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導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • コミュニケーション
  • 効率化

筑波大学附属駒場中・高等学校

 様に導入

日本の将来を担う人材育成の一助に IT 環境を整備。Surface と Office 365 の採用により、デバイスとクラウド サービスのシナジーが生むコラボレーション環境を活用

2003 年度からスーパーサイエンスハイスクール (SSH) の指定を受け続け、近年では国際交流にも力を入れている筑波大学附属駒場中・高等学校。海外と国内の研究発表におけるプレゼンテーションへの力の入れ方の違いを実感してきた同校では、学術情報の検索方法からプレゼン資料の作成まで、生徒たちのプレゼンテーション能力全般を高めるために、2013 年度 SSH セミナーの 1 つとして「メディア虎の穴」を開催。参加する生徒たちのコラボレーションを助け、最高レベルのデジタル プレゼンテーションを可能にするために、最善の IT 環境整備を意図した同校が選択したのが、マイクロソフトの Surface と Office 365 Education でした。

<導入の背景とねらい>
生徒の能力を高めるために、情報収集力とメディア活用能力、
そしてプレゼンテーション能力の研鑚を

写真: 市川 道和 氏

筑波大学附属
駒場中・高等学校
市川 道和 氏

写真: 植村 徹 氏

筑波大学附属
駒場中・高等学校
植村 徹 氏

筑波大学附属駒場中・高等学校は、1947 年の設立以来、60 年以上一貫して真の学力を身につけるための質の高い教育活動を展開しています。学校行事や生徒会・自治会活動、クラブ活動、さらには校外学習も生徒たち自身が自主的、主体的に運営する「全人教育」により、協調性やリーダーシップ、自主性、自立性、積極性、独創性に富んだ人材の養成を行っています。

また同校は、2003 年度から連続して「スーパーサイエンスハイスクール (以下、SSH)」の指定を受け、将来の国際的な科学技術関係人材を育成するための先進的な理数教育に取り組んでいます。12 年目となる 2013 年度には、「すべての生徒の探究心や研究意欲を高める大学研究室体験の実施」や、「意欲の高い生徒のためのグローバル サイエンティストを目指す、課題研究等のプログラム研究と実施」、そして「科学者、技術者としての研究活動に必要な情報収集能力、メディア活用能力の育成」など 6 つの柱を掲げ、大学との連携や日常のカリキュラムにおける研究の充実などが強く意識された独自カリキュラムが構成されています。

この 6 つの柱の中でも、特に同校 技芸科が力を入れている項目は「科学者、技術者としての研究活動に必要な情報収集能力、メディア活用能力の育成」であると市川 道和 氏は話します。
「SSH の中でもかなり進んだ研究に取り組む生徒たちに必要な情報収集能力を養うには、高校の必修科目である『情報の科学』で網羅している範囲、そして生徒たちが日常 IT ツールを活用する中で身に着けられる程度のスキルでは不十分です。個々人の研究成果を向上させるには、研究分野に関する学力だけではなく、情報収集力とメディア活用能力、そしてプレゼンテーション能力を高めることが重要です。そのためには、IT を幅広く、より深く、有効に使っていくことが求められます。」

この想いを形にするために、同校 技芸科では、2013 年度の新企画として約 1 年にわたるシリーズセミナー「メディア虎の穴」を開催。最善のセミナー環境を用意するために、主に 2 つのマイクロソフト製品 / サービスが採用されています。それが、次の 2 点でした。

  1. Surface Pro = 携帯性に優れたタブレット サイズで、比較的安価に Microsoft Office とキーボードが揃ったフル機能を活用できる端末。
  2. Microsoft Office 365 Education = メールやポータル サイト、インスタント メッセージ (IM) や Web 会議などを可能にするサービスがラインアップされた、マイクロソフトのクラウド サービス。

研究・学習において、
最も大切な "母屋" を支える IT 活用

「メディア虎の穴」は、生徒たちが研究成果を存分に発表し、将来のチャンスを手にしていく力を養うために、国内最高レベルのトレーナーを招き、学術情報の探し方からプレゼンテーションの計画、スライド資料の作成、口頭でのプレゼンテーション技術などを実習するものです。市川 氏は、このセミナーのねらいについて、次のように話します。
「SSH ではこの数年国際交流の側面が強まっています。きちんとした情報の構成方法と他人を納得させる説明方法を併せ持たなければ、世界の舞台には通用しません。2010 年イマジンカップ (ポーランド) に本校チームが日本代表として出場した時も、プレゼンスキルの育てられ方の違いを痛感させられました。相手に自分の研究成果や主張を伝えるためのプレゼンテーション能力は、人生の至る場所で必要とされます。将来の日本を担う若い世代がこの技術を習得するのに、早過ぎることはないのです。」
このセミナーではデジタル・プレゼンテーションのスキルを中心に学びますが、同校 技芸科の植村 徹 氏は「デジタルでもアナログでも "ツールありき" で考えるのではなく、生徒の研究活動を中心に考えている。」と強調します。
「『メディア虎の穴』は、全 8 回のスケジュールが組まれていますが、その中には学内外の図書館に所蔵された膨大な蔵書を活用することを主眼とした『学術情報の探し方』という実習も含まれています。デジタルもアナログも関係なく、必要に応じて、きちんと情報を探し出し、活用できる力を養うことができれば、それは生涯にわたって役立つでしょう。筑波大学の『教育の高度情報化事業』によって、当校の図書館は筑波大学の研究用データベースなどとも結ばれましたが、こういった元からある研究資源へのアクセスを多角的に行ってもらえるようになればいいと思っています。」と説明します。

