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国立大学法人 岐阜大学

 様に導入

大学本来の価値を向上させる "研究 IR" 実践に向け、膨大な情報資産を多様な書式・形式のまま管理し、分析・活用する画期的な情報基盤を、クラウドで実現

写真:岐阜大学

国立大学法人 岐阜大学

岐阜大学では、2004 年に国立大学法人となって以来、6 か年単位で改革を推進してきました。第 3 期となる 2016 年から新たな中期目標・中期計画に取り組むと共に、いわゆる「2025 年問題」(団塊世代が 75 歳以上となる超高齢化社会の到来) を見据えた 10 か年計画 "岐阜大学の将来ビジョン" に取り組んでいます。このビジョンに基づき、「研究力の強化」といった大学本来の価値を高めるため、同学は大学 IR に力を入れています。
その実現のために、クラウド サービスと先進のテクノロジー利用による画期的な情報基盤の構築・活用が今、進められています。

<背景とねらい>
「岐阜大学の将来ビジョン」を強力に後押しするために、大学 IR に必要な情報基盤を追求

国立大学法人 岐阜大学 (以下、岐阜大学) は、清流の国と称される豊かな自然に恵まれ、東西文化が接触する地理的条件や歴史を背景とした "岐阜" という「人が育つ場所」という風土の中で「学び、究め、貢献する」人材を輩出し続けてきました。近年では、全国で唯一の単独サテライト研究機関として iCeMS (Institute for Integrated Cell-Material Sciences : 物質-細胞統合システム拠点, 文部科学省の WPI 〈World PremierInternational Research Center Initiative〉 の採択を受けた京都大学の研究施設) に参画し、"物質と生命の境界"を探究する「物質-細胞統合科学」という学際領域の創出を目指すほか、WPI と文部科学省の「地 〈知〉 の拠点 (Center of Community : COC)」の獲得、その発展型である COC+ (地 〈知〉 の拠点大学による地方創生推進事業) 事業の展開、44 大学からなる工学国際ネットワーク形成、「金型人材育成事業」、「救急救命ネットワーク構築事業」、「国際教養コース」開設など、地域活動から国際活動まで全国のモデルとなる大きな実績を上げてきました。

そして今、岐阜大学では 2025 年に向けた「岐阜大学の将来ビジョン」を掲げ、さらに価値向上を期しています。
このビジョンは、教育・研究・社会貢献・国際化・大学病院を 5 つの柱として、それぞれの強み・特色を連携し、さらに強みとして成長させて「地域活性化の中核拠点であり、かつ特定の強み・特色を有する領域で国際的 / 全国的な拠点をなす大学」を目指していく構想です (図 1 参照)。
岐阜大学ではこのビジョンの実現に向けて、情報統括連携本部 (2017 年度 設立) を中心として、岐阜大学全体の価値を高める IR (Institutional Research) に注力しています。

図 1

図 1. [拡大図]

岐阜大学では、この IR を推進するために、非常に画期的な情報基盤整理に取り組んでいます。それが、学内に分散・埋没している「教育」や「研究」に関わる "知の資産" を書式等にかかわらず、すべてそのままの形でデータベース化して、学内のさまざまな活動に効率よく活かすプロジェクト="戦略的統合データベース" です。

岐阜大学 学術研究・情報担当理事 副学長である福士 秀人 氏は、その目的を次のように説明します。
「本学の将来ビジョンを達成するためには、大学本来の価値である研究活動の質を高める必要があります。そのスタートを切るためには、本学の現在の研究力を客観的に把握しなければなりません。その役割を担うシステムとして本学では、ARIS-Gifu という教育研究活動システムを利用して、研究論文や知的財産、学生論文、社会活動、そして教員プロフィールなど、さまざまな情報を IR などに活用してきました。しかし残念ながら、従来の ARIS-Gifu はデータの登録に手間がかかることなどもあり、教員の活用度が高いとは言えず、学内に埋もれていた教育・研究などの活動成果も数多くありました。中には非常に優れた研究活動もあるのですが、当の教員たちに聞くと『このぐらいは当たり前のことだ』と謙遜する人が多く、それほど積極的にアピールすることはないと言うのです。しかし、大学の価値を高めていくためには対外的なアピールも重要です。そこで、ARIS-Gifu が内包していたすべての問題を解決するための施策として浮上したのが、"戦略的統合データベース" なのです。」

