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導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • 最適化

経済産業省

 様に導入

震災復興のために各府省、県、市町村と横断的な情報連携を実施。数百の支援制度を横串検索できる「復旧・復興支援制度データベース」を Windows Azure 上に構築

復旧・復興支援制度データベースイメージ

復旧・復興支援制度データベースイメージ

東日本大震災後、「府省」、「県」、「市町村」のそれぞれが、復旧、復興のために数多くの支援制度を整備しています。しかし、被災者や被災企業が、自分達が対象となっている支援制度があることを知らなければ、利用は進みません。そこで、経済産業省では、被災者や被災企業が必要とする制度を容易に見つけられるよう支援制度のデータベース化を構想。復興庁や各府省と連携し、約 500 件ある支援制度を横断的に検索できる「復旧・復興支援制度データベース」を、パブリック クラウド サービス上に構築しました。

<導入の背景とねらい>
各府省、県、市町村が整備、運用する支援制度の情報を、
縦横に検索できるデータベースの実現へ

2011 年 3 月 11 日に起きた東日本大震災からの復旧・復興を支援するために、現在までにさまざまな支援制度が整備されています。その数は、岩手、宮城、福島、茨城の被災 4 県、そして各府省が整備したものだけでも、現在約 500 件にも上ります。しかし、これらの支援制度は、各府省、県、市町村から個別に提供、告知されているため、被災者や被災事業者、地方公共団体職員などが、それぞれの被害状況に対して最適な情報を知ることが難しいという課題がありました。
この課題を解消するために、経済産業省では、復興庁や各府省、被災自治体と連携し、岩手、宮城、福島、茨城の被災 4 県、そして各府省が整備した約 500 件の支援制度すべてを横串にして検索できる「復旧・復興支援制度データベース」を 2012 年 1 月 17 日から提供しています (公開当初は、茨城県の支援制度情報は未登録)。

経済産業省
CIO 補佐官
平本 健二 氏

復旧・復興支援制度データベースに登録された支援制度は「個人向け」と「事業者向け」に大別されています。利用者はフリーワード検索のほか、市町村名や「給付」、「貸付」といった支援の種類、さらには「住まいを移転したい」など利用者のニーズに沿った項目を選択するだけで、必要な支援制度情報を簡単に見つけることができます。また、RSS 機能も備わっているため、新しい支援制度が登録された際などに、更新通知を受け取ることもできるようになっています。
このデータベースにはさらに、前出の 4 県のほか、希望する県があればデータベースへの追加登録が行える体制と、システムのキャパシティも確保されています。

この復旧・復興支援制度データベースを活用することで、被災地の住民や企業はもちろんのこと、自治体の窓口担当者や、弁護士、行政書士などの専門家が被災者から相談を受ける際にも、素早く、正確に回答できます。経済産業省の CIO 補佐官 平本 健二 氏は、この「復旧・復興支援制度データベース」を構築するに至った背景について次のように説明します。

「各府省、地方自治体は被災者にどんな支援が必要かを懸命に考え、さまざまな制度を整備しています。しかし、その情報が被災者に伝わらなければ利用は進みません。今回、数多くある支援制度を被災者の方々にいかに効率よく告知するかを検討するため、新潟県中越沖地震の時の報告書を参考にしました。中越沖地震の時には総計で 300 近い支援制度が、順次、さまざまな機関から整備されました。これだけ多くの支援制度があると、制度情報を必要な方に的確にお知らせするのは大変です。今回の震災では、さらに多くの支援制度が整備されると思い、対策が必要と考えました。
東日本大震災後も、支援制度情報をまとめた冊子が配布されていますが、紙媒体故にタイムリーな情報の追加は難しく、『詳細は各市町村にお問い合わせください』と記述せざるを得ない場合が多くあります。また、市町村の窓口では、県や各府省が発行している支援制度の最新情報をなかなか把握できません (図 1 参照)。こうした課題を解消し、的確に必要な支援の手を届けるために、さまざまな支援情報をシームレスに提供できるデータベースの構築が必要であると考えました。」

そこで経済産業省が中継役となり、東日本大震災復興対策本部をはじめとする各府省と連携し、「復旧・復興支援制度データベース」の構築に着手。被災者に一刻も早く適切な情報提供を行うために、早急なシステム構築が求められることから、パブリック クラウド サービスの利用を意識していたと言います。そして入札の結果選ばれたのが、同様のサービスを立ち上げた経験とノウハウを持った株式会社三菱総合研究所の提案でした (開発担当 : 株式会社マイスター)。

