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導入事例

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丸紅株式会社

 様に導入

全世界のメール システムを Microsoft Office 365 でクラウド化
サーバー更改時の負担を解消、情報企画部の戦略性をさらに高める

丸紅株式会社

丸紅株式会社

電力、エネルギーや紙・パルプ、食料に強みを持ち、日本を代表する商社としてグローバル ビジネスを展開する丸紅株式会社。ここではメール システムのクラウド化が進められています。以前は世界 67 か国/120 拠点をカバーするため複数のメール システムが構築および運用されていましたが、これを Office 365 (Microsoft Exchange Online) に統合しつつあるのです。これによってシステムのトータル コストを大幅に削減すると共に、サーバー更改時の負担も解消。情報企画部の人的資源を、より戦略的な領域に割り当てられるようにしています。既にアジア、中国、中東、アフリカ、欧州、米国に展開しており、2012 年 9 月には日本への展開も完了予定。約 7,500 名のユーザーを対象にした、全世界共通のメール基盤が確立されつつあります。

<導入の背景とねらい>
世界各地で個別にシステムを構築
サーバー更改時の負担が大きな問題に

丸紅株式会社
情報企画部 部長代理
隅倉 啓介 氏

ビジネス遂行に不可欠なコミュニケーション基盤として、ほぼ全ての企業で定着している電子メール。現在でも数多くの企業がメール サーバーを保有しており、分散した拠点をサポートするために複数のサーバーを運用しているケースも少なくありません。しかし最近ではメール サーバーの運用負担が、大きな問題であると認識する経営者も増えてきました。既にメールはコモディティ化したソリューションであり、競争優位を生み出す要素ではなくなっています。メール サーバーの運用に多大なリソースを費やすことは、もはや合理的な経営判断とはいえない時代が到来しているのです。

この課題に対応するため、メール システムを Office 365 (Exchange Online) へと移行し、クラウド化を推進しつつあるのが丸紅株式会社 (以下、丸紅) です。

同社は日本を代表する総合商社の 1 つ。電力、エネルギーや紙・パルプ、食料に強みを持つ一方、リスク マネージメント強化にも積極的に取り組んでいます。現在のような不透明な時代が続く中でも、着実に業績を上げており、2012 年 3 月期の連結純利益は、過去最高の 1,721 億円を達成しています。もちろんビジネス内容はグローバルなものであり、67 か国に 120 拠点を展開しています。丸紅株式会社 情報企画部 部長代理の隅倉 啓介 氏は「これらの拠点にメール サービスを提供するため、以前は 3 つのエリアで個別のメール サーバーを動かしていました」と説明します。

まず日本では、1990 年代は自社開発のメール システムを使用していましたが、2001 年に Microsoft Exchange Server へと移行。2008 年に Microsoft Exchange Server 2007 にバージョンアップしています。欧米では 2005 年ごろに Exchange Server を ASP 型で利用できるサービスを採用。サービス業者が用意した専用サーバーを使い続けてきました。そしてアジア太平洋地域では 2005 年に Exchange Server を導入。複数の拠点にサーバーを設置し、これらを専用線で接続するシステムを構築していたのです。

「このような環境で大きな問題になったのが、サーバーの老朽化に伴うシステムの更改に多大な労力がかかるということでした」と隅倉 氏。サーバーの台数は 20 台以上で、導入時期も地域ごとに異なります。また ASP として使用していた欧米のメール サーバーも、クラウドではないため老朽化の影響を逃れることはできませんでした。「メールのようにビジネスの基盤となるシステムを更改するには、検討に 1 年、構築と移行に 1 年、フォローに 1 年かかると考えるべきです。そのためこのままの状況では、毎年どこかの地域のメール システムの更改に追われ続けることになると予想されたのです」。

