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 様に導入

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ジェイアールバス関東株式会社

 様に導入

バスの運行を強力にサポートするツールとして Windows 8.1 タブレットを 330 台導入
リアルタイムに確認できる予約状況や座席管理を実現

写真:ジェイアールバス関東株式会社

ジェイアールバス関東株式会社

さまざまな業種でタブレットの活用が進んでいる中で、安全、安心な運行を目指す交通機関でもタブレットを使った新たな試みが行われています。ジェイアールバス関東株式会社では、西日本ジェイアールバス株式会社と共同で Windows 8.1 が搭載されたパナソニック製「TOUGHPAD FZ-M1」を 330 台導入。乗車券販売システムと連動した座席管理を行えるアプリを開発するほか、運行をサポートするアプリの開発などで、さらに安全かつ確実な運行を行うなど、お客様サービスの向上や業務改善に努めています。

<導入の背景とねらい>
システム化を推進していくことで
高速バスの乗務員をフォローアップする

ジェイアールバス関東株式会社
代表取締役社長
万代 典彦 氏

ジェイアールバス関東株式会社
運輸営業部
システム管理室
課長
高山 明 氏

ジェイアールバス関東株式会社
運輸営業部
システム管理室
林 隆寛 氏

ジェイアールバス関東株式会社
東京支店
土岐 裕一郎 氏

ジェイアールバス関東株式会社
東京支店
嶋先 健太 氏

鉄道情報システム株式会社
中央システムセンター
開発事業一課
大澤 篤史 氏

ジェイアールバス関東株式会社 (以下、JRバス関東) は、首都圏から 7 方面に伸びる高速道路を利用して、首都圏近郊、関西、四国方面へ都市間高速バスを運行することを主事業とし、関東地方の一部地域では一般路線バスも運行しています。1964 年の名神高速道路開通により運行が開始された、国鉄バスの流れをくむ JRバス関東は、日本の高速バス業界における老舗でもあり、車内からの眺望を楽しむことができるダブル デッカー (2 階建車両) や幅の広いシートやワンセグ テレビが搭載されたプレミアム車などの斬新な車両を取り入れていることも特長となっています。

安全第一が経営の根幹になると説明する、代表取締役社長の万代 典彦 氏は次のように話します。「バス事業は、お客様の支持がなければ成立しない事業で、お客様の支持は安全が前提になっていると考えています。鉄道や飛行機とは異なり、バスは一般車や自転車、歩行者などがいる複雑な交通環境の中で運行する必要があるため、安全を確保することは非常に難しく、多くの部分を乗務員の注意力に依存しなければなりません。これらをどのようにフォローアップして、安全な運行を行っていくかが大きな課題です。そのためには、今後はシステム化や IT 化が非常に重要だと考えています」。

一方で、「日本のバス業界は、システム化が非常に遅れている」と万代 氏は説明します。たとえば、鉄道や飛行機は、指令センターや管制塔で運行管理をシステム化していますが、バスは各車庫で点呼と指示を行い、出発後は電話連絡で運行管理を行うというのが数年前までの状況でした。JRバス関東では、GPS を利用してバスの現在位置を運行管理者がリアルタイムに把握することができる運行管理システムを構築するとともに、利用者が運行状況をインターネットで確認できる「バスここ」というサービスも提供しています。また、JRバス各社と共同で乗車券販売システム「高速バスネット」を提供しているほか、コンビニエンス ストアでの販売などにも取り組んできました。

今回、Windows タブレットを導入した JRバス関東ですが、実は 2007 年ごろにも同様の取り組みに挑戦していたと万代 氏は説明します。たとえば、東名高速などではサービス エリアなどにバス停を設置している場合が多く、このバス停から乗車する利用者も多くいます。しかし、乗務員は、運行前に営業所で印刷された座席表で予約状況を把握し、出発後は最新情報を取得することができなかったため、途中バス停を出発する時刻の 1 〜 2 時間前に乗車券の販売を終了する必要がありました。そこで、PDA を導入して、リアルタイムに乗車券を販売できるようなシステムを構築した JRバス関東でしたが、当時はタッチ パネルの精度があまりよくなく、操作性の悪さが乗務員の負担となっていたと言います。また、通信手段として Bluetooth で PDA と携帯電話をつないでいましたが、ペアリングがうまくいかないなどのトラブルもあり、故障も多かったことから一部でしか展開できず、数年でシステムの展開をやめたそうです。

