中心的都市である愛媛県西条市 (以下、西条市)。同市が提供する教育クラウドが目指すのは、各校の教職員が教育活動に専念できる環境の提供です。西条市の小中学校に通う児童生徒の数は 8,600 名に達します。700 名という限られた教職員で滞りなく教育指導を継続するためには、教務だけではなく、日々の校務に要する時間も最適化しなければなりません。

西条市教育委員会 指導部 学校教育課 専門員兼 指導係長兼 教育CIO補佐官 渡部 誉 氏は、この教育クラウドの概要について、次のように説明します。

写真:西条市教育委員 指導部 学校教育課 専門員兼
指導係長兼 教育CIO補佐官 渡部 誉 氏

西条市教育委員会
指導部
学校教育課
専門員兼
指導係長兼
教育CIO補佐官
渡部 誉 氏

「西条市では 2015 年度より『小中学校ICT教育推進事業』を開始していますが、そこでは電子黒板や教育支援システム、電子教材といった教育の情報化だけでなく、校務支援システム、グループウェア、外部からアクセスができる VDI 環境など校務の情報化も推進しています。これは、教職員の事務効率を高めることで、十分なリソースのもと、教育シーンで有効に ICT を活用してほしいという考えで取り組んだものとなります。しかし、教育現場で利用する ICT が増加すれば、必然的に管理しなければならないシステムは増加します。これを各学校が管理したのでは、教職員のリソースを余計圧迫することとなるでしょう。教職員が教育活動に専念できるよう、当市では教育クラウドの構想のもと、教育用、校務用を含めた学校現場の ICT 環境をマイクロソフトが提供する Azure 上に構築し、それを教育委員会側が統括して運用する形をとっています」(渡部 氏)。

西条市では現在、VDI 基盤や Active Directory による認証基盤といった、教育クラウドへセキュアにアクセスするためのゲートウェイのみを市役所のオンプレミス環境に構築。教育、校務で利用するシステムのほぼすべては、Azure 上の環境からサービスが提供されています。結果、各学校が管理する ICT の数は最小化され、管理に要するリソースを削減すると同時にサービスの安定提供も実現しているのです。

こうした教育現場で管理される ICT を可能な限り排除する取り組みは、2015 年に実施した PC 教室のサーバー移行を端に進められたといいます。西条市ではこれまで、小中学校の PC 教室を主な場として ICT 教育の取り組みを推進。各学校に設置したサーバー上で、授業支援システムや学習系システムを運用してきました。しかし、管理する職員のリテラシーには当然ばらつきがあるために、学校間の ICT 環境の差異を生み出していたといいます。さらに、サーバー設置に適した専用設備もないことから、機器の故障を背景とするシステムの停止も多発していました。

「西条市ではこうした問題を解消すべく、2015 年秋に、教育支援システムをクラウド上で統合化するしくみを構築しました。同環境を教育委員会で管理する体制をとったことで、全小中学校の ICT 環境の標準化とサービス提供の安定化が実現できたといえるでしょう。このように『標準化した教育の安定提供』は、今後、ICT 教育を推進していくうえで、必須ともいえる事項でした。そこで、小中学校ICT教育推進事業においても、先述した教育クラウドの構想のもと、教育委員会が各環境の運用管理を担うことを前提として計画を進めたのです」(渡部 氏)。

<システム概要と導入の経緯>
サービス提供の継続性と高い水準のセキュリティを評価し、Azure を採用

PC 教室のサーバー移行に際して、西条市では旧環境で利用してきたハイパーバイザーとの親和性を評価し、同ハイパーバイザーを提供する外資ベンダーのクラウド サービスを採用。当初、教育クラウドのプラットフォームにおいても同クラウド サービスの採用を計画していましたが、ここで大きな問題が発生します。このベンダーから、クラウド サービスの国内提供を終了することがアナウンスされたのです。

写真:四国通建株式会 ICT事業部 松山営業所 課長 長橋 俊二 氏

四国通建株式会社
ICT事業部
松山営業所
課長
長橋 俊二 氏

教育クラウドの取り組みを支援した、四国通建株式会社 ICT事業部 松山営業所 課長 長橋 俊二 氏は、当時の出来事について次のように振り返ります。

「PC 教室にあるサーバー移行は、その後に控える教育クラウドの前段となる取り組みでした。実際、サーバー環境のクラウド移行を終えてまだ間もない 2016 年 4 月には、教育クラウドの構築開始することを計画していました。しかし、まさにこの 4 月に、ベンダーからサービス撤退の連絡が入ったのです。このニュースは、これまでの計画を一度白紙にして、西条市様に『他のクラウド サービスの選定』もしくは『オンプレミスでの構築』のいずれかの選択を迫る事態を引き起こしました」(長橋 氏)。

