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畿央大学

 様に導入

"納得できるまで深く考えさせる ICT 教育"の実践に向けて、1 人 1 台の Surface を貸与。Office 365 との連携活用で、学内の情報環境を充実

"人生の基本" となる「徳をのばす」、「知をみがく」、「美をつくる」の 3 つの理念を建学の精神として掲げる畿央大学では、2014 年度をさらなる進化の年と位置づけ、キャンパスの拡充や大学院教育学研究科の開設など、さまざまな取り組みが行われています。その一環として、教育現場における ICT の活用を拡充。新入生に 1 人 1 台の Microsoft Surface Pro 2 を貸与し、生涯活用する ICT の知識やスキルの習得を徹底させることを目的とした、ユニークなアプローチによる教育を実践しています。

<導入の背景とねらい>
社会貢献の手段として ICT を活用できる人材育成に向けた COPE の実践

写真:冬木 正彦 氏

畿央大学
理事長 副学長
理学博士
冬木 正彦 氏

写真:大山 章博 氏

畿央大学
教育学習基盤部
部長
大山 章博 氏

畿央大学は、"人は人を幸せにするために存在している" という信念の下、「医療」と「教育」のスペシャリストを多数輩出してきました。それぞれの専門分野における国家試験の合格率は高く、2014 年度は理学療法士、看護師、助産師、管理栄養士の 4 国家試験ともに 100% を達成し、就職率も国内トップクラス (関西 1 位) を誇っています。

2013 年に開学 10 周年という節目を迎えた同学では、2014 年 4 月から始まる 1 年を新たな進化の年と位置づけ、さまざまな取り組みを推進。その一環として、1 回生全員に 1 台ずつモバイル端末の貸与を行っています。貸与されたモバイル端末は、キャンパス内はもとより、自宅などに携帯し、自在に活用できるようになっています。

畿央大学 理事長 副学長 理学博士 冬木 正彦 氏は、この取り組みのねらいを次のように説明します。
「ICT は、学生たちが将来どのような職業に就いたとしても生涯活用する重要な技術です。しかし、コンピューター教室などの限られた場所で操作方法だけを教えても、ICT 活用の『基本』となる理解と経験は得られません。ソフトウェアがどのような現実をモデル化して設計されているのかといった根本のしくみに学生自身が気づき、理解を深めていくためには、自分だけの端末を、自分自身のニーズに沿って能動的に活用する必要があると考えていました。」

こうした思想に基づき、畿央大学では 2010 年 10 月に策定した「情報環境整備基本計画」の中に、"学生のモバイル端末活用" という項目を、いち早く盛り込んでいました。
当初は、学生の私的端末を活用する BYOD (Bring Your Own Device) を念頭にこの計画が検討されていましたが、2013 年に大学側で端末を調達して学生に貸与する COPE (Corporate Owned, Personally Enabled) にプランを切り替えました。

写真:畿央大学

畿央大学

冬木 氏は、「学習機会を最大化するためには、BYOD よりも COPE の方が適していた」と話します。
「PC やタブレットを本当に使いこなすためには、"セットアップ" や "初期化" といった体験も重要です。しかし、BYOD の場合、その端末を家族で共有しているかも知れませんし、個人のデータが蓄積されているかも知れません。その端末を初期出荷状態に戻して、再セットアップするわけにはいきません。学生たちの発見的学習を確実に支えるためには、大学側のコストが増えても COPE を実践することにメリットがあると考えました。」

こうした考えに基づく同学の COPE に適した端末として、機能や携帯性、信頼性、価格、品質、そして 4 回生までの 4 年間の利用に耐えられる耐久性など複数の項目を詳細に比較検討した結果、採用されたのが、Microsoft Surface Pro 2 でした。

<システム概要と導入の経緯>
ロング バッテリー ライフ、キーボード、携帯性など 10 以上の項目を基準として Surface Pro を採用

畿央大学が、1 回生に貸与するモバイル端末の選定は、下記を含む 10 項目を評価基準として進められました。

■採用条件

  1. Windows を搭載していること
  2. 故障率が低いこと
  3. キーボードが付属していること
  4. 通学時に携帯できるよう、軽量であること
  5. バッテリーで 5 時間以上稼働すること
  6. タッチパネルを搭載していること