丸紅ではこの問題を解決するため、2009 年から、まず、更改時期を迎えていた海外の次世代メール システムの検討に着手。従来通りのオンプレミス型システム、欧米で採用していた ASP 型システム、新しいクラウド型システムの比較検討を進めていきました。その結果選択されたのがクラウドへの移行です。2010 年 9 月には Office 365 の採用を決定。Office 365 が正式リリースされた 2011 年 8 月から、順次展開が始まっています。

<導入の経緯>
負担軽減を目指しクラウド サービスへと移行
世界 124 拠点に順次 Office 365 を展開

丸紅株式会社
情報企画部
IT推進課
田辺 幸輔 氏

丸紅情報システムズ株式会社
ビジネスサービス事業本部
運用統轄部
運用二課
山下 貴志 氏

丸紅が次期メール システムにクラウド型を選択した最大の理由は、サーバー更改に伴うコストが削減できる点にあります。サーバーの運用を完全にサービス プロバイダーに任せることができるため、ハードウェアの老朽化も意識する必要はありません。これによって 情報企画部の負担は大幅に軽減すると期待されたのです。

もちろんクラウド型でメール システムを提供するサービスは Office 365 だけではありません。丸紅でも Google をはじめとする複数のサービスが検討の俎上に上げられました。それではなぜ最終的に Office 365 が採用されたのでしょうか。その理由を「丸紅では既に人事システムと Active Directory を連動させるアカウント管理システムが構築されており、メール クライアントも Microsoft Outlook を利用しています。他のサービスではこれらが使えなくなり、使い勝手も大きく変わってしまいます」と説明するのは、丸紅株式会社 情報企画部 IT推進課の田辺 幸輔 氏です。「しかし Office 365 ならオンプレミスの Exchange Server と同じ環境を実現できます。これは大きな魅力でした」。

Office 365 への移行が始まったのは 2011 年 8 月。まず、タイ バンコクと中国 上海で、パイロット導入が実施されました。ここで使い勝手を検証したうえで、本番展開へとつなげていったのです。パイロットでの検証は 8 月半ばまで続けられ、8 月末からアジア地域への本番導入が始まりました。9 月末までにアジア約 30 拠点へと展開。さらに 11 月半ばまでには中国を含む約 50 拠点への展開を完了しています。

2011 年 11 月には中東・アフリカ地域への展開もスタート。1 か月間で約 20 拠点への展開を終えています。2011 年 12 月には欧米でのパイロットに着手。このエリアでは 2012 年 1 月から 3 月にかけて、約 60 拠点への展開が完了しています。日本への展開は 2012 年 7 月からスタートし、9 月いっぱいで完了する予定です。

現在のシステム構成は図に示すとおりです。アジア地域、欧州地域、米州地域の Office 365 ドメインを並行運用しており、日本国内では丸紅のデータ センター内に設置されているオンプレミス型の Exchange Server も稼動しています。インターネット経由で社外から届いたメールは、国内データ センター内のメール配信サーバーによって、各地域のメール サーバーに振り分けられます。

Active Directory はアジア太平洋地域、欧州、北米の 3 エリアで個別に運用されており、国内データ センター内に設置された Active Directory フェデレーション サービス (ADFS) によって、Office 365 と連携します。さらにアカウント情報は丸紅独自の統合アカウント管理システムで管理されており、人事システムから抽出した情報をこのシステム経由で、各 Active Directory に設定するようになっています。

「移行後の運用は予想以上に簡単でした」と振り返るのは、丸紅のメール運用を担当する、丸紅情報システムズ株式会社 ビジネスサービス事業本部 運用統轄部 運用二課の山下 貴志 氏です。クラウド サービスなので機能に制約があるだろうと当初は考えていたと言いますが、実際には Windows PowerShell を使うことで、細かいところまでカスタマイズできたと説明します。

その一方で、スムーズな世界展開の実現には、マイクロソフトのサポートも大きな貢献を果たしていると指摘します。丸紅では2011 年 7 月から Microsoft Premier サポート を活用しています。「初めての導入ではさまざまな疑問が出てくるものですが、マイクロソフトは短時間で正しい答えを返してくれます」と山下 氏。ほとんどの質問はその日のうちに回答が得られたと言います。「問題が発生した場合でも、日本のサポート チームと米国の開発チームが直接話し合い、短時間で切り分けを進めてくれました。スピーディな展開を行ううえで、欠かせないサービスだと感じています」。

