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長野市民病院

 様に導入

大規模災害に備えた電子カルテ データの保全に、Azure の日本データセンターを活用。理想的なバックアップ環境を圧倒的な低コストで実現

55 万人が暮らす長野医療圏の中核をなす医療機関の 1 つである長野市民病院では、大規模な災害発生時にも確実に診療継続できる体制を整えるべく、電子カルテなどの院内システムに関しても冗長化を図ってきました。しかし、東日本大震災と、続く長野県北部地震を経験した同院では、遠隔地へのデータ バックアップの重要性を実感。以来、適正なコストで、安心、安全な運用が保証されるソリューションを 3 年にわたって探し続けた結果、理想的なソリューションとして選んだのが、Microsoft Azure と QNAP Turbo NAS でした。

<背景とねらい>
24 時間 365 日の救急医療を、災害時にも提供できる体制作りへ

写真:竹前 紀樹 氏

公益財団法人 長野市保健医療公社
長野市民病院
病院長
竹前 紀樹 氏



写真:宗像 康博 氏

公益財団法人 長野市保健医療公社
長野市民病院
副院長
診療情報管理室 室長
宗像 康博 氏

1995 年 6 月に 150 床、6 診療科、医師 17 名という体制で運営を開始した財団法人(現 公益財団法人) 長野市保健医療公社 長野市民病院 (以下、長野市民病院) は、現在では 400 床、30 診療科の規模に拡張し、長野医療圏北部の基幹病院として先進医療を提供しています。2008 年に開設した「長野市民病院・医師会 急病センター」を通じて 24 時間 365 日の初期救急診療を提供するほか、「地域がん診療連携拠点病院」、「地域医療支援病院」としての重責を担っています。

病院長 竹前 紀樹 氏は、次のように話します。「当院は、年間約 4,200 台の救急車を受け入れています。救急隊や地域の医師の方々からの電話連絡を医師が直接受け取り、速やかに対応していることも、当院の特色と言えるでしょう。」

長野市民病院は、1995 年にいち早くオーダーリング システムを導入するなど、ICT 活用に積極的な病院です。多忙な医療スタッフの負担を軽減するために、電子カルテなどの院内システムを積極的に活用。各分野のスタッフがそれぞれの専門性を活かして連携する “チーム医療” と、より質の高い医療および介護を提供するための情報共有に役立てていると、副院長 宗像 康博 氏は話します。
「院内の ICT システムは、医療スタッフの負担軽減のためのツールです。その好例として挙げられるのが、院内の情報共有環境の充実でしょう。医師や看護師、薬剤師、その他のコメディカルスタッフなど、さまざまな職種が連携して行うチーム医療には、情報共有のスピードと正確さが求められます。そのために、電子カルテ システムなどの効率的な運用が重要になるのです。」

現在では、診療情報管理室スタッフが ETL (Extract Transform Load) ツールと BI (Business Intelligence) ツールを駆使して、院内システムからデータを抽出し、日々の患者数や病床利用率などを自動的に可視化しています。それらのデータは院内グループウェアのポータルに掲示されています。

非常に効果的に院内システムを運用している長野市民病院ですが、1 つ大きな課題が残っていたと宗像 氏は言います。それが、災害時診療継続を支えるデータ バックアップの実現でした。

「当院では、大規模な災害発生時を想定して、患者が押し寄せた場合の受入訓練を毎年行っています。こうした災害時に対応できるよう、院内のシステムはネットワークも含めて二重化を図っており、院内にデータ バックアップを取っています。しかし、それだけでは安心できないということを、電子カルテ運用開始直後に思い知らされることになりました。」

長野市民病院が電子カルテの運用を開始したのは、2011 年 2 月末。その 11 日後に、東日本大震災に遭遇し、さらにその翌日に長野県北部地震 (最大震度 6 強) を経験したのです。

「この災害をきっかけとして、院内からデータ保全を求める声が高まりました。災害によっては、地域一帯が停電することも考えられますし、集中豪雨などによって院内に浸水する可能性も考慮しなければなりません。対策としては、長野から遠く離れた場所にデータ バックアップをとることが一番です。しかし、実現に必要なコストが高額すぎて、なかなか先に進めることができなかったのです。」(宗像 氏)

写真:長野市民病院

長野市民病院

医療機関に限らず、「100 年に 1 度、起きるかどうか」という大災害の対策に費やせる金額はおのずと限られます。長野市民病院ではクラウド サービスの利用までを視野に入れて、さまざまなソリューションの比較検討を重ねていきました。そして、ようやく理想的な解決策を見いだしたのが 2014 年春のことでした。

その解決策こそが、マイクロソフトのパブリック クラウド サービスである Microsoft Azure と、Microsoft Azure をバックアップ先として連携する QNAP Turbo NAS だったのです。

<システムの概要と導入の経緯>
信頼性、可用性、コストなど複数の項目に沿って、クラウド サービスの有効性を厳正に審査

写真:中澤 公一 氏

公益財団法人 長野市保健医療公社
長野市民病院
事務部 主幹
診療情報管理室
副室長
中澤 公一 氏

QNAP Turbo NAS は、信頼性と拡張性を備えた小型のストレージです。HDD 2 台で RAID 構成を組んでおり、万一基盤が破損した場合でも、新しい筐体を用意して、HDD を差し替えるだけで復旧できます。
長野市民病院では、この QNAP をデータの入り口として、1 日 1 回、圧縮、暗号化した電子カルテ データのフル バックアップを Azure の上に保存しています。

