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国立大学法人名古屋工業大学

 様に導入

固定電話と IP 電話、インスタント メッセージを統合管理したユニファイド コミュニケーション基盤を Skype for Business にて構築。教職員と学生間のコミュニケーション ギャップを解消し、次世代コミュニケーション実現への基盤も獲得

写真:国立大学法人名古屋工業大学

国立大学法人名古屋工業大学

1905 年 (明治 38 年) に官立の名古屋高等工業学校として創設され、2015 年には創立 110 年を迎えた国立大学法人名古屋工業大学。「科学技術で未来社会を創るという高い志を育む教育」を理念に掲げ、これまで延べ 7 万人を超える優秀な人材を社会へ輩出してきた同大学ですが、近年 ICT の進化に伴い、学生のコミュニケーション形式には変化が訪れているといいます。

国立大学法人名古屋工業大学ではこの変化を受け、従来の枠組みを超えた新たな情報共有の環境としてユニファイド コミュニケーション基盤の構築を行い、教職員は 2016 年 1 月より、学生を含む全構成員へは 2016 年 4 月より、運用を開始します。全構成員に対する電話やメールに限らないユニファイド コミュニケーション基盤の提供は、国内の大学法人としては初の取り組みです。ユーザー数だけでも約 7,000 となる大規模な基盤には、信頼性や柔軟性、Windows をベースとした環境との親和性が評価され、Skype for Business (旧 Microsoft Lync) が採用されました。同大学ではこの基盤のさらなる活用として、今後、位置情報などのビッグ データを用いた新しい教育や研究の環境構築に取り組んでいく予定です。

<導入の背景とねらい>
多様化する学生のコミュニケーション方法と、変革期にある講義形式に対応したユニファイド コミュニケーション基盤導入を検討

約 6,000 人もの学生が常時在籍し、卒業生の多くがグローバルな製造業の担い手として活躍する国立大学法人名古屋工業大学 (以下、名古屋工業大学)。同大学は、実践的な工学エリートの養成実績はもちろん、先進的な ICT 活用の取り組みを推し進めている点についても全国的に知られる有名校です。

2007 年には、大学法人として当時初となる PKI-IC カード認証の基盤整備を実施。教職員と学生 1 人ひとりに接触、非接触同時搭載型の IC カードを配付することで、学内の組織情報を高度なセキュリティのもとで管理できる基盤を構築したことは、全国的に見ても先駆的な事例となっています。さらに、2012 年には仮想化プラットフォームを用いて情報基盤システムを刷新するとともに、教職員や学生向けの情報共有基盤も整備しました。これらのインフラ構築には、Windows Server などのマイクロソフト製品を全面的に採用。システムの要となる ID 管理には Active Directory を、仮想化基盤には Hyper-V を、情報共有基盤には Exchange Server や SharePoint Server を採用し、運用しています。

こうした学内システムは、名古屋工業大学の情報基盤センターが一手に担い、計画から構築、運用に至るまでを担当します。同大学が先進的な ICT 活用の取り組みを進めるねらいについて、国立大学法人名古屋工業大学 副学長 CIO 内匠 逸 氏は、次のように説明します。

写真:国立大学法人名古屋工業大学 副学長 CIO 内匠 逸 氏

国立大学法人名古屋工業大学
副学長
CIO
内匠 逸 氏



写真:国立大学法人名古屋工業大学 情報基盤センター長 全学情報システム統括責任者 (CIO) 補佐 松尾 啓志 氏

国立大学法人名古屋工業大学
情報基盤センター長
全学情報システム統括責任者 (CIO) 補佐
松尾 啓志 氏

「2010 年 1 月には学内の全施設で無線 LAN を利用できる環境を整備しました。さらに 2015 年 9 月には位置情報を獲得するために、BLE (Bluetooth Low Energy) 発信器を 学内に 1,600 箇所設置し、従来の IC カードに加えて、スマートフォンによる学生の出欠確認、さらには夜間の安全管理に利用しています。こうした先端の情報技術を採用することには当然リスクがあります。それでもアグレッシブに取り入れることの意義は、そのテクノロジそのものや、その先に見える新しい社会でのライフスタイルの研究を行う機会を、本学の研究者により多く提供できる点にあるでしょう。工科系単科大学として、当校では情報技術に関する最先端のテクノロジを学生に提供するべく、恐れず積極的に取り入れることを心がけています」(内匠 氏)。

志高く ICT の活用を進めてきた名古屋工業大学ですが、2013 年からは新たな取り組みとして、ユニファイド コミュニケーション (以下、UC) 基盤の検討が進められました。2012 年に情報基盤と通信インフラが整備されたことで ICT へのかかわり方は変化しました。しかし学内の教員によるコミュニケーションは、依然として電話やメールを主として行われており、それが学生との間にギャップを生み出していたのです。学生のコミュニケーションの変化について、国立大学法人名古屋工業大学 情報基盤センター長 全学情報システム統括責任者 (CIO) 補佐 松尾 啓志 氏は、次のように語ります。

