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導入事例

 様に導入

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小田急電鉄株式会社

 様に導入

鉄道輸送の安心、安全と顧客満足度のさらなる向上を目指し、
Windows 8.1 タブレットと Microsoft Office 365 で情報収集および伝達を迅速化

写真:小田急電鉄株式会社

小田急電鉄株式会社

"安心、便利、快適" によって "上質と感動" を提供し続けている小田急電鉄株式会社。ここでは鉄道輸送の安心、安全と顧客満足度をさらに高めるため、Windows 8.1 タブレットと Office 365 が活用されています。これらのモバイル デバイスとクラウドの組み合わせによって駅係員への運行情報伝達などを迅速化すると共に、問題発生時の情報共有もスピーディに行えるようにしているのです。今後も多様なアプリケーションを開発することで、活用範囲を拡大していく計画。Microsoft Lync Online によるリアルタイム コミュニケーションにも大きな期待が寄せられています。

<導入の背景とねらい>
鉄道運行の安心、安全に欠かせない的確な情報伝達
これを迅速化するためモバイル デバイスの導入へ

小田急電鉄株式会社
経営政策本部 IT推進部
部長
後藤 真哉 氏

小田急電鉄株式会社
経営政策本部 IT推進部
課長代理
前原 一人 氏

小田急電鉄株式会社
CSR・広報部 (広報担当)
斉藤 庸介 氏

顧客に提供する価値を継続的に高め、ブランド イメージを確固たるものにするにはどうすればいいのか。これはあらゆる企業にとって、最も重要な経営課題の 1 つだと言えます。そのアプローチとして欠かせないのが、顧客に対する迅速かつ正確な情報提供です。これを十分に行わないと、顧客が不安を感じ、ブランド イメージが損なわれる危険性があるからです。また問題発生時の対応を迅速かつ的確に行える体制の確立も、避けて通れないテーマになります。

このような課題への対応を、IT の積極活用で大きく前進させようとしているのが、小田急電鉄株式会社 (以下、小田急電鉄) です。同社は日本最大のターミナル駅である新宿を起点に、小田原や江の島、多摩ニュータウンを結ぶ 3 路線を運営する鉄道会社。路線規模は 120.5 km に及び、1 日あたりの旅客数は約 200 万人に達しています。また小田急グループの中核企業でもあり、約 100 社のグループ企業が連携することで、運輸、流通、不動産、サービスなど多岐にわたる事業を展開しています。

「沿線エリアに広がる都市と自然の恵みを活かし、1 つでも多くの "上質と感動" を提供することが、小田急グループの存在意義です」と、同社のブランディングについて語るのは、小田急電鉄株式会社 CSR・広報部で広報を担当する斉藤 庸介 氏です。そしてその基本となるのが人々の生活シーンにおける "安心、便利、快適" であり、特に重要なのが安心および安全な鉄道輸送なのだと説明します。

「鉄道運行の安心および安全は当社にとって最も重要なキーワードですが、日々の運行において問題を完全に回避することは、現実的には不可能です」と言うのは、小田急電鉄株式会社 経営政策本部 IT推進部 部長 後藤 真哉 氏。ここで重要になるのが、問題が生じた時に迅速に対応し、顧客に安心してもらえる情報を提供することだと説明します。「情報をどのように提供するかも、 "上質と感動" をお客様に感じていただくうえで、重要なサービスの 1 つであると位置付けています」。

鉄道業界における情報伝達は、音声通信の利用が一般的です。運輸司令所を中心とした鉄道内線や列車無線によって、必要な情報が口頭で駅係員や乗務員に伝えられるのです。また各列車の走行位置や遅れなどの情報は、TID (Traffic Information Display) と呼ばれるシステムで、視覚的に伝達されます。しかし「より速く、より正確に、よりきめ細やかな情報を提供するには、もっと新しいテクノロジーを活用すべきではないかと考えていました」と後藤 氏は語ります。

最近では業務システム用端末として PC が各駅に配備されるようになっており、電子メールによる情報伝達も行われるようになっています。しかし「これらの端末は有線ネットワークで接続されており、機動力に欠けるという問題がありました」と指摘するのは、小田急電鉄株式会社 経営政策本部 IT推進部 課長代理 前原 一人 氏です。TID も有線だったため、事務所に戻らないと情報を確認できなかったと言います。

いつでもどこででも、迅速に情報収集し提供を行うにはどうすればいいのか。この問いに対して小田急電鉄が出した答えが、無線接続可能なタブレットの活用でした。タブレット製品としては Windows 8.1 タブレットを採用。これに加えて Office 365 も、情報共有の基盤として活用しているのです。