導入に際して必要となったコストは、当初想定の「100 分の 1」と言っても言い過ぎではないと、診療情報管理室 副室長 中澤 公一 氏は話します。
「バックアップのサーバーをハウジングした場合の試算と比べてあまりに価格差が大きいため、本当に驚きました。これがもしもマイクロソフトのソリューションでなかったならば、"安かろう悪かろう" を疑ったまま検討が終わっていたかもしれません (笑)。それほどの低価格でした。」

クラウド サービスの活用に際し、長野市民病院が重要視したのは、価格だけではありません。厚生労働省が提示している「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への対応はもちろんのこと、サービス提供業者の信頼性など、いくつもの項目を掲げて、慎重に検討を重ねたと、宗像 氏は続けます。

「価格だけを追い求めても、長期の保証を得られないのでは意味がありません。電子カルテ データという、大切な情報を取り扱うパートナーとして信頼できる企業であるかどうか。その点について慎重に検討しましたが、最終的に、マイクロソフトならば、安心できるという結論に至りました。そして重要なことは、Azure の国内データセンターの存在です。いくら強固にセキュリティを固めていても、国外のサーバーに電子カルテ データを預けることには、非常に抵抗を感じていましたから。」

重大な個人情報を含む電子カルテ データをクラウド上に保存することについて、竹前 氏は次のように語ります。
「当院から患者個人のデータが漏えいするようなことは許されません。その点は、慎重に対策しています。しかし一方で、セキュリティに絶対という言葉はありません。非常勤医師や研修医などを含めて 1,000 人近くが働く病院内にデータを保管するより、クラウドにデータを置く方が安全と言えるかもしれません。Azure 活用の提案を聞いたときも、素直に『いい話だ』と感じましたよ。」

<導入の効果>
クラウドの特性を活かしたスモール スタートでコストを抑制。さらに西日本リージョンの活用で安心感を増大

写真:高野 与志哉 氏

公益財団法人 長野市保健医療公社
長野市民病院
診療情報管理室
システム管理チーム リーダー
高野 与志哉 氏

こうして 2014 年 9 月に Azure および QNAP の採用が決定すると、既存のバックアップ環境に一切の変更を加える必要もなく、短時間で導入が完了。10 月から、運用が開始されています。診療情報管理室 システム管理チーム リーダー 高野 与志哉 氏は、この手軽さを評価しています。

「クラウド サービス導入の最大の利点は、スモール スタートが切れることだと思います。先ほどの話の通り、費用は破格に安く済みました。Azure の管理画面もわかりやすく、設定は簡単に終わりました。Azure のストレージは、今後の拡張に応じて柔軟に増減できます。将来的に PACS の画像データなどをバックアップするようになっても、容量の心配がありません。これは、クラウドならではのメリットです。」

高野 氏はさらに、Azure の評価すべき点として、「安全性と信頼性の高さ」を挙げます。
「第 1 に挙げられることは、西日本のデータセンターを利用できる安心感です。長野市は比較的地盤の固い地域ですが、フォッサマグナの上に位置しています。当院としては、このフォッサマグナから遠く離れたデータセンターの利用を希望していたのです。第 2 に挙げられるのが、データが 3 重化され、分散して保管されていることです。この 2 つによって、高いレベルで安全と安心が保たれることが素晴らしいと思います。」

そしてもう 1 点、小型の QNAP を採用したことにも意味があると、高野 氏は言います。
「QNAP にはラック マウント型もありましたが、今回はあえて小型の製品を採用しました。このサイズならば、いざという時に診療情報管理室の女性スタッフが手に持って避難することもできます。」

<今後の展望>
院内システムのスリム化や効率化に Azure の多様な機能活用も検討

災害時診療継続に向けて、万全のデータ バックアップ体制を整えた長野市民病院では、すでに次の展開を見据えたアイデアが胎動しています。

「今回の Azure 活用を通じて、"Websites" や "SQL Database" など多彩な機能が充実していることを知りました。これだけ機能が揃っているのであれば、院内のさまざまなシステムを、手軽かつ安価にクラウドに移行できると思います。"Virtual Machines" を使って院内システムを仮想化して、ICT 資産をスリム化することも考えられます。最近は、このように Azure の活用を拡げる方法を考えるのが楽しいですね。」(高野 氏)

最後に、竹前 氏は次のように締めくくります。
「ICT 活用については、診療情報管理室のメンバーがしっかりと吟味してくれますので、私としても安心しています。将来の活用については、今後の検討課題だとしても、まずは、55 万人が暮らす長野医療圏の中核病院の 1 つとして、カルテ データの保全を図れたことに満足しています。当院は約 24 万人分のカルテ データを管理しています。震災であろうと水害であろうと、それだけのデータを一瞬でなくすことは絶対に許されません。マイクロソフトには、今後も期待しています。」

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