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導入事例

 様に導入

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社会福祉法人恩賜財団済生会支部 埼玉県済生会栗橋病院

 様に導入

医療の質の向上から経営判断、および地域医療機関との連携強化に向けて、データの分析・可視化及び院内共有を、Power Map for Excel などを活用して促進

"心" を院是とし、地域の医療ニーズに応え続ける社会福祉法人恩賜財団済生会支部 埼玉県済生会栗橋病院では、継続的な医療の質の向上や病院経営の一助として、従来から、院内データの可視化と共有を推進されてきました。そして「2025 年問題」が懸念される今、同院では、医療資源不足が特に顕著である埼玉利根保健医療圏における病診連携をより強固にする萌芽として、同院医療圏の患者分布を地図化・分析するなど、積極的な取り組みが進められています。

<背景とねらい>
医療の質的向上に貢献する客観的指標として、院内のさまざまなデータを可視化し、共有

写真:遠藤 康弘 氏

社会福祉法人恩賜財団済生会支部
埼玉県済生会栗橋病院 病院長
遠藤 康弘 氏

埼玉県済生会栗橋病院は、1989 年に開院して以来 27 年にわたって "心" を院是とし、地域の中核的病院として成長してきました。救急指定病院である同院は、2011 年に「地域救急センター」をオープンすることで、特に地域住民からの要望が高かった「休日・夜間救急医療の地域医療体制」を充実させるなど、常に地域の医療ニーズに応えてきました。

2006 年に DPC (Diagnosis Procedure Combination) 準備病院となり、2008 年から DPC 対象病院として活動している同院では、急性期入院としての機能分化および強化を推進するべく、外来患者数の削減や一般病床の平易近在院日数の短縮などを図るために、地域医療連携を強力に推進してきました。

その成果は著しく、2005 年には 42.4% に留まっていた紹介率は 2013 年時点で 76.3% にまで上昇。逆紹介率も、50.3% から 83.7% へと大きく伸びています。この成果によって外来患者数を 10 年前の約半分にまで減らすことに成功した同院は、救急を中心とした新規入院患者の受け入れ体制を充実。年間約 2,700 台もの救急車を受け入れられる環境を整えてきたのです。

埼玉県済生会栗橋病院が上述のような成果を挙げてきた背景には、院内のデータ活用が大きく貢献していると、病院長である遠藤 康弘 氏は説明します。

「まず、医師をはじめとするスタッフと共有する明確な指標として、電子カルテのトップページに新入院患者数や病床稼働率などを、リアルタイム表示しています。病診連携の紹介率の変化も月次でグラフ化するなど、病院経営に資するさまざまなデータが可視化され、共有されていることで、院内の意識が高まっていることを実感しています。」

院内ポータルのイメージ画面

埼玉県済生会栗橋病院では、こうした ICT 活用を積極的に進めるために 4 名体制の医療情報課を設置し、院内の医療システムを可能な限り内製化してきました。

「自由にデータを取り出し、活用できるオープンな仕様」を選定条件として、2011 年に導入された電子カルテのデータベースには Microsoft SQL Server を活用し、Microsoft Excel にデータを抽出。OLAP (On-line Analytical Processing:オンライン分析処理) を使って、データの分析、加工が行えるように整えられています。

この仕組みによって、利用可能な病床数や、リアルタイムの病床稼働率や新規入院患者数などが、電子カルテのトップページにも埋め込まれた、Microsoft SharePoint Server によるポータル サイトを通じて共有されているほか、医療の質的向上のために各科が必要としているさまざまなデータが月次で整理され、詳細なアクセス権限設定の下に共有されているのです。各科の工夫と成果を経営層が客観的に把握し、公正な評価を行うことが可能となり、院内のモチベーション アップにも効果があると言います。

遠藤 氏はさらに、院内データの活用を積極的に進める背景には、埼玉が直面している重大な医療課題に対応するねらいもあると言います。

「埼玉県における人口 10 万人あたりの医療従事者の割合は、看護師が全国で 46 位、医師に至っては最下位の 47 位となっており、医療資源の不足が顕著です。しかも、当院のある久喜市を含む埼玉利根保健医療圏は、県内においても特に医師の数が少ない地域なのです。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる『2025 年問題』を控えて、地域一帯で医療の役割分担を明確にし、連携を密にするといった対策が急務です。その実現には、医療データのスムーズな共有と活用が欠かせないのです。」

こうした課題意識をもって BI (Business Intelligence) に取り組んできた埼玉県済生会栗橋病院では、「より最適な BI ツールの検討」を、折に触れて行ってきました。
そして 2014 年に、新たに同院の目を留まったツールが、マイクロソフトの提供する Power Map for Excel です。

医療情報課 副課長 早川 真司 氏は、このツールを採用するに至った理由について次のように話します。

「一番のポイントは、操作性に優れていることです。普段 Excel を使っているのと何ら変わらない操作で、無料の地図データ上に、グラフを時系列ごとにわけてアニメーション再生したり、自由に回転、拡大縮小できるなど、非常にわかりやすいビジュアルが作成できます。このインパクトは、とても大きかったですね。」

