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独立行政法人国立病院機構 神戸医療センター

 様に導入

Windows To Go を利用して、既存の PC を災害時の電子カルテ端末に変える画期的なソリューションで、「BCP」「地域医療連携」「リモート SDV」を同時に実現

写真: 独立行政法人国立病院機構 神戸医療センター

独立行政法人国立病院機構
神戸医療センター

独立行政法人国立病院機構 神戸医療センターは、1995 年の阪神淡路大震災の経験から、電子カルテの災害時復旧を中心とした BCP 対策の必要性を強く意識してきました。加えて、病診連携をスムーズにする Web 型電子カルテ データの共有、およびリモート SDV を可能にするネットワーク環境の構築の検討も続けていました。しかし、コストの問題で棚上げになっていたこの取り組みが、2013 年になって急転。2014 年 4 月から、すべての要件を満たすソリューションが稼働しています。それは、Windows To Go と DirectAccess、Remote Desktop Services (RDS) というテクノロジーを巧みに活用した画期的なソリューションでした。

<導入の背景とねらい>
BCP 対策と医療連携ネットワークを効率よく両立させる方法を模索して、
院内の ICT 運用体制を強化

写真: 嶋本 哲也 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
事務部長
嶋本 哲也 氏

写真: 森田 瑞穂 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
副院長
森田 瑞穂 氏

写真: 島田 悦司 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
院長
島田 悦司 氏

写真: 長谷 良平 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
事務部 IT 担当
長谷 良平 氏

写真: 川崎 真 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
管理課長
川崎 真 氏

写真: 小林 明子 氏

独立行政法人
国立病院機構
神戸医療センター
医療情報管理室
室長
小林 明子 氏

独立行政法人国立病院機構では、東日本大震災発生以前から BCP (Business Continuity Plan) を強く意識し、全国 143 の医療施設に対して被災対策のマニュアル作成などを行うように通達。各地の医療施設において電子カルテ データのバックアップ対策などが進められてきました。その中にあって、いち早く BCP 対策に着手していたのが、1995 年の阪神淡路大震災を経験している神戸医療センターでした。

神戸医療センターでは過去の被災経験から、「病院内でバックアップ データを保管するだけでは不十分」であるという認識を持っていました。しかし、コストの負担が大きいことから、院外へバックアップ データを置く計画はなかなか実現しなかったと神戸医療センターの院長である島田 悦司 氏は振り返ります。

「当院では、電子カルテのバックアップ データを院内に保管してきました。しかし、建物の倒壊や火災、水害にあってしまえば元も子もありません。バックアップ データは遠隔地におくのが望ましいのですが、外部のデータセンターを利用するとコストがかさみます。そこで、遠距離にあるほかの医療施設と話し合い、相互にデータを保管し合う相談を進めたこともあるのですが、最終的な調整がつかずに断念しました。」

神戸医療センターが求めていたソリューションは BCP 対策に限りません。平常時には、「地域医療連携」や「リモート SDV (Source Data Verification)」などに利用して、コストの効率性やシステムの信頼性を高める必要もありました。

「須磨区、垂水区、西区を中心とする地域で、当院が力を入れている活動には、『地域医療支援』、『がん診療連携』、『開放型病床』、そして『在宅療養支援』があります。その中で、患者紹介などのかかわりのある施設数が約 700。がんの登録医になると、約 200 名。この中で地域医療連携のネットワークを作るための、取り組みを続けています。」(島田 氏)

しかし、受け皿となるシステムを構築することは容易ではありません。神戸医療センター 副院長 森田 瑞穂 氏は、次のように説明します。

「当院では 2005 年に地域医療連携室を設立して以来、『顔の見える地域連携』を唱えて活動してきました。しかし、人的なネットワークは構築できても、データ共有のネットワーク構築は容易ではありません。私も参加していた神戸市の医師会でも、何年かごとに ICT に詳しい方が主導してネットワークが構築されるのですが、いずれも短命に終わってきました。」

こうした状況を一気に解決するためには、院内の ICT 運営体制を強化する必要があったと、島田 氏は言います。

「テクノロジーに関しては、パートナー企業の皆さんが十分なナレッジを持っていますが、医療については専門外です。一方、病院側の ICT 担当は『多少詳しい程度』の医師が兼任することが多く、十分な時間を取ることもできません。BCP 対策のような課題を解消するためには、医療と ICT の間にあるギャップを埋められる専門組織の確立が必要だったのです。」

