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導入事例

 様に導入

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  • 最適化
  • コスト

愛媛県

 様に導入

南海トラフ巨大地震を始めとする大規模災害発生時に、災害対応など県の責務を果たすための業務機能がストップしないよう、BCP 対策を検討。安定稼働とコスト パフォーマンスの両面に優れたテクノロジーとして、Windows Server Hyper-V を活用

愛媛県庁

愛媛県庁

南海トラフ巨大地震が警戒される愛媛県では、大規模災害時における業務継続計画を策定し、さまざまな対策を進めています。その一環として、庁内 LAN システムの物理的な BCP (Business Continuity Plan) 対策が 2012 年度に進行。庁内 LAN システムを支えるサーバーを仮想化して集約するとともに、耐震性に優れたデータセンターを活用。全体の情報化コストを抑えながらも、サーバーの処理能力を向上させるとともに可用性確保のための冗長構成を実現するために、県が導入したテクノロジーが、マイクロソフトが提供する仮想化技術「Hyper-V」でした。

<導入の背景とねらい>
東日本大震災の教訓から、災害対策の想定基準を全面的に刷新

愛媛県では今、四国の南沖にある南海トラフに沿って発生すると予想されている「南海トラフ巨大地震」に備え、さまざまな対策を着々と進めています。
愛媛県 企画振興部 地域振興局 情報政策課 課長 三好 道範 氏は、条件不利地が多いため全国平均よりも劣っている県内の超高速ブロードバンド環境の整備を促進する取り組みも、その 1 つであると説明します。
「県や県内自治体では災害時に住民の避難を促すために、エリア メールや防災行政無線などの伝達手段を整備してきました。今後は、避難直後の安否確認や被災後に長期化する避難生活のサポートにも活用できるよう、避難所に公衆無線 LAN 環境を実現するための準備も、2013 年度から進めていきます。」

愛媛県
企画振興部
地域振興局
情報政策課
課長
三好 道範 氏

災害に備えた BCP 対策が複数進行している中、重要な役割を担っているプロジェクトが、県庁内の業務を下支えしている重要基盤である庁内 LAN システムの BCP 対策でした。
「災害時に自治体が業務機能を失うと、被災者が必要としている災害対応にも支障が生じます。住民の方々を支えるために県庁業務がしっかりと機能できるように備えることは、非常に大きな意味を持っています。」(三好 氏)

愛媛県庁の庁内 LAN システムの物理的な BCP 対策が本格的に動き出したのは、2011 年 4 月のことでした。東日本大震災が起きたことで、BCP 対策の基礎となる「被害想定」が根底から変わったと、当時、愛媛県 企画振興部 地域振興局 情報政策課 行政情報グループ 担当係長であった平田 匠吾 氏は振り返ります。
「従来から各種業務に用いられるサーバー ハードウェアなどは、愛媛県庁内に設置していました。災害対策も考慮はされていましたが、『庁舎は壊れない』ことが前提となっており、停電からの復旧などを中心に考えられていました。しかし、東日本大震災によって、根本から BCP 対策を見直すこととしたのです。」

2012 年度にサーバー ハードウェアなどの更新を予定していた愛媛県では、同時にシステム全体の BCP 対策が検討されていました。従来であれば、このシステム更新もサーバー ハードウェアや PC の入れ替えを主軸として進むはずでしたが、一転して「バックアップ データの遠隔地複製保管」、「外部のデータセンター活用」、「個別に設置されている各種サーバー機器の集約化」など、BCP 対策を盛り込んだ大掛かりなものへと発展していったと言います。
しかし、災害対策といえども限られた財源の中では、すべての方策を容易に実現させることはできません。
そこで、さまざまな手段を慎重に吟味した結果、愛媛県が採用したのは「サーバー仮想化技術の活用」とそれがもたらす「サーバーの集約化のメリットの活用」でした。

愛媛県では、庁内の各課に分散しているサーバーをできる限り仮想化して集約することで、いざという時のシステム復旧を容易にするとともに、設置場所を外部のデータセンターへ移設し、安全性を高めることを考えました。そのため、カギを握る仮想化技術の詳細な検証を実施。Hyper-V や VMware、XenServer など複数の仮想化技術がいずれも問題なく要件を満たせると確認した上で、2012 年 3 月に調達仕様書を策定。同年 6 月に入札を行いました。