Windows の搭載を選定条件の第一項目とした理由について、教育学習基盤部 部長 大山 章博 氏は次のように説明します。
「学生同士の学びでは、互いに "学びあう" ことが大切です。そのためには、統一されたプラットフォームで学ぶことが必要です。2013 年度半ばに学生の実態調査を行ったところ、学生の 97% が Windows ユーザーでした。この事実を踏まえて議論を重ねた末に、Windows に統一した環境下で、より深く情報処理の考え方を学んでもらうという結論に至りました。また、iPad のようなタブレットについては、"キーボードがない" という段階で選考から除外しています。」

こうして 2012 年 11 月に数社の端末にまで候補を絞り込んだ畿央大学では、「最終選考に際して追加した 11 項目の希望」に沿って Surface Pro の採用を決めています。それが「グローバル戦略に支えられたモデルであること」でした。

「各端末の品質や信頼性について、私たちが優劣を決めるのは大変難しい話です。しかも当時はまだ、他の大学での Surface Pro の導入実績もありませんでした。そこで、重視したのが "グローバル戦略" というキーワードでした。マイクロソフトが、グローバル規模で新規参入する以上、故障率や初期不良率は低いであろうと判断したのです。」(大山 氏)

こうして畿央大学では株式会社内田洋行の協力を得て、学生および教職員用に 680 台の Surface Pro 2 (うち 50 台は故障対策用の予備) を 2013 年中に確保。2014 年の入学式の翌日から一斉に運用を開始しています。

大山 氏は、「Surface の品質に対する期待が正しかったことは、この日のうちに実感できました。」と振り返ります。
「一番怖かったのはハードウェアの不良ですが、運用を開始してから今日に至るまでも、故障で持ち込まれることがほとんどありません。非常に素晴らしいと思います。」

入学式翌日、学生自身の手で初期セットアップを実施

運用初日となる 4 月 3 日の光景は「とても斬新だった」と、冬木 氏は笑顔を見せます。「実は 550 台ある学生用 Surface の初期設定を、すべて学生自身に行わせたのです。」

学生たちは、大山 氏たちが事前に準備したマニュアルに沿って、Windows の初期セットアップを開始。箱から Surface を取り出すところから始めて、ローカル アカウントの設定からネットワーク接続、履修登録画面の確認、メール設定確認までを、1 時間~ 1 時間半のうちに完了させたと言います。
この日、初期セットアップを行った新入生は 534 名。30 ~ 100 名に分かれて、各教室から一斉に無線 LAN にアクセスすることも初めての試みでしたが、事前の入念なシミュレーションが功を奏し、ほとんどの学生が時間内に設定を完了させています。

Office 365 との連携で 1 人 5 台まで最新の Office をインストールできる充実環境を実現

写真:西端 律子 氏

畿央大学
大学院 教育学科研究科
准教授
教育学部
現代教育学科 教授
博士(人間科学)
西端 律子 氏

写真:福森 貢 氏

畿央大学
健康科学部
看護医療学科 教授
教育学習基盤
副センター長
福森 貢 氏

写真:宮崎 誠 氏

畿央大学
教育学習基盤センター
助教
宮崎 誠 氏

写真:須佐美 佑樹 氏

株式会社内田洋行
公共本部
高等教育事業部
西日本営業部
ICT営業課
須佐美 佑樹 氏

畿央大学において、学生のモバイル端末活用が非常にスムーズに進められた背景には、1 つの大きな理由があります。それが、クラウド サービスの活用です。

2010 年に策定された「情報環境基本計画」に基づき、2014 年度に完成する同学の情報環境では、メールやグループウェアのほか、大学院の遠隔講義システムや、学習成果の可視化と共有化を行うキャリア ポートフォリオ システムの一部などに、マイクロソフトのクラウド サービスである Microsoft Office 365 Education が活用されています。

そのため、メールの設定もネットワークにアクセスして Exchange Online に接続するだけで完了します。さらに、Office 365 ProPlus の活用によって、学生、教職員共に 1 人 5 台まで最新の Microsoft Office をインストールできるので、ID、パスワードさえあれば、貸与された Surface でも、家族で使用している PC でも、簡単に同一環境を呼び出すことが可能です。いつでもどこでも同一の環境で、同一のファイルを閲覧、編集できるようになるのです。これによりデータの持ち出しに利用する USB メモリーの紛失事故なども減っています。

また、データ保全にも Office 365 が有効に働いています。メール データがすべてクラウド上に保存されているほか、学生、教職員が作成したドキュメントもクラウド ストレージの OneDrive for Business に保存されるようになっており、万一ハードウェアの故障や破損が生じても、データはクラウド上にあるため、手軽に交換対応が行えます。
こうした積極的なクラウド活用について、当初は激しい議論が交わされたと、大山 氏は振り返ります。