<導入の経緯>
操作性やセキュリティなどを高く評価
すべてを 1 社でカバーできる点も重視

小田急電鉄株式会社
旅客営業部
業務・教育担当
市野 学 氏

小田急電鉄株式会社
経営政策本部 IT推進部
川村 汀 氏

小田急電鉄がタブレット活用の検討を開始したのは 2013 年夏。最初のきっかけになったのは、TID の画面をモバイル デバイスに配信できる「WebTID」と呼ばれるシステムを紹介されたことでした。「TID をモバイル化できるのであれば、タブレットの導入を本気で検討すべきだと考えました」と前原 氏は振り返ります。その後、複数のタブレット製品を比較検討した結果、2013 年 12 月に Windows 8.1 タブレットと Office 365 の採用を決定。その理由は大きく 3 つあったと説明します。

まず第 1 は既存業務システムとの親和性です。小田急電鉄では Windows Server 上で各種業務アプリケーションが稼働しており、その端末として Windows PC が導入されています。Windows 8.1 ならこの環境とシームレスに連携できます。

第 2 は操作性の高さです。「今回の導入で初めて Windows 8.1 タブレットを使いましたが、とても親しみやすいと感じました」と語るのは、小田急電鉄株式会社 旅客営業部で業務・教育を担当する市野 学 氏。日常業務でよく利用されている Microsoft Excel や Microsoft Word もそのまま使えるため、業務現場への展開も容易だと指摘します。また画面のスライド操作で、作業状態を維持したままアプリケーション画面を切り替えられるのも、他のタブレット製品にはない優れた特徴だと説明します。

第 3 は信頼性です。「やはり市民のライフラインである鉄道の運行に欠かせない的確な情報伝達の基盤として、ミッション クリティカルなエンタープライズ ビジネスで長年の実績がある Windows プラットフォームは安心です」と後藤 氏。Active Directory のドメインに参加することで既存システムと同様のユーザー認証が可能なことや、Office 365 と Windows Intune の組み合わせでモバイル デバイス管理やマルウェア対策を集中的に行えることも、信頼性を確保する上で重要なポイントになると言います。

これらに加え、システム全体を 1 社のベンダーで賄える点も重視されました。「マイクロソフトなら、クライアント OS からアプリケーション、クラウド サービスまで、ワン ストップでサポートが受けられます。当社は IT 企業ではないので、問い合わせに対してシンプルに対応していただけることも重要なのです」 (前原 氏) 。

採用決定後すぐにタブレットを数台用意し、トライアルに着手。まず WebTID の試行が行われ、タブレットで撮影した写真や情報を Microsoft SharePoint Online で共有するしくみも 2014 年 1 月に構築しています。またこれらと並行して、タブレットでメモ入力や報告書作成を行うアプリケーションも開発しています。

「写真共有や情報入力のアプリケーションは、メンテナンスや何らかの問題対応が必要な時に、現場での情報収集と共有を迅速かつ的確に行うためのものです」と説明するのは、小田急電鉄株式会社 経営政策本部 IT推進部 川村 汀 氏。以前はデジタル カメラとボイス レコーダー、報告用紙を持参して現場調査を行い、その情報を駅事務所に持ち帰ってから運輸司令所や本社に伝達していましたが、これらの機能をタブレット 1 台に集約し、その場で伝達できるようにしているのだと言います。2014 年 1 月中旬には 11 駅にタブレットを配備し、事故対応の訓練でこのしくみを利用。その結果をフィードバックすることでアプリケーションをさらに改善し、2014 年 5 月から全駅展開を進めています。

現在のタブレット システムの全体像は図に示すとおりです。タブレット上では WebTID、写真撮影、音声録音、メモ入力、報告書作成などのアプリケーションが動いており、多岐にわたる情報アクセスと情報入力が可能。これを携帯電話キャリア網経由でネットワークに接続し、Office 365 や社内の TID システムに繋いでいます。タブレットで撮影された写真データは SharePoint Online に送られ、運輸司令所や本社にいる関係者と即座に共有可能です。また Office 365 では Windows Intune も稼働しており、タブレット デバイスの集中管理とマルウェア対策を行っています。音声録音やメモ、報告書のデータはタブレット内に保存されますが、将来は保存場所を Microsoft Azure に移すことも検討されています。

小田急電鉄におけるタブレットの活用イメージ。WebTID による運行情報の提供や、現場写真の共有、音声録音、メモや報告書作成などを、1 台のタブレットで行えるようになっています。バックエンド システムとしては Office 365 が利用されており、SharePoint Online による写真データの共有や、Windows Intune によるデバイス管理、マルウェア対策も行われています。[拡大図] 新しいウィンドウ

<導入効果>
タイムリーな情報を顧客に提供可能
問題発生時の情報共有も迅速化

小田急電鉄株式会社
小田原管区
総括主任兼信号扱者
藤田 修一 氏

「タブレットは試行段階の 2013 年 12 月から使っていますが、最初に触ったときにはとても感動しました」。このように語るのは、小田急電鉄株式会社 小田原管区で総括主任兼信号扱者を務める藤田 修一 氏です。当初の主な用途は WebTID でしたが、どこにいても視覚的に運行情報を確認できるのはすばらしいことだと言います。「以前は運輸司令所からの情報を携帯電話で聞きながら対応していましたが、タブレットならすぐに必要な情報にアクセスでき、お客様に的確な情報をお伝えできます。また直感的に操作できるので、慌ただしい状況で使用するのにも適しています」。