<システム概要>
民間企業や NPO による活用を促進するため、API を公開

「復旧・復興支援制度データベース」は、政府機関として正確な情報を提供することが第一となっています。そして、そのデータを民間で自由に活用してもらうことができれば理想的です。そこで、標準的な仕様である XML ベースのファイル フォーマットを策定。民間企業や NPO などの組織が自由に活用できるようにデータベースの API を公開しています (図 2 参照)。これは、経済産業省が以前から行政情報を国民に「より伝わりやすく」公開する方法を模索していた成果の 1 つだと、平本 氏は説明します。

株式会社マイスター
常務取締役 事業本部長
野澤 宇一郎 氏

「2010 年 5 月 11 日に公表された『新たな情報通信技術戦略』の中でも、国民本位の電子行政を実現するための重要な政策として『オープンガバメント等の確立』が掲げられています。それ以降、特に行政情報の告知にもマーケティングの視点が必要だというポリシーを持って、経済産業省でも取り組んできました。この『復旧・復興支援制度データベース』は、それが形になった事例でもあります。」

この「復旧・復興支援データベース」が公開されたのは 2012 年 1 月ですが、震災直後から民間企業や NPO と連携した討議を開始していました。それが、NPO団体アスコエが中心となり、複数の企業のボランティアによって構築され、2011 年 7 月に公開された「復旧復興支援ナビ (β版)」です。
こうした民間の取り組みと、国としての取り組みとが両輪を成して動いていくことが重要だと、平本 氏は話します。

「私たちが構築したのは、『国のデータベース』であり、何よりも重要なことが情報の正確さでした。一方で、アスコエさんの『復旧復興支援ナビ』では利用者の利便性を高めるため、アクセスランキングなどいくつかの工夫が施されています。しかし、アスコエさんが独力で各府省からデータを収集し続けるには大変な労力を要します。だからこそ、私たちが標準的な仕様のデータで正確な情報を公開し、さらに API を提供することで民間企業やアスコエさんのような NPO が『より分かりやすい情報の出し方』に力を注げるよう、役立ててもらうことが重要なのです。」

こうして、被災者支援のため同じ思いから生まれた「復旧・復興支援データベース」も、「復旧復興支援ナビ」も、共に Windows Azure の上に構築されています。
開発を担当した株式会社マイスター 常務取締役 事業本部長 野澤 宇一郎 氏は、その採用理由として「開発の迅速化」を第一に挙げています。
「Windows Azure は PaaS (Platform as a Service) であるため、サーバー OS のインストールやセットアップ、環境構築作業なしに、契約してすぐにサーバー リソースを活用できます。また、リレーショナル データベースとして、SQL データベースが用意されていることも魅力です。Microsoft Visual Studio や Microsoft SQL Server など、日頃から活用しているツールやデータベースのスキルを、ほぼそのまま活かすことができるため、開発が非常にスムーズに進められます。今回のシステム構築はいずれも緊急を要するものでしたから最善の選択であったと思います。」

図 2 : API 活用イメージ

図 2 : API 活用イメージ [拡大する]

この言葉通り、システムの開発はスピーディーに進行。開発用のテストサーバーも Windows Azure 上に構築することで、開発 → 確認 → 公開のサイクルが非常にスムーズに進行したと、平本 氏も声を揃えます。
「今回は多くの府省と連携した大きなプロジェクトでしたので、府省との調整、確認作業が非常に多くありました。しかし、クラウド活用のおかげで、外部公開されたテスト環境の用意も簡単であり、実際に Web 画面を操作しながら、各所への説明、確認を行うことができました。これがプロジェクトのスムーズな進行に役立ったことは間違いありません。」

各府省間の調整が終わり、「復旧・復興支援データベース」の構築が正式にスタートしたのが、2011 年 10 月末のこと。上述のメリットを活かし、第 1 フェーズのサイト公開が完了したのはプロジェクト開始のわずか 2 か月後のことでした。
データの登録に関しては、Excel ファイルから、XML および CSV 形式に変換できるツールを用意することで、入力作業を簡略化。各府省が整備、運用する制度に関しては、「生活再建ハンドブック Vol.3、Vol.4」(内閣広報室発行) や「被災者に対する各種支援制度 (東日本大震災編)」(内閣府 防災担当発行)、「平成 23 年度版 中小企業施策利用ガイドブック」(中小企業庁発行) など 8 種の冊子を情報源として事務局でデータを登録しています。また、岩手、宮城、福島の 3 県については事務局に提供された情報を先行して登録し、その後、市町村から提供された情報や Web サイトから収集した情報を入力し、確認のプロセスを経たうえで公開するに至っています。

