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日本テレビ放送網株式会社

 様に導入

報道の枠を超え、人命救済に直結する情報活用へ。"リビングの中心" に位置するテレビが、"地域インフラの中核" として貢献する可能性を、クラウド活用によって追求

日本テレビ放送網株式会社では、東日本大震災という未曽有の災害を経験して以降、報道の枠を超えた情報発信の可能性を検討。南海トラフ地震による大規模な被害が想定される徳島県を舞台に、2013 年から「災害対策」や「高齢者の見守り」に活用する実証実験「JoinTown (ジョインタウン)」に、取り組んでいます。放送と通信のハイブリット活用によって、テレビの可能性を大きく拡張するこのシステムに最適なインフラとして選ばれたのが、マイクロソフトのクラウド サービス、Microsoft Azure でした。

<導入背景とねらい>
テレビと SNS を結び付けた JoinTV のインフラを活かして、地域単位のコミュニケーションに貢献

写真:粟飯原 正裕 氏

日本テレビ放送網株式会社
インターネット事業局 インターネット事業部
粟飯原 正裕 氏

写真:中村 遥風 氏

日本テレビ放送網株式会社
インターネット事業局 インターネット事業部
中村 遥風 氏

写真:岩田 雅也 氏

株式会社フォアキャスト・コミュニケーションズ
システムサービス
ディビジョン
岩田 雅也 氏

日本テレビ放送網株式会社 (以下、日本テレビ) では 2013 年夏から、テレビの可能性を大きく広げる実証実験に取り組んでいます。
それが、テレビを使った災害対策・高齢者支援プロジェクト「JoinTown」です。

日本テレビ インターネット事業局インターネット事業部 粟飯原 正裕 氏は、このプロジェクトのきっかけが 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災にあると振り返ります。
「未曽有の被害をもたらしたあの震災以降、減災を図るためにテレビが貢献できる情報発信の方法は、報道だけでした。その役割を一歩推し進めて、日本全国約 5,000 万世帯の 90% 以上も普及している情報端末として、テレビがもっと積極的に貢献できることはないだろうかと考えたのです。そしてたどり着いた答えの 1 つが『災害対策』と『高齢者支援』、『地域活性化』の 3 つを主目的とした JoinTown でした」。

JoinTown は、2012 年 3 月から日本テレビが提供している世界初のソーシャル視聴サービス「JoinTV」を社会インフラに応用し、自治体単位での双方向コミュニケーションを可能にするプロジェクトです。
65 歳以上の高齢化人口が全人口の 25% を占める日本を支えるスマートシティの実現を志向し、高齢者世帯の日常的な見守りサービスから、災害時避難の誘導および避難所における安否確認などを、テレビを窓口としてサポートする情報活用を試行しています。

JoinTown は 2013 年と 2014 年の 2 年連続で、総務省の「ICT 街づくり推進事業」に採択されており、徳島県美波町阿部地区 (四国放送との共同事業。) および、東京都豊島区において取り組みが進められてきました。

徳島県美波町阿部地区が、実証実験の地として選ばれた主な理由について粟飯原 氏は、次のように説明します。

「美波町阿部地区を選択した背景には、地理的、技術的要件があります。まず第 1 に、大きな被害が想定される南海トラフ地震の影響範囲にあること。第 2 に、高齢化率が 50% に達しており、10 年後の日本を想定しやすい地域であること。そして第 3 に、徳島県内の約 90% にケーブルテレビが普及しているおかげで阿部地区の全世帯で問題なくテレビへのインターネット接続が行えることが挙げられます」。

そして、この実証実験を支えるサービス提供基盤には、「クラウド サービスの活用が不可欠だった」と、日本テレビ グループのインターネット ベンチャー企業である株式会社フォアキャスト・コミュニケーションズのシステムサービスディビジョン 岩田 雅也 氏は説明します。

写真:日本テレビ放送網株式会社

日本テレビ放送網株式会社

「美波町阿部地区には、約 120 世帯しかありません。そのため、今回の実証実験におけるデータ量も、アクセス数もあまり大きくはありません。オンプレミスでも十分耐えられるでしょう。しかし、実証段階から現実的なサービス提供へとステップが進めば、自治体単位で加入者数が増えていくことになります。最終的には、国内に 1 億台は存在するであろうテレビのすべてからアクセスされることも想定しなければなりません。それだけのスケーラビリティと柔軟性を持った環境構築には、クラウド サービスの活用が最善です。さらに、災害時にサーバーが止まってしまっては意味がありません。その点でも、徳島および近県にサーバーを置くという選択肢はありませんでした」。