<導入の経緯>
故障のない堅牢性と安定稼動を考えて
Windows 8.1 ベースのタブレットを採用

スマート デバイスの普及によって、2012 年ごろから再びモバイル デバイスを使った乗車券販売や座席管理、運行管理を構想し始めた JRバス関東では、既にタブレットを導入していた親会社の JR東日本や航空会社などでの先行事例の視察を行いました。ジェイアールバス関東株式会社 運輸営業部 システム管理室 課長の高山 明 氏は、「Android は業務用アプリを搭載するにはセキュリティに不安があり、端末のバージョンアップに対応してアプリを改修する手間もかかると感じ、安定的な稼動を考えれば Windows タブレットが最適であると考えました」と説明します。タブレットと連携させる必要がある「高速バスネット」は Windows ベースで構築されているので、親和性が高いことも Windows を選択した理由でした。

採用するデバイスとしては、車内で充電できるため、バッテリ容量にはこだわらず、乗務員が使用する業務用時刻表などを表示するのに最適な 7 インチのディスプレイを持ち、堅牢性も備えた「TOUGHPAD FZ-M1」を採用しています。ジェイアールバス関東株式会社 運輸営業部 システム管理室の林 隆寛 氏は、「最も重視したのは、堅牢性と安定性です。長距離が多い高速バスの運行において、途中でトラブルや故障が起きてしまえば、タブレットを交換することも難しくなります。また、以前のように通信に手間がかからないように、Wi-Fi に加えて NTTドコモの LTE を使える端末であることも重要でした」と話します。

タブレットの導入と共に、バスの運転席に充電可能な設置台も増設しました。「ちょうどよいタイミングで、お客様からのご要望に応えるため、各座席にコンセントを付けるように直営工場で整備していたため、併せて運転席にもコンセントを付けられるようにしました。そのため、低コストで整備することができました」と万代 氏は話します。

アプリの開発は鉄道情報システム株式会社 (以下、JRシステム) をパートナーとし、共同で導入した西日本ジェイアールバス株式会社 (以下、西日本JRバス) との 3 社で協議しながら開発を進めていきました。「JRシステムは、高速バスネットも開発しており、構築したシステムの安定性や信頼性には定評があります。バスの乗車券販売システムを開発している会社はほかにもありましたが、信頼性が高い JRシステムであれば、安心感を持って意見を出すことができ、迅速な対応をしてくれると考えました」と高山 氏は話します。

Windows ストア アプリの開発は初めてだったという鉄道情報システム株式会社 中央システムセンター 開発事業一課の大澤 篤史 氏は、開発当時を振り返って次のように話します。「デスクトップ アプリケーションに比べると、実現できる機能に多少の制約があってとまどった部分はありましたが、基本的な開発環境は変わらないため、スムーズな開発が行えたと思います。また、マイクロソフトの全面的なサポートがあり、質問しても回答が迅速で、技術的な問題に対してデータを検証してくれたので、非常に助かりました」。

西日本JRバスと共同でプロジェクトを進めていったことについて、万代 氏は次のように振り返ります。「西日本JRバスとは、東京〜大阪間の高速バスを共同運行しており、浜名湖近くの三ヶ日営業所で乗務員が交代する体制となっているため、共同でさまざまなことを行っています。異なる会社間でプロジェクトを進めるためには、価値観の違いでぶつかることが多いので、基本的な考え方を合わせることに最も時間をかけました」。

また、現場主導でアプリ開発を行うために、プロジェクト チームを作って乗務員と運行管理者の代表をメンバーにいれ、月に 2 回の会合を行いながら進めていったことも今回のアプリ開発の特長です。「本社で仕様を考えても理屈が優先されてしまい、実際に使う人の意見を取り入れなければ使い勝手が悪いものとなります。現場の全員が使う必要がある機器となるので、IT や機械が苦手な人を説得できるものを作ることが重要だと考えました」と万代 氏は説明します。

<導入効果>
リアルタイムに乗務員が空席を確認可能
運行支援システムの開発や汎用アプリ活用も行う

JRバス関東では、タブレットを使った乗車券販売と座席管理を 2015 年 7 月から運用し始め、順次展開します。実際に使用し始めたジェイアールバス関東株式会社 東京支店の土岐 裕一郎 氏は、「SIM カード内蔵で、携帯電話で通信する必要がないので、以前にくらべて管理の面で楽ですね。オンラインで随時最新の情報を見られるので、途中のバス停から乗る飛び込みのお客様が来ても、安心してご案内することができます。以前は、空席を売っていいかどうかを事務所に電話で問い合わせなければならず、バス停に停まるたびに 2 〜 3 分の電話確認の時間がかかってしまい、大きな時間のロスになっていました」と話します。