「学生どうしのやりとりはいまや、メッセージング ツールなどが主となっています。また、国外への長期インターンシップなどで、コミュニケーションが国内にとどまらないケースや映像を使ったコミュニケーションも増えています。こうした学生によるコミュニケーションの変化や多様化に大学と教員が対応していくためには、従来の電話とメールだけの提供では不十分だったのです」(松尾 氏)。

内匠 氏はさらに、新たな学習コミュニティの形成へ向けても、UC 基盤の検討が必要だったと続けます。

「e ラーニングやその発展形である MOOCs (Massive Open Online Courses) の広がりなどもあり、大学教育の講義形式は変革期を迎え、従来の学科やクラスの枠組みを超えた学習コミュニティを形成することは、必須だといえます。学生と教職員向けに UC 環境を構築することは、先の課題を解決すると同時に、間もなく本格化するであろう反転授業など、講義形式の変革へも対応できると考えました」(内匠 氏)。

しかし、電話に代表される音声回線のインフラを一挙に刷新することは、固定電話を扱っている性質上、ユーザー サポート面や災害対応といった事業継続性の面で課題がありました。そこで名古屋工業大学では、最低限の既存固定電話は維持し、メインとして用いる IP 電話やインスタント メッセージのシステムを新たに構築する形で、検討を進めました。

<システム概要と導入の経緯、構築>
難易度の高い固定電話と IP 電話、インスタント メッセージの統合を、Skype for Business で実現

UC 環境について名古屋工業大学では、2007 年に整備した ID 管理基盤を前提に検討が進められました。複数の製品で検証が進められましたが、信頼性や柔軟性、Windows 環境との親和性から、Skype for Business (旧 Microsoft Lync) を採用する形で構築を進めることになったと、内匠 氏と松尾 氏は当時を振り返ります。

「当校では学生や教職員に関するさまざまな情報を、基盤 ID と呼ばれる統一 ID と、学内の統一データベースで一元管理しています。この基盤 ID により固定電話と IP 電話、ユニファイド コミュニケーション システムを統合することができれば、これまでにない新しいコミュニケーション基盤が構築できます。そこでまずは、複数ベンダーの IP 電話製品を検証することから検討を開始しました。しかし、当校のユーザー数は学生だけでも 6,000 人となり、教職員を加えると 7,000 人を超えます。当時検証を行っていたオープンソース システムで構築するには、インフラとしての信頼性に課題がありました。また、固定電話と IP 電話の統合だけでも、実現が難しかったのです」(内匠 氏)。

「基盤 ID にはマイクロソフトの技術を全面的に導入していましたので、ユニファイド コミュニケーション システムとしてテスト運用していた Microsoft Lync 2013 で統合が行えないかを、当時導入業者であった西日本電信電話へ相談しました。その結果、Lync の機能を利用すれば、固定電話と IP 電話、インスタント メッセージを基盤 ID に統合できる可能性があることがわかったのです。オンプレミスの Lync Server 2013 を用いれば、大規模システムでも信頼性を十分に担保できるとともに、BLE を用いたスマートフォンの位置情報を Lync に提供することも可能です。当校の UC 基盤構築は Lync があったからこそ実現することができたと今なら言えます」(松尾 氏)。

松尾 氏の発言の背景には、固定電話と IP 電話、そしてユニファイド コミュニケーション システムの統合が難易度の高い取り組みであったことがあります。名古屋工業大学のシステム構築をサポートする、西日本電信電話株式会社 名古屋支店 ビジネス営業本部 SE担当 瀬田 政広 氏は、機能統合の難しさについて次のように説明します。

写真:西日本電信電話株式会社 名古屋支店 ビジネス営業本部 SE担当 瀬田 政広 氏

西日本電信電話株式会社
名古屋支店
ビジネス営業本部
SE担当
瀬田 政広 氏

「構成検討時点において、固定電話も IP 電話もそれぞれの交換機が高度なしくみで構成されており、機能の統合を検討するうえで難しい部分がありました。そんな中、名古屋工業大学様からは、『既存の固定電話 60 台』『教職員向けに新規の IP 電話を 1,000 台』『教職員と学生向けに新規の Lync アカウントを 7,000』と、すべて合わせて 8,000 を超えるデバイス規模を統合管理したユニファイド コミュニケーション システムをご要望いただいており、非常にチャレンジングな取り組みだったのです。固定電話と IP 電話、Lync という 3 つのシステムを統合した大規模な実績は、構成検討時点において当社にほとんど例がありませんでしたが、Lync は個人にひもづく情報を柔軟に管理できます。また、既存の Windows ベースのシステムとも親和性が高いため、困難な機能の統合をうまく進めることができると考えました」(瀬田 氏)。

Lync のもつ信頼性と柔軟性、既存の Windows をベースとした情報基盤システムとの親和性が、名古屋工業大学が構想する UC 基盤を実現しえたことに加え、人数単位による「包括ライセンス (現在は教育機関向け総合契約「EES/OVS-ES」)」によりコストを抑えた導入が可能だったことも決め手となり、2014 年 に Lync の正式全学採用を決定しました。

2015 年には、Lync から名称変更された Skype for Business の試験稼働を開始。2016 年 4 月からは教職員と学生向けの UC 基盤として、固定電話が 60 台、IP 電話が 1,000 台、UC のアカウント数として教職員 1,000 件、学生 6,000 件という規模での本格運用が始まります。