写真共有やメモ、報告などのアプリケーションも利便性が高いと、藤田 氏は指摘します。メンテナンスや問題が発生した場合、以前は現場で紙やボイス レコーダーに情報を記録しながら、デジタル カメラで必要な写真を撮影していました。これらの情報は運輸司令所などに伝達した後、まとめて整理しておく必要がありますが、紙やボイス レコーダーの情報をまとめるのは、非常に手間のかかる作業だったと振り返ります。しかし今はタブレットで収集した各種情報を簡単にまとめて保存できるため、後で内容を確認することも容易になりました。これは実に画期的なことだと言います。

「ここで重要なのが、すべての情報を時系列で管理しやすくなっていることです」と言うのは前原 氏です。問題発生時に収集する情報には、すべて日時も合わせて記録する必要がありますが、IT を活用すれば自動的にタイム スタンプが付加されます。また手入力が間に合わない時には音声メモも併用されていますが、1 つの音声メモが 1 ファイルになり、これらすべてにタイム スタンプが付加されることも、情報の整理や再利用を容易にしていると語ります。

現場写真を即座に共有できることで、問題対応の迅速化も可能になりました。

「現場の状況は言葉ではなかなかうまく伝えられないものですが、写真なら一目瞭然です」と言うのは市野 氏です。また現場で直接画像をアップロードできれば、運輸司令所や本社と連絡を取りながら、より的確な情報収集が可能になると指摘します。「どの程度の時間で運転再開できるのかを、現場担当者だけで判断するのは困難ですが、運輸司令所や本社の専門スタッフが参加すれば、的確かつ迅速に判断できます。その結果、今後の見通しをお客様に伝えやすくなるのです」。

これらのメリットは、従業員満足度の向上にもつながると前原 氏は言います。「音声を中心としたコミュニケーションでは情報をタイムリーに伝えるのが難しいため、駅係員のフラストレーションがたまりやすくなりますが、タブレットで情報伝達できればこの問題を解消できます。また運輸司令所などに問い合わせが集中することもなくなるため、運転再開に向けた作業に集中しやすくなるというメリットもあります」。

従業員満足度が向上すれば、顧客満足度はさらに高まります。顧客に直接対応する従業員の態度によって、会社全体の印象が大きく左右されるからです。小田急電鉄におけるタブレット導入は、実に幅広い効果をもたらす可能性を秘めているといえるでしょう。

なお 2014 年 2 月には、エンド ユーザー約 40 名を対象にした Windows 8 活用セミナーをマイクロソフトの協力を得て実施しています。このようなリテラシー向上に向けたきめ細かいサポートが可能になったことも、日常のマイクロソフトからの情報提供のお陰と評価されています。

<今後の展望>
2020 年の東京オリンピック開催に向けて
海外からの観光客への新たな価値提供も

「2020 年には東京オリンピックも開催されますが、これに向けて海外からのお客様も増えていくはずです」と後藤 氏。タブレットで情報を提供するしくみをさらに拡充すれば、外国語でのコミュニケーションも支援でき、日本の魅力をより多くの人々に伝えられるはずだと語ります。また市野 氏も、「タブレットには他にもさまざまな活用方法が考えられます」と指摘。たとえば運賃検索システムや、駅の券売機などの遠隔操作、係員の規則および規定集のオンライン提供などが考えられると説明します。

その一方で「チャットや動画を活用したリアルタイムなコミュニケーションにも期待しています」と言うのは藤田 氏です。このようなニーズに応えるため、Lync Online の試行も始まっています。

「今は一部の役職に限定して導入していますが、Lync Online は使い勝手が良く、活用の幅も広いので、多様な業務に活用できると考えています」と川村 氏。東日本大震災のような広域災害が発生した場合でも、Lync Online で Web 会議を行うことで、対応を迅速化できるはずだと言います。「数年後に全社展開することも視野に入れて取り組みを進めています」と語るのは前原 氏です。リーズナブルな TV 会議システムとして、グループ会社に紹介したケースも既にあると言います。

モバイル デバイスとして Microsoft Surface を導入することも検討されています。キーボードが簡単に脱着でき、現場ではタブレット、事務所では PC のように使える点が高く評価されています。またマイクロソフトがデバイスまでワン ストップでサポートできることも、大きなメリットになると前原 氏は指摘します。

「まだ使い始めたばかりですが、タブレットとクラウド サービスの組み合わせには、大きな可能性があると感じています」と後藤 氏。今後これらを活用することで、よりきめの細かい新たなサービスを生み出せるはずだと語ります。「効果があると評価されれば、新たなアプリケーションもどんどん導入していきます。マイクロソフトにはこれからも、総合的な支援を期待しています」。

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