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導入事例

 様に導入

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  • iPad

OECD東北スクール

 様に導入

地域復興と 21 世紀型スキルの取得を目指した人材育成教育で Windows 8 と Office 365 を活用
地域間コミュニケーションと効率的なチーム教育を実現

経済協力開発機構 (OECD) が文部科学省復興教育支援委託事業として推進している復興教育プロジェクト「OECD東北スクール」では、東北被災 3 県の 9 市町村から集められた 100 人の中高生に対して、人材育成教育を行っています。各地に離れながら研究や学習を続ける生徒たちは、Microsoft Office 365 や Windows 8 などの IT をフル活用しながら、「フランス、パリのイベントで東北をアピールする」というプロジェクトの最終ゴールに向けて活動しています。

<導入の背景とねらい>
東北 3 県の 9 市町村で行う
復興教育プロジェクト

福島市立岳陽中学校
教諭
角田 直之 氏

東日本大震災直後の 2011年 4 月に来日したアンヘル・グリア OECD 事務総長は、東北の復興に協力することを約束し、文部科学省や、その後に運営事務局が置かれることになる福島大学との協議を重ねて、OECD東北スクールを設立しました。OECD東北スクールには、岩手県大槌町、宮城県気仙沼市、南三陸町、女川町、福島県相馬市、伊達市、二本松市、大熊町、いわき市の 9 市町村から 約100 名の中高生が参加。2 年半の活動期間の中で、全員参加の集中スクールを 5 回と各地域ごとの地域スクールを行い、2014 年 8 月にパリで行われるイベントに向けてのテーマ別チームの活動も行っています。

生徒たちの指導などを行っている福島市立岳陽中学校教諭の角田 直之 氏は、OECD東北スクールの活動を次のように話します。「地域復興が進まない中で、中高生が自分たちの力で地域を復興するために何かできないかと考えて作られたのが、OECD東北スクールです。8 月に行われるパリでのイベントで、東北のよさを世界に PR することが目標ですが、イベントを成功させることだけでなく、自分たちでしっかり考える力を付け、地元での課題を見つけ、地元の人と交渉できる人材になってほしいと思って指導しています。今後 20 年経って、生徒たちがどのように成長していき、地域で活躍できる大人となることが、OECD や文部科学省、参加している教師たちが期待していることです」。

「21 世紀型スキル」がテーマとして設定されていることも、OECD東北スクールの大きな特長です。これは、OECD が考えるキー コンピテンシー (主要能力) で、リーダーシップ、企画力、創造力、建設的批判思考力、実行力、交渉力、協調性、国際性などが含まれ、グローバルで多様性があり、知識基盤型社会である 21 世紀に必要な能力を身に付けることが OECD東北スクールの課題となっています。「21 世紀型スキルをひと言で言えば、従来の社会に適応するための教育ではなく、社会を活用して創り出す教育だと私は考えています。変化が激しく、覚えた知識が役に立つとは限らない今後の世の中では、新たな仕事を創出したり、自ら課題を見つけて、解決するために交渉するということが必要で、そのための力を付ける必要があります」と角田 氏は話します。

そのため OECD東北スクールでは、パリのイベントに対しても、テーマ別チームによって生徒たち自身が資金を調達したり、企業や官公庁、地域に協力を働きかけたり、広報活動や活動記録などを行っています。

9 つの地域に分かれている OECD東北スクールでは、Office 365 を、各地域間の情報共有やファイル共有、コミュニケーションの手段として役立てている


OECD東北スクールの第 5 回 集中スクールでは、パリでの発表に向けたプレゼンテーション制作やスピーチの練習が行われていた


各チームでは、震災被害、地域産業、食文化といったテーマで研究を行い、その結果を発表して、東北を世界に PR する

<導入の経緯>
生徒自らが課題を見つけ
プレゼンテーションで IT 導入を決める

2014 年 3 月 22 日から 25 日まで、OECD東北スクールの第 5 回集中スクールが岩手県で行われました。その活動内容や、IT 導入の経緯を生徒たちに直接うかがいました。