仮にオンプレミスで環境を構築する場合、ハードウェアの管理をはじめとする定常運用に多くの工数がとられることとなります。35 ある学校の ICT 環境すべてを安定して運用するには、市役所の人的リソースでは限界がありました。渡部 氏はこの状況を鑑みて、「サービス提供の継続性」を有するクラウド サービスの選定を開始したと語ります。

「サービスを撤廃した事業者は世界でも有数のベンダーです。少なくともこのベンダーと同水準、もしくはそれ以上の規模のベンダーが提供するクラウド サービスであり、かつクラウドに対して本気で取り組んでいるベンダーでなければ、今後も同じ事態に遭遇しかねないと感じました。こうした『サービス提供の継続性』を考慮してサービスを選定した結果、クラウドに対して強力にコミットメントするマイクロソフトの Azure と、市場において大きなシェアを持つ米国ベンダーのクラウド サービスを候補として比較検討することにしたのです」(渡部 氏)。

西条市が進めた比較検討においては、第一にセキュリティが重視されました。校務システムでは児童生徒の成績といった機密情報を多く取り扱うこととなります。プラットフォームとしての信頼性だけでなく、接続についても高いセキュリティが担保できなければ、重要な情報をクラウド上で運用することができなかったのです。

渡部 氏は、セキュリティの観点から両サービスを比較検討した結果、Azure の採用を決定したと説明します。

「Azure は、国内でも数少ない CS ゴールドマークを取得するマイクロソフトのサービスです。閉域網に近い ExpressRoute も備えているため、プラットフォームと接続の両側面で、高いセキュリティ水準が担保できると考えました。また、パートナー制度が十分に整備されている点もポイントです。回線事業者や構築ベンダーといったパートナーからの支援なしにセキュリティを担保することは困難といえるでしょう。当市にとって最適なパートナーを多くの選択肢から選定できる Azure は、セキュリティの担保が必須となる教育クラウドを実現するうえで、最適なサービスだったのです」(渡部 氏)。

<導入効果>
教育クラウドで校務の情報化を進めたことが、教員の積極的な ICT 活用につながる

西条市では Azure の採用を決定後、「共通 NW (ネットワーク)」「生徒 NW」「教員 NW」「校務 NW」、以上 4 つのセグメントに分けて、教育クラウドの構築を進めます。

教育クラウド上に構築した、4 つのセグメント
共通 NW 資産管理、デジタル教科書など、教員と児童生徒の双方が利用するシステム群
生徒 NW 児童生徒が主に利用する PC 教室系システム群
教員 NW グループウェア、ファイル転送といった教員が利用するシステム群
校務 NW 成績管理をはじめとする校務支援システム群
拡大図.システム構成図

西条市が提供する教育クラウドのシステム構成図 [拡大図] 新しいウィンドウ

教育クラウドは、校内、テレワークなどアクセスごとで異なる接続体系をとる必要があり、複雑な設計のもとでシステムの構築を進めなければなりませんでした。しかし、西条市ではこの環境をわずか半年という期間で構築し、2017 年より教育クラウドを提供開始しています。

写真:四国通建株式会社 ICT事業部 SIマネージャー 服部 博文 氏

四国通建株式会社
ICT事業部
SIマネージャー
服部 博文 氏

四国通建株式会社 ICT事業部 SIマネージャー 服部 博文 氏は、マイクロソフトの支援体制の充実さが、スムーズな構築を実現できた要因だと語ります。

「構築ベンダーにすべてを任せる形でサービスを提供する事業者も存在する中、マイクロソフトはパートナー制度を非常に充実させており、構築ベンダーとエンド ユーザーの双方に向けた支援体制がしっかりと確立されています。たとえば今回、市役所と Azure の接続は、インシデントが発生した場合でも教育への悪影響を及ぼす前に問題解消できるよう、問題の切り分けが容易な設計を組むことが求められました。Azure はパートナー シップを結んでいる回線事業者の数が多く、またマイクロソフトからも各事業者の特徴に関して情報提供があったため、複数の回線事業者を比較しながら最も要件に合致したサービスを選択することができました。このことは、プロジェクトのスムーズな進行と、システムの品質向上に大きく貢献したと考えています」(服部 氏)。