<導入の効果>
教職員と学生の間のコミュニケーション ギャップを解消。コスト面でも大きな効果を生み出す

UC 基盤の運用では、すでに想定以上の効果をもたらしているといいます。松尾 氏は最大のメリットとして、ユーザー利便性の向上と新たなコミュニケーションの創出を挙げます。

「2012 年までの取り組みにより、基盤 ID での教職員と学生の統合管理はできていましたが、ここに UC 基盤が加わることで、固定電話や IP 電話、ユニファイド コミュニケーション上のインスタント メッセージも 1 つの基盤 ID で管理できるようになりました。たとえば、あるユーザーに連絡をいれる場合、内線電話だけでなく PC やタブレット デバイス、スマートフォンも同時に呼びだされますので、連絡を受けた人はそのときの状況に合わせて、対応する機種を選ぶことが可能です。同じユーザー ID でインスタント メッセージも利用できますので、テキストのメッセージから音声通話に切り替えたり、テレビ電話に切り替えたりといったことも可能となり、これまでのコミュニケーション手段を一気に変えることができたのです」(松尾 氏)。

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基盤 ID にて管理されるユーザー情報を用いて、学生と教員や学生間では、場所やデバイスにとらわれないコミュニケーションを行うことができる

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同一の ID を用いたインスタント メッセージやビデオ会議も行うことができ、学生のスタイルに合わせたコミュニケーションが実現された

大規模な UC 基盤への移行でしたが、教職員と学生の適応は早いといいます。学外からも Skype for Business へアクセス可能にしたことで、外出先であっても教職員が電話へ対応できます。また、自宅にいる学生とのコミュニケーションも場所を問わず行えるため、当 UC 基盤を利用する機会も増え、違和感なくユーザーへ受け入れられるのです。活用を促すさまざまな取り組みも効果を成し、学内のコミュニケーションは活性化していると、内匠 氏は胸を張ります。

「たとえば学生が研究室やクラブに所属すると、統一 DB にその情報が反映され、その結果自動的に Skype for Business 上で研究室やクラブのチャット ルームが作成されるようになっています。そうすると学生どうしですぐにコミュニケーションが始まりますし、教職員も違和感なくコミュニケーションの中へ入っていけます。学生間だけでなく、教職員と学生の間のコミュニケーションも加速できますので、そこにあったギャップも埋めることができるようになりました」(内匠 氏)。

さらに、コスト面でのメリットも大きかったといいます。名古屋工業大学では職員の人事異動が定期的に行われるとともに、教員の移動も多く、固定電話を使った内線の場合、異動に伴い配線も物理的に変更する必要があったのです。

「配線の物理的な交換には、コストや手間だけでなく、作業の期間 (異動する) 教職員の内線電話が使えないという問題もありました。UC 基盤の整備以降、教職員が異動する際でもシステムの管理画面から 1 クリックで番号を変えることが可能です。これまでのコストや工数が一切必要なくなり、教職員の業務継続性も維持できる点は、非常に大きなメリットです」(松尾 氏)。

<今後の展望>
ユーザー情報を収集しビッグ データとして解析することで、一歩先を行く教育や研究の環境整備を目指す

2016 年 4 月の本格運用時点で、既に大きな効果をもたらしている名古屋工業大学の UC 基盤ですが、今後は次世代コミュニケーション基盤として、さらに先進的な展開が構想されています。

「学内にいるユーザーの位置情報やモバイル デバイスの利用状況をリアルタイムに収集しビッグ データとして解析することで、さまざまな教育や研究環境のあり方を探っていくことを検討しています。位置情報を検出するための BLE 発信器や無線 LAN の整備は完了していますので、そこで収集したデータをどのようにコミュニケーションと学生支援へ結び付けていくかが検討事項です」(松尾 氏)。

「学内における個々人の行動履歴や学習状況などを把握することで、たとえば孤立した学生を見つけてサポートを行ったり、教育や研究に勤しむ学生をさらに飛躍させるための個別学習を行ったりすることが考えられます。将来的には在籍する学生だけでなく、卒業生に対する情報提供や海外のインターンシップ提携校との連携など、学内外での情報流通を行う施策も検討していきたいと考えています。その際には、情報基盤システムの一部をクラウドと連携していくことも視野に入ってくるかもしれません」(内匠 氏)。

図.システム構成図

Skype for Business にて構築した UC 基盤とビッグ データをもって、名古屋工業大学ではさらなる学習支援と、e ラーニング時代の学び場の構築を進めていく[拡大図] 新しいウィンドウ

Skype for Business の採用により、教職員と学生の多様なつながりを実現し、学生が自ら学ぶ環境を実現するための UC 基盤を構築することができた名古屋工業大学。同大学はクラウド環境での Microsoft Office および個人ストレージ (OneDrive) を提供可能な Microsoft Office 365 の利用も開始しています。今後もマイクロソフトの技術を始めとした積極的な ICT の採用を進めることで、一歩先を行く学生支援に取り組んでいきます。

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