地域スクールでは、地域ごとに産業の課題や食文化などのテーマを決め、パリのイベントに向けたプレゼンテーション作りなどが行われています。たとえば、大槌町の生徒は「今を失う可能性を伝えたい」と話し、「いきなりの津波でさまざまなものを失い、後悔なども感じました。自分が感じた後悔を、他の人たちに味わって欲しくありません。今を失う可能性があり、今を大切に生きてほしいということを伝えたいと思います」と説明してくれました。また、気仙沼市の生徒は、震災により中断し、2013 年 2 月 17 日に 2 年ぶりに再開した「気仙沼天旗まつり」をテーマにし、「再開までにたくさんの人たちの協力があったので、伝統のある気仙沼の天旗を通して感謝の気持ちを伝えることが恩返しになると考えています」と話します。

OECD東北スクールの活動を行っていくうえで IT の力が必要だと最初に感じたのは、生徒たちだったと言います。地域スクールでは同じ市町村内の生徒でチームを組んで活動していますが、大槌町と大熊町のコラボレーションで写真展を行うなど、地域チームどうしの共同作業を行う場合もあります。また、テーマ別スクールでは、イベントの基本的な構想を立てる「シナリオ チーム」、企業、行政、大学との連携や資金調達を行う「産官学連携チーム」、 "チーム環" (OECD東北スクール 100 名全員のチーム名) のコミュニケーションや宣伝活動を行う「コミュニケーション チーム」、活動記録を行う「セルフ ドキュメンタリーチーム」の 4 つのチームが組まれ、地域に限定されないメンバーが選ばれています。これらの活動を行うには、PC やタブレットなどのデバイスや遠隔地間でコミュニケーションを行うしくみが必要となります。

100 名の生徒の活動を、OECD のスタッフ、教師や教育委員会指導主事、福島大学の学生、NPO スタッフ、企業から参加しているボランティアなどが支えている


2012 年の第 2 回集中スクールのときには、ほとんどの生徒が PC などを持っていませんでした。しかし、プレゼン資料作りや資料のやり取り、コミュニケーションなどで IT の必要性を感じた生徒が自分で PC を購入し始める中、2013 年 3 月に気仙沼で行われた第 3 回集中スクールでは、代表生徒が IT の必要性に関するプレゼンテーションを行いました。その結果、8 月に協力企業の1社から Office 365 を利用できるように設定された iPad が無償貸与され、生徒全員がタブレットと Office 365 を使ってコミュニケーションや活動を行える体制が整いました。「もともと、ファイルをオンラインで共有してペーパーレスで活動したいという思いがありました。その思いを大人の人たちが汲んでくれて Office 365 を用意してくれ、すごく助かっています。たとえば、集中スクールには 100 人が参加しているので、資料をすべて紙にしてしまうと、ものすごい量の資源が無駄になります。ファイルがオンラインにあれば、全員が閲覧でき、資源の無駄も省けます」と生徒たちは話します。

iPad を使えるようになって、次に課題となったのが資料作りでの文字入力やファイル操作、ファイル管理でした。これらの作業は、タブレットよりもキーボード付きの「タブレット PC」のほうが向いていると生徒たちは考えました。これにより、2014 年 1 月に Windows 8 搭載のタッチ対応デタッチャブル 2 in 1、東芝「dynabook V713/27J」が 9 つの地域と事務局に無償貸与されました。

デタッチャブル型の V713/27J は、タブレットとしても利用でき、指で操作したり、絵を描くことが可能

<導入効果>
資料の作成には、キーボードを使って効率的に入力
プレゼンや描画には、画面を取り外して便利なタブレットとして活用

最も大きな課題だった地域間のコラボレーションでは、Office 365 が大いに役立っていると言います。「Office 365 では、オンラインでファイルを共有できます。これまでは紙で配っていた資料や文書をどこでも見ることができ、だれもが編集して再投稿できるのはすごくいいな、と思いました」と生徒たちは話します。また、Exchange Online の予定表でメンバーの日程を確認して、作業分担やミーティングの予定を組んだり、発表の際にも SharePoint Online 上に保存したデータを使ってプレゼンテーションするなど、OECD東北スクールの活動の利便性が格段に上がったことを生徒たちは実感しています。