教育クラウドの提供によって、教育現場での ICT 活用を大きく推進した西条市。この取り組みでは、これまで PC 教室を主としてきた ICT 教育が普通教室にまで拡大され、また、校務の効率化によって、各教員が教育に注力できる環境の整備も実現されています。

渡部 氏は、教育だけでなく校務の情報化も並行して実施したことが、積極的に教育シーンで ICT を活用するという教員の動きを生み出していると、笑顔で語ります。

「たとえ教育に有効な ICT を整備したとしても、教員が活用するようになるには相当のトレーニングと時間を必要とします。従来型の教育指導を実践してきた年配の教員においては反発する動きも起こりえます。ですが、今回、普段から利用する校務も ICT 化して『ICT を活用することがあたり前』という意識を教員に生み出したことで、教育における ICT 活用の浸透速度を早めることができました。はじめは教育での ICT 活用に消極的だった教員が、今では『ICT がないと校務、教育が成り立たない』という考え方に変わっているのです。これは教育クラウドを整備した大きな成果だといえるでしょう」(渡部 氏)。

  • 写真.普通教室で ICT が活用されているようす
  • 写真.普通教室で ICT が活用されているようす

普通教室で ICT が活用されているようす。校務の ICT 化を進めたことによって、同市の学校では校務だけでなく教育においても ICT を活用することがあたり前となっている

<今後の展望>
先進 IT を PaaS で実装していくことで、「スマート スクール」の実現を目指す

2016 年までの小中学校ICT教育推進事業は、あくまで第一期の取り組みとなります。西条市では今後、これを第二期、第三期と進めることで、教育のさらなる発展を目指していく構えです。渡部 氏は、Azure というセキュアな環境のもとで教育クラウドを構築したことで、スピード感をもって今後この取り組みを進めていくことができると語ります。

「既存環境を発展させる場合、従来であれば『どこに環境を構築するのか』『だれがそれを運用するのか』という点が必ず問題となっていました。セキュリティが担保されてかつ拡張性にも優れた Azure 上に教育クラウドを構築したことで、先の問題を気にすることなく、スピード感をもって環境を進化させていくことができるでしょう。また、ハードウェアの調達や運用保守などが不要となったことで、今後はコストについても大幅に削減できる見通しです」(渡部 氏)。

西条市では小中学校ICT教育推進事業の第二期において、文部科学省が策定し、平成 30 年度から開始される、第 3 期教育振興基本計画で定められる予定の教育用コンピューターの配備目標を達成すべく、1,400 台またはこれ以上の教育用コンピューターの配付を計画しています。それと並行して、校務支援システムについても機能拡張を図っていく予定です。

渡部 氏は、こうした教育と校務それぞれの情報化を今後も進めつつ、ゆくゆくは双方を融合していくことで「スマート スクール」と呼ばれる世界も実現していきたいと、構想を語ります。

「将来的には、児童生徒と教員が手元の端末で入力した情報が校務支援システムに集約され、その情報を個別最適化した教育へ還元できるようなしくみを構築したいと考えています。こうした『スマート スクール』と呼ぶべき世界の実現には、情報を収集する IoT や、収集した情報を分析する AI といった先進 IT の活用が欠かせません。Azure は、Azure Machine Learning や Azure IoT Hub といった、これらを実現するための PaaS も備えています。Azure の提供するサービスを最大限活用しながら、スマート スクールの実現を目指していきたいですね」(渡部 氏)。

多くの自治体で教育の ICT 化が取り組まれている一方、校務の情報化に向けた取り組みを進める自治体は、まだまだごく一部に限られています。たとえ ICT 教育の設備を整備したとしても、それを活用する教員のリソースに余裕がなければ、有効な活用は生まれえません。西条市が実施した教育クラウドの取り組みは、教育と校務、双方の ICT 化を目指す自治体にとって、有効なモデル ケースとなるでしょう。

写真.西条市教育委員 指導部 学校教育課 専門員兼
指導係長兼 教育CIO補佐官 渡部 誉 氏, 四国通建株式会 ICT事業部 松山営業所 課長 長橋 俊二 氏,四国通建株式会社 ICT事業部 SIマネージャー 服部 博文 氏

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