<導入の効果>
開発から確認、修正のプロセスを最適化し、完成度の高いサービスを短期構築

Windows Azure 採用のメリットを活かし、短期間で開発を終えた「復旧・復興支援制度データベース」は、サービス提供直後に実施したアンケート調査でも、回答者の約 9 割が「便利である」と答えるなど、高い評価を得ています。

しかし、「復旧・復興支援制度データベース」は、今後もまだ継続的に改良する予定であると平本 氏は言います。
「今回の開発に際しては、少しでも早く公開するために基本的な検索機能に絞った 1 次リリースと、2 月の 2 次リリースに分けてサービスを公開しました。結果、1 次リリースの内容だけでも『予想以上に便利だった』などの声をいただくことができましたが、一方で『わかりやすい表現、言葉でないと理解できない』、『申請・届出方法や申請期限などを分かりやすく』といった、配慮、改善すべき事項も多々挙げられており、取り組むべき課題は多くあります。2 次リリースの段階で API や RSS の機能を追加し、サービスの向上を図ることができましたが、今後も継続的に改善する必要があると考えています。」

野澤 氏も、「継続的な修正や、機能拡張なども容易である」と話します。
「開発のためのテストサーバーも Windows Azure 上にありますので、大量のデータを追加した場合でも FTP 経由でアップする手間と時間がかかりません。バックヤードのデータも、すべて SQL データベースに入っていますので、データの公開や公開終了を自動化する仕組みなどの機能拡張にも、柔軟に対応できます。」

各府省や自治体から正確な情報を即時的に収集し、継続的に公開していくためには、各府省や自治体の担当者の通常業務を阻害しないよう、できる限り容易にデータを入力、確認できる仕組みを確立することが重要となりますが、この問題についても、引き続き検討を加えていると、平本 氏は説明します。

「復旧・復興支援制度データベース立ち上げに際しては、Excel のシートから、CSV データをそのままアップできる仕組みを作ってもらいましたが、そのデータを修正する場合などは、管理画面から直接書き換えられる方が効率的です。また、各自治体によって、情報を取り扱うガバナンスが少しずつ違っていますので、複数の入力方法を用意して、柔軟に対応していくことが必要になります。こうしたさまざまな要件を考慮し、それぞれのガバナンスに対応した情報の確認プロセスの検討に着手しているところです。こうした機能やインターフェイスの作り込みも、開発中の画面を共有しながら確認できるので非常に便利です。」

<今後の展望>
クラウド サービスのメリットを活かし、「共通プラットフォーム」構想への対応も

1 次リリースでリッチな検索機能でサービスをスタート、2 次リリースで API 提供などさらに付加価値を向上させてきた「復旧・復興支援制度データベース」ですが、今年中に 3 次リリースを行いたいと平本 氏は、意気込みを語ります。

「支援制度の冊子も各省庁や自治体で出していますが、現在はこの紙媒体の進行とデータベースへの登録がバラバラで動いています。3 次リリースでは、既にデータベースに情報が集約されているので、逆に Web から PDF 出力などで冊子を打ち出せるような対応もしていきたいと思います。そうすることで、紙媒体のリリースも迅速に行えるようになりますし、担当者の方の作業も軽減できるはずです。」

最後に平本 氏は、クラウド活用を念頭に置いていた理由として、次のように説明します。
「このようなサービスを行う場合にアクセスがどのくらいあるのかが予測できません。その点、クラウド サービスはキャパシティを必要に応じて変更できるという点で、非常に安心してサービスを導入することができました。現在、霞が関全体で活用する『共通プラットフォーム』も検討されていますが、今回のクラウド サービスがオープンなプラットフォームであることから、共通プラットフォームが実際に動き出した時には、容易に移行できることも魅力でした。今回のサービスが、各府省、県、市町村の個別の情報を組織横断的に集め、インターネットを活用して行政情報として公開するという電子政府のモデルケースとして、今後一層大きな意味を持つことになれば幸いです。」

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