教育現場への IT 導入は 1989 年 (平成元年) に告示された学習指導要領で唱えられはじめましたが、その頃から IT とのかかわりを持ち続けてきた市川 氏は、この「生徒の研究活動を中心にツール活用を考える」ことについて、"母屋" と "離れ" という喩えを用いて次のように語ります。

「ツールがデジタルであろうと、アナログであろうと、それは教育・研究活動の本質ではありません。同じように IT ツールの機能の過不足ばかり議論しても、所詮は屋敷の "離れ" について語っているに過ぎません。肝心な "母屋"、つまり生徒の学力向上についての議論を疎かにしてはいけません。"母屋" の具体的イメージは、たとえばビジネス パーソンであれば利益をあげることが求められ、医療関係者は人命を救うことが求められ、研究者には有用な研究成果が求められます。教師や学校にとっての "母屋" が、単純な "IT 導入" であるはずはないし、学校の "IT 活用実績" などというものでもないはずです。」

では、その "母屋" とは何か。市川 氏は、生徒の "知的好奇心や探求心に支えられる学力の向上" であると続けます。
「当校の生徒たちも、ごく普通の子供たちであることに変わりはありません。私たちの接し方次第で、好奇心や探求心は大きく後退してしまいます。しかし、私たちが工夫をして興味や関心を刺激してあげると『そんなに勉強したかったのか!』と驚くほどの意欲が顔を出してきます。長年取り組んできた SSH も彼らの好奇心を大いに刺激しているらしく、積極的に各種のセミナーや講演会に参加します。こうして私たち教師の "母屋" がはっきりとした輪郭を持ち始めると、ノート PC やインターネットなどの IT が、彼らの知的活動を支える、とても有用なツールとして存在感を強くするのを実感します。」

生徒たちの "学習機会" を広げるコラボレーション
のしくみをクラウドで

市川 氏は、中でも特にコラボレーション ツールとしての、IT の有用性を意識していると話します。
「SSH の取り組みの中には海外との研究交流などもあります。たとえば最近台湾に出かけて行ったチームがあります。各自の研究成果を、向こうでプレゼンするのです。とても良い経験になるため希望者が多いのですが、全員が参加できるわけではありません。しかし、『現地に行けなかった』=『参加しない』という構図にはしたくありません。現地に行けなかった生徒も、バックアップを行う研究チームの一員です。だからこそ、IT を活かして、物理的な距離を越えたコラボレーション作業を可能にしてあげたい。環境さえ整えば、国内に残るチームが現地でプレゼンを行う生徒をバックアップできることになります。生徒たちには、それだけ大きな可能性と柔軟性があるのです。」

生徒たちのコラボレーション作業を支えるためには、ドキュメントの共同編集や確実な情報共有、そして、メールやインスタント メッセージ (IM) などのコミュニケーション手段の充実が欠かせません。さらに、ワイヤレス ネットワークで活用できる携帯性に優れた端末が揃えば、プレゼンテーション資料の作成や修正に困りません。
しかし、従来は生徒たちが個別に作業したデータを USB メモリーを介して共有するといった「アナログ的」作業を強いられたため、「本番前日に現地入りした時に、最終バージョンのファイルを保存し忘れていたり、資料ファイルの 1 つが欠けていたりといったトラブルもありました。」(市川 氏) と言います。

ところが、「気が付いたら、世の中にはすでに、そのような課題を一挙に解決してしまう、私たちの想像を超える環境が揃っていた。後は、自分たちが手を伸ばすかどうかだけだった。」と、市川 氏と植村 氏は声を揃えます。

<システム概要と導入の効果>
生徒たちの成長機会を最大化する
コラボレーション環境を構築

筑波大学附属駒場中・高等学校 技芸科 SSH の 2013 年度シリーズセミナーである「メディア虎の穴」では、その「揃っていた環境」を積極的に活用するべく、参加生徒 12 名に Windows 8.1 搭載の Surface Pro を貸与。PowerPoint や Excel、Word に Outlook といったツールの整った最新の Microsoft Office を全員が活用できるようにしています。