<システムの概要と導入の効果>
使い慣れた Excel そのままの操作性で
さまざまな統計情報を、グラフィカルに地図化

写真:宮澤 隆美 氏

社会福祉法人恩賜財団済生会支部
埼玉県済生会栗橋病院
診療情報管理士
診療情報課 課長
宮澤 隆美 氏

写真:早川 真司 氏

社会福祉法人恩賜財団済生会支部
埼玉県済生会栗橋病院
医療情報課 副課長
早川 真司 氏

Power Map for Excel は、Office Professional Plus 2013 もしくは Office 365 ProPlus で利用できる、Microsoft Excel のアドイン サービスです。Excel 2013 で通常のグラフを作成するのと変わらない操作で、地図上にグラフを表示させることができます (動画参照)。

埼玉県済生会栗橋病院がこのツールを使って、最初に試みたことが同院を取り巻く医療圏の患者分布の可視化です。診療情報管理士 診療情報課 課長 宮澤 隆美 氏は次のように説明します。

「今後、地域の高齢化が進むと、ご自身では車を運転できない方も増えてきます。そうした実情を踏まえて、地域包括ケアの体制づくりをしっかりと進めていくためにも、当院の医療圏内の患者動態をわかりやすく把握することが重要になります。その一助として、電子カルテ導入後の 3 年間のデータを使って、各地域の患者数をマップ上部に表示してもらいました。その結果、半径 20 ~ 25 km の医療圏が可視化できました。」

Power Map for Excel 操作イメージ

Power Map for Excel 操作イメージ [拡大図]新しいウィンドウ



実は埼玉県済生会栗橋病院では以前から、Google Map を使用して地域一帯の診療所の位置を表示するなど、地域医療連携への活用を模索していました。しかし、Google Map には「使いにくさもあった」と、医療情報課 小池 麻美 氏は言います。

「今までは Google Map や MANDARA を利用して、地域統計データを地図化してきましたが、操作や視覚表現などに不満もありました。そのため利用用途は、周辺の診療科のマッピングにとどまっていました。しかし Power Map for Excel は、それらに比べて使いやすく、そのうえ地図化したデータの拡大縮小やグラフの時系列表示などがスムーズに行えるなど、視覚的な表現力にも優れています。院内のほとんどのスタッフが使い慣れている Excel をそのまま利用しますので、将来的に、全スタッフに自由に活用してもらうことも可能です。」

電子カルテのデータベースに SQL Server を採用するなど
データの利活用が容易な環境を構築

社会福祉法人恩賜財団済生会支部
埼玉県済生会栗橋病院
医療情報課 副主任
木村 圭吾 氏

社会福祉法人恩賜財団済生会支部
埼玉県済生会栗橋病院
医療情報課
小池 麻美 氏

実は埼玉県済生会栗橋病院では、SQL Server を電子カルテのデータベースとして Excel と連携活用しているほかにも、サーバーの台数を集約するために Windows Server Hyper-V を活用してサーバーを仮想化するなど、さまざまなマイクロソフト製品を活用してシステム全体の効率化が図られていると、医療情報課 副主任 木村 圭吾 氏は説明します。

「サーバーの仮想化について、当初は VMware の ESXI を利用してテストを行っていたのですが、さまざまな比較検討の結果、本番導入に際しては、Windows Server の標準オプションとして追加コストの必要なく利用できる Hyper-V を採用しています。そのほか、院内約 60 台の電子カルテ端末のデスクトップに、VDA (Virtual Desktop Access : 仮想デスクトップ) 化した情報系端末を同居させることで、1 台の PC でインターネットも利用できるように効率化しています。」

今後はさらに、導入済みの Microsoft System Center Configuration Manager の活用範囲を広げて院内のソフトウェア資産管理を効率化するほか、Microsoft Lync を会議に活用し、プレゼンテーション資料をデスクトップ上に共有することで会議のペーパレス化を図るなど、より多彩な活用を検討していると言います。

<今後の展望>
誰もが自発的に活用できる BI ツールを活用し
医療課題の解決に資する財産を

埼玉県済生会栗橋病院

遠藤 氏は、現在埼玉利根保健医療圏で普及が進められている、患者の特定健康診査などの情報を地域の医療機関で共有し、住民の命と健康を守るための取り組み「とねっと (埼玉利根保健医療圏地域医療ネットワークシステム)」を例に挙げながら、次のように話します。

「『とねっと』が発行する『かかりつけ医カード』があれば、万一、救急搬送される事態にあっても、救急隊がその患者の健康記録を把握したうえで適切に対応することが可能です。こうした先進的な取り組みも地域では進んでいるのですが、医療現場に存在する膨大なデータの活用は、まだまだ始まったばかりです。これから取り組んでいくべき課題も多くあるでしょう。」

そのためにも、手軽なツールを用いて、さまざまなデータの分析、活用に慣れていくことが大切だと、遠藤 氏は結びます。

「私たちが判断材料とするデータは、豊富かつ即座に整うようになりました。後は、このデータをいかに料理していくかがポイントです。膨大なデータに振り回されるのではなく、次の一手につながる要点を見出していくためには、固定的なデータしか提供できないお仕着せのツールではいけません。Excel を使って自発的にデータを分析活用し、試行錯誤できる当院のシステム環境を活かして、院内に積まれた情報の山を、より多くの医療課題に応える財産に変えていきたいと思います。」

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