そして、最適なコストで要件を満たすものとして落札に至ったのが、Hyper-V を活用することを提案した西日本電信電話株式会社 (以下、NTT 西日本) でした。

<システム概要>
複数の仮想化技術を検討し、「機能」と「信頼性」を確認。その上で、最もコスト パフォーマンスに優れた技術を活用

2012 年 6 月当時、Hyper-V を活用したサーバーの大規模な仮想化は、全国の都道府県において先例のない取り組みでした。しかし、三好 氏は決して「冒険をしたつもりはない」と強調します。
「私たちにとって一番の命題は、『システムの安定稼働』です。その意味では、『導入実績の豊富さ』が大きな判断基準の 1 つになります。しかし、一方には『費用を削減する』というもう 1 つの課題がありますので、コスト パフォーマンスの良し悪しについても深く考慮する必要があります。そして最終的に、『他と比較して遜色のない技術であり、最もコスト メリットに優れており、県のシステム規模においても要件を満たす能力がある』との判断をするに至りました。」

愛媛県
企画振興部
地域振興局
情報政策課
行政情報グループ
担当係長
平田 匠吾 氏

愛媛県
企画振興部
地域振興局
情報政策課
行政情報グループ
担当係長
三浦 正穂 氏

応札を行った NTT 西日本 四国事業本部 法人営業部 ビジネス戦略担当 主査 篠沢 邦彦 氏もまた、Hyper-V について「コスト メリットが最も優れていた」と話します。
「調達仕様書に沿ってコストを考慮すると、Windows Server の Datacenter エディションであれば、Hyper-V を使ってライセンス上無制限にゲスト OS を立てられるということが最大のメリットになりました。さらに、運用管理のシステムとして Microsoft System Center Configuration Manager を採用しています。もちろん、当社でもテスト環境を構築して、Hyper-V の可用性や信頼性の検証を行った上で提案に至っています。」

こうして、Windows Server Datacenter の Hyper-V を活用したサーバーの仮想集約が実現。従来、庁内 LAN システムを支えるために県庁舎内に置かれていたネットワーク オペレーション センター (NOC) のサーバーを仮想化して、外部のデータセンターに移設。2013 年 3 月から稼働しています。
更に、グループウェアやファイル サーバーなどの全庁共通機能を提供するサーバー基盤の他に、庁内向けのクラウド サービス (PaaS) として庁内各課が個別に設置してきた特定業務処理のためのサーバーの約 3 分の 1 を格納するためのサーバー仮想化基盤となる「庁内クラウド」も併設。
この仮想集約の実現により、個別に調達されてきたサーバー費用や、運用管理負荷が激減。また、通常の執務室をサーバーの設置場所としていたことによる故障リスクなども改善され、県庁全体の情報システムが効率化されています。
全庁の端末を含めたこのシステム全体におけるハードウェアとセキュリティに関する構成情報の収集などは、System Center Configuration Manager によって集約管理されています。

また、データ保全についても、従来のローカル バックアップのみの体制からさらに強化。Windows Server に標準搭載されている VSS 機能 (Volume Shadow Copy Service) を活用してサーバーを停止することなくバックアップ データを取得できる運用体制を実現。データセンター内のバックアップ装置を増強すると共に、データを書き出したテープの複製を遠隔地にも運搬して保管しています。

同 情報政策課 行政情報グループ 担当係長 三浦 正穂 氏は、次のように振り返ります。
「これらのまとまった台数のサーバー更新と仮想集約だけでも非常に大きなプロジェクトですが、当時は Windows XP 搭載デスクトップ PC 約 3,700 台を、Windows 7 搭載のノート PC へ更新するプロジェクトも同時進行させていました。更に、多くの Web ベースの業務システムが Internet Explorer (IE) 6 に特化していたため、IE 9 でも正常稼働できるようにするサーバー アプリケーションの大規模な改修プロジェクトも並行して進め、完了させる必要がありました。これら相互に関連し合う複数のプロジェクトの合間を縫って、利用者が新しい端末環境で戸惑わないようにするための工夫なども随所に盛り込みました。」

Office 2007 以降に採用されているリボン インターフェイスと 2003 のインターフェイスとの違いに留意した愛媛県では、アドイン ソフトを活用することで両方のインターフェイスを職員が選択して利用できるように環境を整えています。この工夫により、職員にも戸惑うことなく新しい PC 環境が受け入れられたと言います。

こうした工夫を必要とした上で、Microsoft Office 2010 を導入した理由について、三浦 氏は「コスト比較だけで決めてはならない生産性に直結した道具だから」と説明します。
「オフィス アプリケーションについては、無償提供されている OpenOffice なども比較検討の対象となりました。しかし、Microsoft Office とのファイル互換が完全とは言えず体裁のくずれなど許容できないケースが多いことが多々見受けられました。『既存のドキュメント』などの資産を確実に継承するためには、Microsoft Office が圧倒的に有利でした。」