さらに、Office 365 の SharePoint Online を使って、セミナー用のポータル サイトを構築。生徒たちへの連絡事項のほか、ゲストである講師陣からのコメントや、講義に使われた資料の共有、掲示板による生徒たちと講師陣との意見交換、さらには講義の様子を収めた動画の公開などに活用しています。
加えて、生徒たちが Surface Pro で作成したドキュメントは、直接 SharePoint Online に保存できるようになっているため、「自宅からでも SharePoint Online にアクセスして、資料の編集、参照ができるので便利。」と、植村 氏は言います。
「私自身、Microsoft Office は昔から使ってきましたので、2010 以降ファイルを保存する画面で『コンピューター』の項目の上に、『OneDrive (旧 SkyDrive)』などのクラウド サービスが表示されるようになったことも認識しています。なぜこのような仕様になったのかピンと来ていなかったのですが、今回『メディア虎の穴』の環境を整えてみて、マイクロソフトがこのような仕様にした意味がようやく理解できました。資料を作成して、いつも通りの感覚でファイルを保存するとクラウド上にアップされて、チーム全員で共有することもできるのです。これは素晴らしい変化です。」

また、市川 氏は、Surface が、キーボードを備えた "フル装備" の情報端末であることを、高く評価しています。
「私たちが、生徒に使わせたいのは玩具のような端末ではなく、研究、学習にしっかり使える機能フル装備の端末なのです。たとえば研究発表の直前に土壇場で資料を修正したり、追加作成することもあります。そうした時に、機能が制限されたタブレットを持っていても意味がありません。もっとも、そうしたタブレットであっても、アプリケーションさえ揃っていれば作業はできるでしょう。しかし、管理は煩雑になります。私たちとしては、安心して生徒に使わせることができて、なおかつ、そこで覚えた操作が一生役に立っていくような、標準的な環境を整えてあげたい。その意味で Surface は優れていると思います。」

さらに、Exchange Online を使って生徒たちとの連絡用メールも運用。一斉連絡などに役立てていると言います。
「メールは、主に私たちから生徒たちへの一斉連絡に利用しています。講義の日程変更が発生した場合でも Outlook の予定表機能を使って、全員の予定表に同期できるので、連絡漏れもなく安心して運用できます。」(植村 氏)

<今後の展望>
最新の IT 活用に、生徒のポートフォリオ作成から
教務事務効率化まで幅広く期待

このほか、Lync Online の活用も今後進めていく予定であると、植村 氏は言います。
「Lync には大いに期待しています。Web 会議機能を使えば、先ほどの話にあったように台湾に出かけて行ったチームのプレゼンテーションを、待機しているチーム全員でリアルタイムに鑑賞できるでしょう。映像も音声も資料も共有できる Lync Online は、距離を隔てたコラボレーションに大いに役立つものと期待しています。」

そして、市川 氏は「今後、特に生徒たちに活用を進めたいツール」として、Microsoft Office に含まれている "デジタル ノートブック" OneNote を挙げています。
「私が今、一番気にかけているのが、生徒たち自身の足跡を刻んだ学習の記録である "ポートフォリオ" の作成と活用なのです。私たち教師は、生徒の学校生活に対して "点" でしか接していません。ですから、試験成績などに評価が偏ってしまう。しかし、生徒自身がポートフォリオを作成すれば、私たちには見えない生徒の成長が "線" として見えてきます。実はアメリカの 2 割の大学が、入学試験の際に学生にポートフォリオの提出を求めているという話もあります。ポートフォリオ作成を紙ベースで行えば、保存も管理も大変になりますが、デジタル ポートフォリオではその心配を小さくすることができます。デジタル ポートフォリオは、当然クラウド上に保存することになります。実際 OneNote に触れてみて、『これほど適したツールがあったのか』と思い知らされました。」

OneNote は、ノートブックに情報をスクラップするような感覚で、キーボード入力したテキストや手書き入力の文字、Excel のグラフや Web ページなどを取り込んで記録できるアプリケーションです。データはクラウド上に保存でき、スマートフォン用に無償配布されている OneNote アプリからもアクセスできる自由度があります。

「OneNote は、ノートに付箋を貼るような感覚で使えます。情報をきれいに整理するのは手間がかかりますから、後でやればいいのです。それよりも、まず学んで分かったこと、思ったこと、体験したことを手放してしまわないように、ポンポンと OneNote 上に集めていけばいい。後で暇ができたら見返して整理すればいいのです。SSH における生徒たちの評価にも、ポートフォリオが活かせるのではないかと考えています。」(市川 氏)

また、「メディア虎の穴」のための環境整備に併せて、筑波大学附属駒場中・高等学校の教職員用に、一部 Windows RT を搭載した Surface RT も試験的に導入されています。
教務事務への本格活用は行われていませんが、Wi-Fi が整備され、クラウドが整い、Surface のように携帯性に優れたデバイスが整っていけば、「教務事務の効率化も期待できる。」と、市川 氏は話します。
「これまでも、教務事務の IT 化は進められてきました。効率化が図られた面もありますが、感じ方には個人差もあるでしょう。どこかで時間短縮がなされても、その分その瞬間に別の業務が加わることもあるのです。しかし、モバイルデバイスとクラウドの活用が進めば、もう一段階利便性が上がることがイメージできます。たとえば出席簿のデータ管理も、教室で点呼したその場でリアルタイムに処理できれば効率的です。それだけのテクノロジーとサービスが、市場にはもう揃っています。私たちの意識の在り方が変われば、学校はまだまだ変えられると思います。」

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