貴重な「生データ」が業務システムではなく事務員の PC 内に埋もれていた現実

写真:国立大学法人 岐阜大学 理事・副学長 (学術・情報担当) 図書館長 COC/COC+ 事業責任者 獣医師、博士 福士 秀人 氏

国立大学法人 岐阜大学
理事・副学長 (学術・情報担当)
図書館長
COC/COC+ 事業責任者
獣医師、博士
福士 秀人 氏

写真:国立大学法人 岐阜大学 研究推進・社会連携機構 副機構長 工学部 教授  工学博士 大矢 豊 氏

国立大学法人 岐阜大学
研究推進・社会連携機構
副機構長
工学部 教授
工学博士
大矢 豊 氏

写真:国立大学法人 岐阜大学 教育学部 学習協創開発研究センター 教授 加藤 直樹 氏

国立大学法人 岐阜大学
教育学部
学習協創開発研究センター 教授
加藤 直樹 氏

"戦略的統合データベース" は、研究論文のほか書式も形式も異なる多種多様なドキュメント、さらには美術・芸術の成果物まで、さまざまな「非構造化データ」をストックし、任意に検索し、閲覧・分析・評価などが行える仕組みです。
RDB (Relational Database) として設計された ARIS‐Gifu のように、データの構造を細かく定義していないため、データを登録する際にも、教員に余計な手間を強いることがありません。

「多種多様な活動を行っている教員たちを正しく評価し、各人のモチベーションを高めていくためにも、学内にある生のデータを集めることが、もっとも重要なことだった」と、岐阜大学 研究推進・社会連携機構 副機構長 工学部 教授 工学博士 大矢 豊 氏は説明します。
「多様な人材を育成するためには、それぞれの活動に則した評価軸を据える必要があります。そのために、各人の科学研究費の推移など、さまざまなデータを得るため、2015 年に大学内の情報資産の洗い出しを行いました。この時に分かったことは、財務や会計、人事といった業務システムが実際に取り扱っているデータの割合が、想定よりも少なかったということです。そこで、さらに調べてみると、事務員の PC の中に、Excel などにまとめられた生のデータが数多く保存されていたのです。システムが定義するデータ構造の枠内に納まらなかった、そうした生のデータを集めて、分析できるように環境を整えることが重要だったのです。」

本プロジェクトのリーダーを務める教育学部 学習協創開発研究センター 教授 加藤 直樹 氏も、「10 年越しの想いが、ようやく形になった」と振り返ります。
「10 年ほど前に、教育に関する情報の流れを円滑にすると共に、業務負荷を軽減するためのワークフローの整備を行えないか、福士 先生と相談したのが、そもそもの始まりだったと記憶しています。そして、2014 年 4 月に現在の学長が就任し、将来ビジョンの最初のバージョンが提示された頃から IR のための情報基盤整備の検討が本格的に始まり、今日に至っています。」

そして、歴史ある岐阜大学に存在する、膨大な情報資産を網羅するデータベースを実現させるには「クラウド サービスと、大学 IR への知見を豊富に持ったパートナーの存在が不可欠だった」と、3 者は声を揃えます。
それが、パブリック クラウド サービスである Microsoft Azure であり、日本国内で数々の大学 IR に貢献してきた実績を持つ、富士通株式会社 (以下、富士通) の存在でした。

<Azure の採用理由とシステム概要>
構想実現のカギは、多様なデータを管理する仕組みと大学 IR の知見を備えたパートナーの存在

岐阜大学の戦略的統合データベース プロジェクトは、「研究」を中心に据えた "研究 IR システム" の構築からスタートしています。2016 年度から大きく 3 段階に分けてプロジェクトが進行しており、2017 年 3 月からプロトタイプが稼働。研究論文を公表する窓口として、国立研究開発法人科学技術振興機構知識基盤情報部が提供する「researchmap サービス」を活用するほか、既存の知的財産データベースや共同研究・受託研究・受託事業データベースとも連携しています。

この研究 IR システムを可能にした主なポイントは、下記の 3 点にあります。

  1. 大学 IR と Azure に精通した、富士通のノウハウとナレッジ
  2. 生のデータ (非構造化データ) を一元管理する Azure Cosmos DB や Azure Data Lake Store と検索機能の Azure Search
  3. クラウドのメリットを活かし、手軽に トライ & エラーを繰り返した開発プロセス
写真:富士通株式会社 オファリング推進本部 ワークスタイル変革オファリング統括部 MSソリューション推進部 シニアエキスパート 利光 哲哉 氏