独自開発のアプリだけでなく、汎用アプリも JRバス関東では活用しています。たとえば、VICS などの渋滞情報を確認できる「道路交通情報」や「道路地図」、外国人の乗客に対応するための「翻訳アプリ」、筆談用の「ホワイト ボード」などをタブレット内に搭載し、運行業務やお客様サービスを向上しようと考えています。また、現場からの要望に応じて、許可制でアプリを追加導入できるしくみにしています。2015 年秋には、オンライン予約の Web 乗車票などを QR コードに対応させ、改札時間の短縮や不正乗車の防止に繋げていきたいと考えています。

JRバス関東では今後、営業所の運行管理者からバスへの業務連絡や業務用時刻表表示などの運行支援アプリも開発し、さらにタブレットを活用することも計画しています。「たとえば、四国方面に向かう長距離路線などの場合、2 泊 3 日にわたる運行となり、Microsoft Excel で作成した時刻表、乗務マニュアル、非常時の対応マニュアルなど、乗務員の携行品が非常に多くなります。タブレットの活用により、手荷物を減らすことができ、マニュアルなどが変更された場合でも、最新情報を現地で即座に確認することができます。時刻表などは運行する曜日によってダイヤが異なりますが、タブレットが持つカレンダー機能と連動させれば、違う曜日の時刻表を渡すなどの人的ミスをなくすこともできます」と万代 氏は話します。また、ジェイアールバス関東株式会社 東京支店の嶋先 健太 氏は、「これまでは、本社から運行時刻が発表され、それを見ながら Excel で時刻表を作り、前日に乗務員に手渡すという作業が必要でしたが、アプリができればこれらの作業を大幅に減らすことができます。ダイヤが変更されるときには、上りは旧ダイヤ、下りは新ダイヤといった複雑な運行表を Excel で作らなければならないときもありましたが、このような場合もミスなく乗務員に情報を伝えられると思います」と話しています。

眺望のよいダブル デッカー (2 階建車両) などの斬新な車両を取り入れて高速バス事業を行う JRバス関東。

バス停の出発時間ギリギリまで乗車券を販売することができ、乗務員が空席をリアルタイムに確認できることで、予約なしの乗客にも安心して空席を案内できる。

バス車内に専用の設置台を整備し、端末の充電と運行中の情報確認を随時行えるようにしている。

出発前やサービス エリアでの休憩中に渋滞情報や時刻表、マニュアルなどを確認できる。

<今後の展望>
アプリを導入して終わりではなく今後の活用を見極めてバス業界に広げていく

「自然災害による通行止めなどの場合に、走行中の全バスに一斉送信できる機能があれば良い」 (嶋先 氏) や「バスの中のさまざまな機器を集約してタブレットで制御できるようになれば業務効率がより向上する」 (土岐氏) というように、タブレットの活用については、既に現場からさまざまな意見が出てきています。林氏は、「アプリが完成して終わりではなく、これからが本番だと考えています。現場の意見を取り入れながらアプリを成長させて、共同運行会社などの他のバス会社にも利用を広げ、バス業界全体の IT 化に寄与していきたいです」と話します。

JRバス関東では、約 40 社のバス会社と多くの路線で共同運行を行っています。今後は、これらのバス会社も納得するようなシステム化を行って現場の業務負担を減らし、乗客サービスの向上や安全性の向上をバス業界全体で行っていきたいと考えています。既に、東京・新宿と房総半島を結ぶ「なのはな号」を共同運行している、千葉県の日東交通株式会社もタブレットの導入を決めており、今後採用する会社を増やしていきたいとしています。

「今後は、現場がしっかりとタブレットとアプリを使いこなせるかを見極めていくことが非常に重要です。独自アプリの使い勝手をさらに向上させていくことはもちろん、たとえば成田空港線で汎用の翻訳アプリを使って、多言語で外国人のお客様にどのような案内を行えるかなども考えていかなければなりません。現場の運行管理者や乗務員をフォローアップするようなしくみを作ることで、安全性やサービスの向上を目指していきたいと考えています」と話す万代 氏。JRバス関東では、高速バスのリーディング カンパニーとして、今後も IT やシステム化を推進し業務効率向上と安全かつ快適なバス運行を行っていきます。

今回のプロジェクトに尽力された JRバス関東と JRシステムの関係者の皆様

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