愛媛県庁の庁内 LAN システム (物理サーバー台数)

愛媛県庁の庁内 LAN システム (物理サーバー台数) [ 拡大する]新しいウィンドウ

<導入効果>
サーバー台数を約 30% 削減し、消費電力を半減、設置スペースを約 70% カット。拠点ごとに分散管理していたデータを集約し、災害に強いシステムに進化

愛媛県では、Hyper-V を活用したサーバーの仮想集約によって、庁内に 236 台あったサーバーのうち、仮想集約が可能なサーバーを徹底して集約化し、サーバー台数を約 30% 削減。165 台にまで減らしています。
また、消費電力と設置スペースも大幅に削減できたため、サーバーのデータセンターへの移設においても費用抑制できたと言います。

西日本電信電話株式会社
愛媛支店 法人営業部
営業担当課長代理
土居 忠彦 氏

西日本電信電話株式会社
四国事業本部
法人営業部 ビジネス戦略担当
主査
篠沢 邦彦 氏

「従来は、19 インチのラック 23 本が庁内に置かれていましたが、新環境ではわずかに 6 本と激減しています。非常に省スペース化できました。さらに、消費電力も半減しました。」(三浦 氏)

平田 氏は、その他の成果として、地方局や支局など県内 11 か所の拠点ごとに設置されていたファイル サーバーを、3 か所の地方局に集約させたことを挙げています。
「計 17 台のサーバーが 11 拠点に分散していたのを、3 拠点 12 台に集約しました。この取り組みの成果として一番大きなことは、Windows Server の DFS-R 機能 (Distributed File System-Replication) を活用して、データをサーバー間で複製できるようになったことにあります。今まではサーバーが設置された拠点分のデータしか保管しておらず、その拠点に対してはサービス提供のための唯一のサーバーでもあったため、『サーバーが停止したらサービスが即停止』という危険があったのです。今は万一の際にも、いずれかの拠点から、パフォーマンスは低下するものの同じサービスが継続提供できるようになりましたので安心です。」

Hyper-V での大規模な仮想環境構築は今回が初めてという NTT 西日本も、このプロジェクトを通じて大きな手応えを得たと篠沢 氏と、同 愛媛支店 法人営業部 営業担当課長代理 土居 忠彦 氏は声を揃えます。

「今回のプロジェクトを通じて、今後の Hyper-V 活用にも手応えを感じました。技術的な課題が生じた場合には、窓口となる Microsoft Services を通じて手厚いサポートをもらうこともできました。今後、当社としてクラウド サービスも含めた事業展開を考慮する上で、重要な選択肢になったと感じています。」(篠沢 氏)

「このプロジェクトでは、当社を含めたプロジェクト参画企業がしっかりと協力し合い、確かなシステムを構築できたと思っています。さらに今後は、日本マイクロソフトとも歩調を合わせて、さまざまな提案が行えるようになったという実感があり、非常に心強く思っています。」(土居 氏)

ライセンス コストの最適化には、マイクロソフトの公共機関向けボリューム ライセンスである Enterprise Subscription Agreement for Government Partners (GESA) が貢献しています。
「GESA はサブスクリプション形式で年額払いが可能なライセンス形式となっており、Windows Server や System Center も特別価格で包括的に契約できますので、ライセンス コストを大幅に削減した提案が行えました。アップグレード権や研修トレーニングなどの特典がついたソフトウェア アシュアランスが標準で装備されているのも、大きなポイントです。」(篠沢 氏)

<今後の展望>
より充実した災害対策の実現に、今後も努力

BCP 対策の充実を目指した愛媛県の取り組みは、まだそのすべてを完了した訳ではありません。しかし、「サーバー更新」と「端末の更新」「物理的な BCP 対策としての仮想化集約」そして「サーバー アプリケーションの IE 9 対応」という 4 つの大きなプロジェクトを「無事にソフト ランディングさせることができて、まずは安堵している」と三好 氏は話します。

「私が情報政策課に着任した 2011 年に東日本大震災が起こったこともあり、BCP 対策は最も気がかりとなっていたものでした。今回、限られた予算の枠内ででき得る限りのことができたのではないかと思っています。これだけの大掛かりなプロジェクトがソフト ランディングでき、職員およびパートナー企業の精力的な努力に感謝しています。」

愛媛県における情報化政策を強化する試みは、2013 年度以降も、着々と進行していく予定であると三好 氏は締めくくります。
「災害対策として、『やりたいこと』、『やるべきこと』は多々あります。しかし、そのすべてを一気に解決させることはできません。冒頭にお話しした公衆無線 LAN 環境の整備など、さまざまな課題に今後も取り組んでいきます。」

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