メール システム管理模式図

メール システム管理模式図[拡大図]新しいウィンドウ

<導入効果>
トータル コストは以前に比べて半減
より戦略的な領域への人員配置も可能に

Office 365 への移行で最も期待されているのは、情報企画部の負担が大幅に軽減されることです。「複数のメール システムが、連続してシステム更改を迎えるため、これまでは丸紅だけで 4 名、丸紅情報システムズを含めると 5 ~ 6 名が、常に何らかの形でメール システムの更改に関わっていました」と隅倉 氏。システム構築時にはさらに 5 ~ 6 人がプロジェクトに張り付いていていたと言います。「しかしクラウド化によってこの必要はなくなります。リスク マネージメントやグローバル化支援など、競争力に直結する領域により多くのヒューマン リソースを割けるようになるはずです」。

運用の作業負担も軽減しています。以前はサーバー ハードウェアの稼働監視やデータ バックアップを社内で行っていましたが、今では日本を除き、その必要はなくなっています。「全世界 20 台以上のメール サーバーのデータ バックアップを毎日チェックするのは、とても手間のかかる作業でした」と言うのは山下 氏です。バックアップ テープの入れ替え作業は現地に任せる必要があり、万一失敗した時の対応も大変だったと振り返ります。しかしもうこのような作業も不要です。

トータル コストの削減も可能になりました。ハードウェア コストが不要になったうえ、運用負担も軽減しているからです。「正確な検証はまだですが、おそらく ID あたりのトータル コストは半減するはずです」と隅倉 氏は説明します。

メリットを享受しているのは 情報企画部だけではありません。ユーザーにも「メールボックス容量の増大」という利益がもたらされています。以前のメールボックス容量は 200 ~ 300 MB であり、ユーザーは頻繁にメール データをクライアント側にダウンロードし、サーバーから削除する必要がありました。しかし現在はユーザーあたり 5 GB の容量を確保。最大で 25 GB まで拡張可能になっています。

安定性やパフォーマンスも十分に確保されています。当初はインターネット経由でのアクセスは、回線に負荷がかかりレスポンスも悪化すると危惧されましたが、実際には想定よりも負荷は高くなく、レスポンスも問題のないレベルだと評価されています。IT サービスの世界展開では、中国で利用できるか否かが大きな問題になることが少なくありませんが、Office 365 は中国でも問題なく使うことができます。使い勝手もオンプレミス型の Exchange Server と変わりません。ユーザー教育や移行後のフォローも、大きな負担にはなっていないと言います。

<今後の展望>
全世界約 7,500 名の共通メール基盤を確立
グループ経営強化に向けた取り組みも推進

2012 年 9 月には日本への展開も行われ、Office 365 への移行は完了します。この時点で Office 365 のユーザー数は、国内だけで約 4,000 名、海外を含めると 7,500 名に達します。これによって丸紅は、全世界共通のメール基盤を確立することになります。世界のどこに行っても、使い慣れた同一のメール システムを使えるようになるのです。

その一方でメール システムのクラウド化は、情報企画部をメール サーバー管理の負担から解放します。これによって新たなステップを踏み出すことが可能になると隅倉 氏は説明します。

「これまで丸紅の情報企画部は、主に丸紅単体の IT 戦略を担う存在でした。しかしこれからはグループ全体を見ていく存在になります。これはグループ経営強化を掲げている丸紅の経営戦略を支えるうえでも、欠かせない取り組みになるはずです」 (隅倉 氏) 。

メール システムのクラウド化の効果は単に、初期投資や運用コストを削減するだけに止まりません。経営戦略をより強固に支えるパワーを、情報企画部にもたらす可能性も秘めているのです。

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