「セキュリティについて議論もありましたが、結論はシンプルでした。学内の情報担当は、私を含めて数名です。たったそれだけの人数でセキュリティを保つ学内の環境と、マイクロソフトの持つ高度な技術で守られたクラウド環境のどちらがより安心できるのか。比べてみれば、答えは明白です。」

冬木 氏も、次のように言います。
「もちろん、クラウドならばどこでもいい、というわけには行きません。万一トラブルが起きた際に、日本の法律の下で、日本の裁判所で係争できるのかという点は重要です。Office 365 であれば、グローバルなサービスでありながら、準拠法は日本法、管轄裁判所は基本的に東京地方裁判所となっています。ほかのクラウド サービスとは大きく異なる点です。」

<導入効果>
「操作方法は教えない」教育方針によって ICT リテラシーが飛躍的に向上

1 回生に 1 人 1 台の Surface を貸与してから、わずか 3 か月で明らかになった効果があると、大学院 教育学科研究科 准教授であり、教育学部 現代教育学科 教授の西端 律子 氏は言います。それが、文部科学省が複数の大学と連携して開発した「情報プレイスメント テスト」の、飛躍的な正答率の向上です。

「今の学生は、高校で必修科目として情報科の授業を受けていますが、情報の分野は幅広く、学校ごとに力を入れている分野が違うため、新入生の知識や理解にもばらつきがあります。それが 4 月に行った情報プレイスメント テストの結果にも現れていました。それが 7 月上旬に実施したテストでは正答率が一気に跳ね上がり、『情報活用の実践力』、『情報の科学的な理解』、『情報社会に参画する態度』という 3 つの学習目標すべてにおいて、90% 以上の正答率を記録しています。」

こうした変化の背景には、冬木 氏の定めた、あるユニークな方針が存在しています。それが「授業において操作方法の説明は一切行わない」というルールです。

「少し遠回りになるのかも知れませんが、操作方法を教えるのではなく、根本のしくみを教えることで、より実りのあるゴールにたどり着けるという考えに私たちも共感し、授業内容を組み立てました。最初は『なぜ先生は操作方法を教えてくれないの?』と、ずいぶん迫られましたけど『それは皆で考えていこう』と、直接答えることはしませんでした (笑)。」(西端 氏)

健康科学部 看護医療学科 教授 教育学習基盤副センター長 福森 貢 氏も、次のように話します。
「授業ではグループを作って、『Excel の計算式で、絶対参照を誰かに理解させるための問題を作りなさい』といった課題に取り組ませます。Microsoft Office の操作方法については、マイクロソフトの公式動画などを事前に見ておくよう案内します。この取り組みによって、学生たちに予習の習慣もつきました。これは、ほかの教科にも良い影響を与えていると思います。」

こうした自発的な学習によって、学生たちの ICT スキルは著しく進歩していると、教育学習基盤センター 助教 宮崎 誠 氏は言います。
「学生同士で Surface の使い方を教え合うことによって、驚くほどスキルが上達しています。学生たちの習熟度をアンケート調査したのですが、『コンピューター トラブルの発生時、自力である程度まで対応できますか?』という設問に対しても、約半数が『可能』と答えています。これは、授業でアプリケーションやデバイス ドライバーのインストールやシステムの初期化といった経験を積んできた成果だと思います。」

「時々センターにも学生が質問に来るのですが、操作する手つきが非常に早くて、私たちの目から見ても、魔法を使っているように見えます (笑)。先日も、教員から『学生たちの操作についていけない』と苦情を言われたほどです。」(大山 氏)

<今後の展望>
将来のスペシャリスト育成に向けて大きな手応え

畿央大学における、このような Surface の活用は「教育のスペシャリストを育成する意味でも、非常に大きな可能性を感じている」と西端 氏は言います。

「現在、学校現場には『ICT に習熟した教員が少ない』という現実があります。私たちが教育を受けていた時代には、Surface のような情報端末はなく、パソコンなどは特別な存在でした。しかし、今の子どもたちは当たり前のようにスマートフォンなどを利用しています。次代の教員となる学生たちには、より深い理解に基づく ICT スキルが求められますので、今回の COPE の実践は、非常に意義深いと感じています。」

最後に冬木 氏は、次のように締めくくります。

「導入のメリットも、今後への期待もたくさん挙げられますが、まずは学生も教員も、共に楽しみながら、自由に活用できる情報環境が整ったことは大変良かったと思います。今後も、より明確な教育効果に結びつけられるよう、継続的に取り組んでいきたいと思います。」

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