富士通株式会社
オファリング推進本部
ワークスタイル変革オファリング統括部
MSソリューション推進部
シニアエキスパート
利光 哲哉 氏

写真:富士通株式会社 文教システム事業本部 第二システム事業部 第一システム部 吉野 育生 氏

富士通株式会社
文教システム事業本部
第二システム事業部
第一システム部
吉野 育生 氏

写真:株式会社富士通アドバンストエンジニアリング

株式会社富士通アドバンストエンジニアリング
デジタルエンジニアリング本部
先進技術センター
イノベーション推進室
橋本 寛之 氏

富士通で 6 年前ほどから大学 IR に携わっているオファリング推進本部 ワークスタイル変革オファリング統括部 MSソリューション推進部 シニアエキスパートの利光 哲哉 氏は、次のように話します。

「当社は、大学 IR が国内で活性化してきた 2010 年頃から実績を重ねてきています。大学 IR の切り口は各大学で異なりますが、これまでは "教学 IR" として学生を分析するケースの方が多くありました。今回、岐阜大学の取り組みでは、Azure Data Lake Store などの最新技術を活用することで、大学の本質的な価値を支える研究力の向上に資する "研究 IR" を岐阜大学の皆様と協創することができました。これは、当社にとっても大変に価値があることだと思っています。」

富士通では、大学 IR のソリューション提案に際し、各大学の特色や戦略などを分析してシートにまとめ、最適解となるプランをまとめ上げていきます。
今回は特に、研究活動に主眼を置いた初めての IR ソリューションであり、Azure Data Lake Store などさまざまな最新技術の活用など、岐阜大学にとってはもちろん、富士通にとっても未踏の領域を切り拓くプロジェクトであり、さまざまな議論があったと、富士通アドバンストエンジニアリング デジタルエンジニアリング本部 先進技術センター イノベーション推進室 橋本 寛之 氏は振り返ります。
「当初、社内からデータベースに SQL Server を利用する案も出たのですが、今回のニーズには適しませんでした。大学内に存在する多種多様な教育・研究の成果物を、RDB として細かく構造化した枠の中でデータを管理しようとすると、最大公約数の情報しか残らなくなってしまい、本来目指すべき "研究 IR" からかけ離れてしまいます。また、"分析・評価" の軸なども、運用が開始されて以降、使いながら進化させていくことが大前提となります。そこで、Azure に用意されている標準的な技術を活用して "データの管理" と "データの分析" を明確に切り分けることにしたのです。」

「作ってみなければ分からないシステム」を無駄なコストなしに、円滑に開発

こうして、学内のあらゆるデータを Azure Data Lake Store で管理し、そのデータを検索する仕組みとして Azure Search を活用。さらに、学外への論文開示やデータ分析には「researchmap」や Power BI など、さまざまなサービスやツールが自由に活用できるシステム構成 (図 2 「システム概念図」参照) が描き出されると、プロジェクトの第 1 段階はスムーズに進行。2016 年 12 月に開発を開始してから、わずか 3 か月でプロトタイプが完成しています。
特に、開発・構築のプロセスにおいて、「最小限のリソースでテストを行い、その後、状況に応じていくらでもリソースを拡張していけるクラウド サービスのメリットが存分に活かされた」と、加藤 氏は言います。
「今回の開発を通じて特に実感していることが、『クラウド サービスは、大学が抱えているニーズとの親和性が高い』ということです。今回のシステムでは『作ってみなければ分からない』ことが非常に多かったのですが、テスト用のサーバー リソースもすぐに手に入りますし、不要になった環境を削除するのも簡単です。構築後にデータ量やトラフィックが増えた場合でも、必要なリソースを柔軟かつ速やかに調達することが可能です。また、富士通さんも非常に熱心に取り組んでいただき、試作とフィードバックを細やかに繰り返しながら、非常に効率的に開発を進めることができました。予算も時間も限られる中で学内の多様なニーズを満たしていくには、こうした開発プロセスがとても有効だと思います。」

図 2

図 2.システム概念図 [拡大図]

日本リージョンで運用される信頼性と高度なセキュリティを備えたクラウド

加藤 氏はさらに、数あるクラウド サービスの中から Azure を選択した理由について、次のように説明します。

「クラウドの優位性については、プロジェクト検討中に参加した国立大学法人情報系センター協議会でも広島大学などの事例を伺っていましたので、以前から興味を持っていました。懸念があるとすれば、セキュリティとデータのプライバシーの問題です。本学でクラウドを導入するに際し、必要最低限の条件となるのが、日本国内のデータセンターで、日本の法律に基づいてサービスが運用されていることでした。その点、Azure には国内リージョンのデータセンターが東西に 2 か所あり、日本の法律を遵守していますので、勝手にアメリカなど国外の主権者にデータを渡される心配もありません。しかも、2016 年に初めてクラウドセキュリティのゴールドマークを取得するといった実績もあります。
その上で、データ レイクや マシンラーニング、コグニティブ システムなど、先進的な機能が充実しています。これらの点を評価して、Azure の採用を決定しました。」