「ICT に関する組織体制の強化」は、独立行政法人国立病院機構が 2014 年 3 月に発行した中期経営計画においても強調されている課題です。神戸医療センターでもこの目標達成に向けて 2011 年頃から ICT の専任者を採用し、院内 ICT 運営の円滑化を図ってきました。そして 2014 年に、この取り組みが大きな成果を生むことになります。

それが、Windows 8 Enterprise と Windows Server の標準機能である Windows To Go と DirectAccess、Remote Desktop Services (RDS) を活用し、既存のクライアント PC を、災害時の電子カルテ端末、あるいは地域医療連携やリモート SDV に利用できる端末へと変えてしまう、画期的なソリューションでした。

<導入の経緯とシステム概要>
電子カルテ データをほぼリアルタイムに同期。
セキュアなリモート アクセスで、安全に共有、活用

神戸医療センターが実現した BCP ソリューションは、亀田医療情報株式会社が提供し、株式会社ケイ・オプティコムが導入から院内の運用まで一貫してサポートしてきた Web 型電子カルテ「アピウスエクリュ」と同じシステムを、遠隔地にあるデータセンターにも構築するものです。バックアップの電子カルテ システムは Windows Server Hyper-V を活用して仮想化されたサーバー リソース上に置かれ、VPN 回線を通じてほぼリアルタイムで差分同期されるようになっています (データ量の多い PACS 〈Picture Archiving and Communication System〉 データは、夜間に日次バックアップが実行されます)。

このバックアップ データは、災害時復旧に使用されるのはもちろんのこと、平常時には地域医療連携やリモート SDV に活用されます。そして、このソリューションのもっとも画期的なポイントが、Windows To Go テクノロジーの存在です。

Windows To Go に対応した USB ドライブをノート PC に接続すると、Windows To Go ワークスペースが起動します(写真 1 参照)。
このワークスペースは、通常の Windows 8 デスクトップと同様に動作しますが、ハードディスクなど PC 内蔵のストレージへのアクセスが禁止されるなど、さまざまな制約が課せられたセキュアな端末として機能します。そのため、地域の診療所などに専用端末を配布するためのコスト負担もなく、セキュアな環境が実現できるのです。

写真 1: Windows To Go 起動後の画面

写真 1: Windows To Go 起動後の画面

写真 2 : Remoto Desktop Services 環境で電子カルテを起動したノート PC と Microsoft Surface

写真 2 : Remoto Desktop Services 環境で電子カルテを起動したノート PC と Microsoft Surface

神戸医療センターの BCP ソリューションが実現できたのは、「このテクノロジーとの出会いがあったからこそ」と振り返るのは、神戸医療センター 事務部 IT 担当 長谷 良平 氏です。
「このテクノロジーがあれば、既存の PC 環境が、簡単にシンクライアント同様のセキュアな端末に変化します。しかも、Windows 8 Enterprise の標準機能ですから、ライセンス費用の追加もありません。さらに、USB ドライブは小型ですから、非常時に備えて携帯することも可能です。これがあれば長年の課題が解決すると思い、すぐに院内の委員会に報告しました。」

そして、長谷 氏の提案は、委員会の主要メンバーである事務部長 嶋本 哲也 氏や医療情報管理室 室長 小林 明子 氏にもすぐに受け入れられたと言います。

「PC の OS 環境だけを持ち歩くという発想に驚きました。他の病院の事例で、連携先の診療所に配布した専用端末が棚の上でホコリをかぶっているという話も耳にしていましたが、このしくみならば同じ轍は踏まないでしょう。委員会でも全会一致で、採用が決まりました。」(嶋本 氏)

「最重要課題であるセキュリティ要件を満たしていたことも大きなポイントです。この USB ドライブは複製することができません。さらに、Windows 8 を起動する際、リモート アクセスのアプリケーションを起動する際、電子カルテにアクセスする際に、それぞれ個別の ID とパスワードの入力が求められます。さらに Windows Server の DirectAccess という機能を使うことで、院外からでも安全なリモート アクセスが実現します。おかげで、セキュリティに関する不安はありませんでした。」(小林 氏)

しかも、アピウスエクリュの機能を利用して、患者の ID と連携先のユーザーの ID を紐づけて管理しています。そのため連携先の医師やリモート SDV 担当者は、自分が担当する患者のカルテにしかアクセスできないようなしくみになっています。