Microsoft Lync Online も、地域間のコミュニケーションに役立っています。「Facebook やメールだけでやり取りしていると、文章ではわからないから声を聞いて話がしたい、と思うときがあります。そのようなときには、スケジュールを確認して会議の予定を立て、Lync を使って皆で話すようにしています。最近は Lync を多用していて、最大 12 人くらいでディスカッションすることもありますね」と生徒たちは Office 365 を使いこなしています。また、生徒どうしだけでなく、遠隔地にいる教員に資料を添削してもらったり、相談することも容易になりました。遠隔地と通話するときに電話代がかさんでしまうことを避けるという意味でも、Lync Online は有効であると説明します。

OECD東北スクールの生徒たちが集まり、活動内容や IT の必要性についてグループ ディスカッションした


資料の作成にはマウスやキーボードも使えるほうが便利だと言う生徒は、「タブレットで資料を作っていてタッチ操作をミスすると、図版やレイアウトがズレてしまって修正が大変です。マウスのほうが操作しやすい作業もあるし、キーボードのほうが楽に文字入力できます」と話します。また、画面を取り外してタブレットとして利用できるデタッチャブル型の V713/27J のメリットも生徒たちは感じています。「OECD東北スクールだけでなく、生徒会やさまざまなところでも役に立っています。キーボードで文書を作ったり、画面だけ取り外して見せ合って作業を確認したりできるので便利です。画面をタッチしたり、タッチパッドを使ったりと、操作によってやりやすい方法を選べるのもいいと思います」。

パリのイベントで大規模なドミノを作るといういわき市の生徒は、ペン タブレット代わりに V713/27 を使えることにも魅力を感じていると言います。「これまでのパソコンは、描きづらいマウスで絵を描かなければなりませんでした。ドミノのプロジェクトでは図で説明することが多いのですが、高価なペン タブレットを買わなくても、画面を外して指で簡単な絵を描けるのは便利だと思います。従来の PC の良さとタブレットの良さの両方を持っているので、個人的にすごく好きです」。

タブレットで画面を人に見せて話し合ったり、キーボードで文字入力して資料作りにも役立てられる

<今後の展望>
イノベーターとして
地域を世界に PR する

OECD教育局
OECDシニア政策アナリスト
田熊 美保 氏

2014 年 8 月のパリでの発表の抱負を生徒たちに聞くと、Windows 8 や Office 365 などをフル活用して資料作りや作業のまとめを行い、最高で完璧なプレゼンを行って世界にアピールしていきたいという答えが多く返ってきました。

これまでの 2 年間の活動の中で、生徒たちはさまざまなスキルを身に付けてきました。「周りを見る力を学んだ」と話す生徒は、活動の中で自分や地域だけでなく、 " チーム環 "全体を見る必要を感じ、人への気遣いもできるようになったと話します。また、被災状況や現状を学ぶ中で視野が広くなり、自己中心的ではなくなったという生徒や、引っ込み思案な性格だったが人の顔を見て話さないと気持ちが伝わらず、話さなければ自分の意見を通せないことに気付き、自分に自信が持てるようになったと話す生徒もいました。

OECD教育局 OECDシニア政策アナリストの田熊 美保 氏は、OECD東北スクールでの生徒たちの成長を次のように話し、生徒たちにエールを送ります。「OECD東北スクールの中で、生徒たちは OECD が望んだ力やスキルを付けてくれています。アンケートを取ってみると、問題解決力などは高くなっている一方、もっとグローバル力を付けなければならないと自ら答えています。しかし、一部の生徒は既に現地調査でパリに渡っており、現地の中高生と出会っています。たとえば、いわき市のチームはドミノがフランスでどのように受け入れられるかを不安に思っていますが、Skype や Lync を使ってフランスの中高生と話して見せ方を考えることもできるはずです。自分たちのキャッチフレーズとして "国境を越える" を掲げているのでその意識ができれば、もっと IT を活用できると思います。被災した自分たちがかわいそうだとかではなく、イノベーターとして世界に知られたいというビジョンが生まれてきているので、次に必要なのは "行動" であることは、生徒たちはわかっています。後は、行動に移すだけなので、頑張ってほしいですね」。

OECD東北スクールで学んだ生徒たちがどのような大人になり、地域で活躍していくのか。震災のことを忘れることなく、被災地だけでなく社会全体で見守っていく必要があります。

グループ ディスカッションに参加してくれた OECD東北スクールの皆さん

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