さらに、日常の見守りサービスから、災害時の情報共有までサポートする以上、24 時間 365 日の安定稼働が要求されるシステムとなることは自明です。
こうした厳しい条件を考慮した上で、日本テレビが JoinTown のサービス提供基盤として選択したのが、Microsoft Azure だったのです。

<システム概要と Azure 採用の理由>
24 時間 365 日止められないシステムの信頼性を
国内 2 リージョンのデータセンターで確保

JoinTown は、"放送と通信のハイブリット" によるサービスです。
たとえば、災害発生時には通常のテレビ放送に割り込む形で、「大津波警報」などのアラートともに、加入世帯の名前入りで「●●さん、今すぐ避難してください!」というテロップが配信されます(写真 1 参照)。
こうした個人名や詳細な住所は、Azure 上に置かれた Azure SQL Database などに厳重に管理され、各世帯に個別にインターネット経由で配信されており、放送の電波に乗ることはありません。

写真 1。テレビ視聴中に、自動的に表示が切り替わる

写真 1 : テレビ視聴中に、自動的に表示が切り替わる

また、サービス加入者には IC カードが配布されており、専用のスマートフォン アプリで読み取ることで、本人確認が可能となっています。つまり、避難時にこのカードを携帯することで、安否確認がスムーズに行えるようになるのです (写真 2 参照)。

このカードを通じて行えるのは、携帯者の本人確認だけではありません。契約時に同意した利用者からは、日頃の服薬履歴もデータベースに登録しているため、避難所における医療行為に役立てることができるのです。

こうした個人情報をクラウド上に置くことについては、まだ「議論を継続している」と言いますが、今回の実証実験においては、「加入者の合意を得て円滑に運用されている」と粟飯原 氏。

写真2。IC カードをスマートフォンの専用アプリにかざして本人確認を実施

写真2: IC カードをスマートフォンの専用アプリに
かざして本人確認を実施

岩田 氏は続けます。
「個人情報の取り扱いについては、議論が尽きない側面があります。しかし、その一方で確実に言えることは、『オンプレミス環境において自前で整備したセキュリティ環境よりも、最新のクラウド サービスを提供する事業者が改善を重ねるセキュリティ環境の方が信頼できる』という事実です。サイバーセキュリティの世界は、刻々と進化しています。個人情報をより安全に管理するためには、専門とする企業のサポートを得る以外にありません。その点においても、マイクロソフトが厳重に管理する Azure には安心感がありました」。

そして、数あるクラウド サービスの中でも、特に Azure が評価されたポイントが、日本データセンターの存在であると、岩田 氏は続けます。

「今回の基盤選定において、Azure をもっとも評価したことが、日本国内に、東西 2 か所のリージョンに分かれてデータセンターが運用されていることです。このおかげで、国内の自然災害においても、サーバー トラブルによるサービス停止のリスクを最大限抑えることができます」。

<導入効果>
津波到来まで、わずか 12 分。
テレビに名指しで表示される避難勧告と正確なデータ把握によって、訓練精度を向上

こうして Azure を基盤として構築された JoinTown は、2013 年 10 月と 2014 年 1 月 19 日に、美波町阿部地区で行われた大規模な避難訓練に活用されたほか、夜間の避難経路を確認する『ナイト ウォーキング』などの小規模な訓練への活用が重ねられ、着実に利用者からの評価を集めていると、インターネット事業局インターネット事業部 中村 遥風 氏は言います。

「実は徳島県による想定では、美波町は震災発生からわずか 12 分後には津波が押し寄せてくると言われており、災害時避難は一刻を争うのです。そうした状況にあって、1 回目の避難訓練では避難完了まで平均約 11 分を要していたのですが、2 回目の訓練では約 9 分で完了したのです。しかも、一番多くの人が避難してくるピーク時間は、4 分も早くなっていました。この成果は非常に大きいです」。

第 1 回避難訓練と第 2 回避難訓練の測定結果

1 回目と、2 回目の避難訓練において、これだけの差が生まれた背景には、「テレビに、お名前入りの避難勧告を表示するかどうかの違いなどがあった」と、中村 氏は続けます。

「2 回目の避難訓練時に初めて、テレビに●●さん、逃げてください! というテロップを表示したのです。このしくみによる効果は大きく、難所でインタビューさせていただいた住民の皆様に『テレビで呼ばれたから逃げてきた!』と言っていただいたときは、とてもうれしかったですね。また、JoinTown に集められるデータによって、避難に要した時間などが正確に記録されるようになったことで、明確な改善目標が生まれ、訓練の質を向上させることに貢献できたと伺っています」。