<研究 IR システムの効果と将来展望>
各部局が独自に行ってきたデータ分析方法にも対応できる柔軟性

岐阜大学の研究 IR システムは、2017 年度の本格運用を第 2 段階として、第 3 段階となる 2018 年度には マシン ラーニングやコグニティブ システムの活用まで視野に入れています。
現在は、試験運転の段階ですが、すでに大きな手応えを実感していると、大矢 氏は言います。
「3 月にプロトタイプが稼働してすぐ、部局長会にて工学部の実データを使ったデモンストレーションを行ったところ、予想以上の好反応を得ることができました。」

デモンストレーションは、PC 上で分析ツールによってグラフ化されたデータを大画面に映し、任意の項目をクリックすることで、情報をドリルダウンしていけることを、実演したものでした。この時、各部局長から数多くの質問を得ることができたことが大きな収穫であると、福士 氏も声を揃えます。
「これまでも各部局で独自にデータを分析し、教員たちの評価などを行ってきました。彼らが研究 IR システムに大いに興味を示してくれたのは、"部局独自に行ってきた分析・評価の方法が、新しいシステムを使うことで、今まで以上に便利かつ正確に行うことができる" という実感を得ることができた証だと思います。今後、各部局との対話を深めていき、それぞれが持つ分析の知見を共有し、研究 IR システムにフィードバックしていくことが重要になります。」

大矢 氏も「今までは、漠然と推測していた事柄が、データによって裏付けられ、グラフなどの形ではっきりと把握できるようになったことは、大きな成果」だと強調。「今後は、システムで管理する一次情報の量をさらに増やしていくことで、明確な分析結果に基づいて、新しい課題を抽出していくことができるでしょう。」と今後への期待をにじませます。

学内のワークフローまで改善し、教員の負担を軽減

研究 IR システムを含む戦略的統合データベース プロジェクトが「教員の研究・教育活動の正当な評価」に必要なデータを確実に蓄積していくためには、教職員による活用を促進する必要があります。
福士 氏はそのために、「すべての教職員がシステムを活用するメリットを設定することが重要だった」と話します。そして、岐阜大学が、"教職員への直接的なメリット" として重要視した機能が「ワークフローの改善」です。
「これまで、事務的な決済を紙ベースで行っていく中で、書類の行き来が複雑になり、同じような書類が何枚も作成される状況がありました。こうした書類の流れも電子化して、整理すれば、余計な手間がなくなるでしょう。また、データベースの中で教育・研究活動と紐づけて管理することで、大学の中で今何が起きているのかを、正確に把握することが可能になります。そうなれば、文部科学省などから求められる各種の書類も、データベースから必要な情報を抽出し、半自動的に作成できるようになるかもしれません。」

多様な人材の育成と研究力の強化に貢献し、地方国立大学の「強み」を伸ばす

「岐阜大学の将来ビジョン」を裏側から支える戦略的統合データベース プロジェクトは、今後さらに大きな成果を生み出していくでしょう。 福士 氏は最後に、「これまで国に大きく貢献してきた地方国立大学の "強み" を改めて伸ばしていくために、使命を全うしたい」と力強く話します。

「この戦略的統合データベース プロジェクトは、岐阜大学の将来ビジョンを支える 5 つの柱のすべてにつながっています。教員の活動も、教育と研究のバランスは人それぞれです。また、産学連携の共同研究を中心に活動されている教員や、ライフサイエンスなどの分野で活動されている教員では論文の量にも差があります。しかし、各人が確かな成果を生み出していることは間違いありません。それを、明確なデータに基づいて評価し、多様な人材の育成に活かしていくことが、私たち大学側の使命であることは間違いありません。
さらに言えば、地方国立大学はこれまで数多くの先進的な研究成果によって、国に貢献してきたと思いますが、現在は、研究力の低下が課題として挙げられています。この課題を克服し、研究力を高めていくことは、学生たちにも将来に対する夢と希望をもってもらうことにもつながります。
そのためには、自分たちの現状を正確に把握し、的確な改善プロセスを踏んでいくことが大切です。研究 IR システムなどをしっかりと活用し、データを縦横に把握・分析していくことで、大学全体が今よりもさらに良い方向に進むことと期待しています。」

写真:9 名様集合写真

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