こうして、2014 年 1 月に開発がスタート。わずか 3 か月後の 2014 年 4 月には運用を開始しています。このシステムの構築を担当したアルファテック・ソリューションズ株式会社 ソリューション事業部 ヘルスケアユニット サービスグループ 第2チーム 小林 華子 氏は、次のように言います。

「テクノロジー自体は、本当にシンプルです。構築は問題なくスムーズに進みましたが、セキュリティの観点から利用者が操作できる範囲をどれだけ制限するか、どうすれば利用者が簡単に操作できるようになるかを長谷さんと摺り合わせし、それを実現するのに苦労しました。今回の構築においては、既存のテクノロジーを組み合わせて、医療業界のニーズに適応させるアイデアの素晴らしさに、私自身勉強させていただきました。」

神戸医療センターでは、この BCP ソリューションを万全にするため、Windows To Go の USB ドライブのほかに、Microsoft Surface を VPN 接続することによって専用端末化。院内の主要な人物数名に常時携帯させることで、万一の事態に備えています。

写真: 佐野 祐宏 氏

亀田医療情報株式会社
営業グループ
エリアマネージャー
佐野 祐宏 氏

写真: 新井 直史 氏

株式会社ケイ・オプティコム
法人・公共事業推進本部
ソリューショングループ
医療ITソリューションチーム
新井 直史 氏

写真:河本 健 氏

株式会社ケイ・オプティコム
法人・公共事業推進本部
法人営業グループ
法人営業第 1 チーム
河本 健 氏

写真: 小林 華子 氏

アルファテック・ソリューションズ株式会社
ソリューション事業部
ヘルスケアユニット
サービスグループ 第 2 チーム
小林 華子 氏

神戸医療センターが実現した BCP ソリューションの 5 つの特長

  1. 電子カルテのデータを、遠隔地にほぼリアルタイムでバックアップ
  2. バックアップしたデータは、平常時には地域医療連携やリモート SDV に活用
  3. USB ドライブから既存の PC 上にセキュアな専用環境を起動させることが可能
  4. 標準的なテクノロジーを活用した、多層的なセキュリティの実現
  5. 災害時には遠隔地にあるバックアップ環境が、書き込み可能な本番環境へと切り替え可能

<導入効果>
連携先の医療施設を「神戸医療センターの外来診察室」に変える
スムーズな病診連携の実現

今回のソリューションがもたらした価値は、「非常に大きい」と森田 氏は言います。

「今までは、当院に患者を紹介した診療所から診察結果の問い合わせがあるたびに、当院でカルテを確認し、FAX で返信していました。その間、早くても 15 分から 30 分。遅いときには翌日までかかることもありました。しかしこれからは、連携先の医師が、直接当院の電子カルテを閲覧できます。PACS の画像も高精細なオリジナル データを確認できますので、不便はありません。当院の外来窓口が遠隔地にできたとイメージしていただければ分かりやすいと思います。」

神戸医療センター 管理課長 川崎 真 氏は、「電子カルテの在り方まで変えるような可能性を感じている」と話します。
「通常、電子カルテは専用のネットワークにつながれて、専用の端末から閲覧するクローズなシステムとして構築されています。しかし、Windows To Go があれば専用端末は不要です。しかも、iOS や Android ではなく、Windows がベースになっていますので、院内の既存 ICT 資産とも親和性が高く、比較的導入が容易です。まだ電子カルテを導入していない診療所などにも参考にしてもらえるモデルを提示できたのではないかと感じています。」

<今後の展望>
柔軟な応用が可能な利点を活かし、
大規模災害に備えた、全国的な相互バックアップ体制へ

最後に、島田 氏は次にように締めくくります。

「長谷さんの "気づき" を、パートナー企業の力添えによって形にした今回のしくみは、全国でも初めての試みです。導入のコストも低く、ICT にうとい私たちでも簡単に操作できます。将来的には国立病院機構の施設全体にこのしくみを適用し、相互にバックアップと復旧ができるようになれば、想定を超える災害の発生時にも迅速に医療体制を整えることができるでしょう。さらに言えば、病院機構全体の ICT 運用体制が強化され、すべて自前で構築、運用できるようになれば理想的だと思います。そうした意識を持って、当院でもさらにこの取り組みを深めていきたいと思います。」

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