避難訓練管理画面イメージ

南海トラフ地震に対する危機意識の高さによって、従来から地域の避難路が整備され、訓練も重ねられてきた同地区では、JoinTown が配布する IC カード (徳島県における名称は「すだちくんカード」) も、しっかりと浸透し、「みなさん、カード持参の上で避難してきてくださいます」と中村 氏は笑顔をのぞかせます。

「避難訓練中、幼稚園の下駄箱にまとめてさげてあった園児たちのすだちくんカードを、先生が急いで取りに行かれた光景がとても印象的でした。東日本大震災直後の避難所では、家族の安否確認にご苦労された体験談も多数報道されています。そうした事実を踏まえて、お子さんの安全確認にカードが役立つと、受け止めていただけたのではないでしょうか。さらに言えば、持病の多い高齢者の方にとっては、お薬手帳などの医療情報の有無が、避難後の明暗を分けることにつながります。すだちくんカードからアクセスできる服薬履歴などの情報は、とても重要なのです」。

このほか、平時における JoinTown 活用のメイン サービスとして、高齢の単身世帯に対する「見守りサービス」があります。このサービスは、テレビのオン / オフの情報が、Azure 上に置かれたハートビート サーバーに送られ、ご家族が利用する JoinTown 専用のスマートフォン アプリに情報が発信されます。
そして、長くテレビが点けっぱなしにされたり、あるいは、まったく点けられない場合など、現地での見回りを促すアラートが発信されるようになっています。

さらに、スマートフォン アプリには、JoinTalk というチャット アプリも用意されており、ご家族の方がスマートフォンから発信した質問に対し、高齢の親御さんは、テレビのリモコンについてデータ放送用の 4 色のボタンを使った 4 択でし、手早くコミュニケーションできるようになっています。今後は、JoinTown の情報発信用の管理画面を自治体が運用し、地域活性化につながる情報発信などにも取り組んでいく予定であると言います。

こうして、着々と浸透していく JoinTown について、中村 氏は「昔憧れた SF の世界が実現したようで、感慨深い」と、話します。

「今、IoT (Internet of Things : モノのインターネット) が注目されていますが、すだちくんカードもネット上の個人情報を呼び出すための、"モノ" であることは間違いありません。美波町の高齢者の方々が、昔ながらの自然あふれる景色の中で、新しいテクノロジーなど何も意識する必要もなく、ごく自然に生活されているだけなのに、ネットワーク上の情報にスムーズにつながり、安否確認や生き抜くための情報共有ができるようになったのを実感して、とても不思議な気持ちでした。未来が少しずつ近づいていることを実感した気がします」。

<今後の展望>
日本国内はもとより、世界に向けて JoinTown の成果を発信

粟飯原 氏と岩田 氏は、JoinTown の展開範囲を着実に広げていきたいと、話します。

「私たちの想いを一言で表すと、"社会インフラの中心に、テレビを置きたい" ということになります。ただし、私たちはテレビ放送にこだわっているわけではありません。実際、JoinTown でも、スマートフォンとの連携が重要なポイントになっています。災害時の情報発信についても、テレビだけではなく、e メール送信など、マルチ デバイスに向けた情報提供を行うことが必要不可欠です。しかし、多様化する情報デバイスの中にあって、テレビは依然として "誰もが抵抗なく使えて、より多くの情報を享受できる存在" であると思います。その利点を最大限に活かし、コミュニケーション手段の要として機能させることがねらいです」(粟飯原 氏)。

「私たちがこの実証実験で目指したことは、『人の命を守ること』に、少しでも多く貢献することです。そのしくみを、日本中で活用してもらうことが、最終のゴールです。放送と通信のハイブリット活用については、実証実験を行ってみて初めてわかる課題なども見えてきました。こうした知見を活かし、少しでも早く、日本中への普及にステップを進めたいと願っています」(岩田 氏)。

最後に粟飯原 氏は、JoinTown の意義について、次のように強調します。

「テレビの裏側にある技術については、世界中が過渡期にあると思います。日本では、テレビへのインターネット結線率、つまりスマート テレビの利用率が 25 % 程度から伸び続けていることが話題になりますが、一方のアメリカではいわゆる『コードカッター』が増加しており、ケーブルテレビ加入者のうち約 1,000 万世帯が有料放送には加入せず、高速インターネットのみを利用しているという状況があります。放送と通信の境界が変化しつつある中にあって、今回の実証実験を経験し、知見を重ねたアドバンテージは、確実に存在していると思います。インフラとしても、Azure のようにグローバルなクラウド サービスを活用していますし、JoinTown を、世界に向けて発信することも、十分に可能だと思っています」。


人物集合写真

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