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JAたいせつ

 様に導入

"選ばれる北海道米" であり続けるために、安全、安心を保証する生産履歴や GAP を、Microsoft Surface 活用で大幅に効率化。GIS とデータ連携する先進的なシステムで "出向く農協" を実践

道内有数の水田農業地帯を誇る JAたいせつでは、消費者から選ばれる米作りを推進するために、JA グループが実施している「生産履歴記帳運動」はもちろんのこと、2010 年から始められた「GAP」や、国が推奨する「GIS 活用」にも積極的に取り組み、数々のデータを運用してきました。しかし、生産履歴の作成などは、生産農家にとっては大きな手間ともなっていました。そこで、JAたいせつでは、タブレット活用による作業の効率化を検討。約 3 年の構想期間を経て、最終的に選ばれたのが、最新の Windows を搭載した Microsoft Surface Pro シリーズでした。

<導入の背景とねらい>
「生産履歴」の記帳や GAP の登録などで、生産農家にかかる負担を軽減

写真:柿林 孝志 氏

たいせつ農業協同組合
代表理事組合長
上川生産農業協同組合連合会
代表理事会長
柿林 孝志 氏

写真:金塚 仁司 氏

たいせつ農業協同組合
営農部
部長
金塚 仁司 氏

写真:下村 祐一 氏

たいせつ農業協同組合
総務部 総務課
係長
下村 祐一 氏

"北海道の 3 大米生産地" の 1 つ、上川地方の中心部に位置する JAたいせつは、水稲生産農家が 340 戸あり、その水稲作付面積は 3,500 町 (1 町 = 約 0.9917 ha) にもおよぶ、道内有数の規模を誇っています。2008 年に採用された新品種「ゆめぴりか」は、北海道米の技術の粋とも言われ、一般財団法人 日本穀物検定協会の定める「食味ランキング」で 2010 年から 4 年連続で最高位の "特 A"。魚沼産コシヒカリと並ぶ評価を得ています。

この「ゆめぴりか」の誕生は、北海道全体で取り組んできた品種改良の成果であると、たいせつ農業協同組合 代表理事組合長 上川生産農業協同組合連合会 代表理事会長 柿林 孝志 氏は言います。

「昭和の初めごろを振り返ると、私たち北海道の米は『業務用』のイメージしかありませんでした。当時から、コシヒカリを目指して品種改良に取り組んできましたが、一朝一夕に解決できる課題ではありません。それでも、食糧管理法に従って国が固定価格で買い上げてくれる時代には、大きな問題はありませんでした。しかし、1995 年に食糧管理法が廃止され、2004 年の食糧法改正では、誰でも米の販売、流通が行えるようになりました。つまり、『消費者に選ばれる米作り』が必要不可欠となったのです。北海道でも、1988 年に生まれた『きらら397』という品種がカレーやチャーハンなどに適していると人気を得ていましたが、それで満足するわけにはいきません。そうして、北海道を挙げて努力を続けた 1 つの成果が、『ゆめぴりか』なのです」。

この「ゆめぴりか」をはじめとする農作物が全国の消費者から選ばれる商品であるためには、「安全」と「安心」の保証が欠かせません。JAたいせつでは、JA グループが 2002 年 7 月から実施している「生産履歴記帳」はもちろん、農林水産省が 2010 年に 4 月に野菜、米、麦を対象に最初のガイドラインを策定した GAP (Good Agricultural Practice : 農業生産工程管理) まで積極的に実践。JAたいせつ全体における作物の品質保証を行っています。

さらに、JAたいせつでは、GIS (Geographic Information System:地理情報システム) を活用した農用地情報の管理も、積極的に推進。株式会社ネクシス光洋 (以下、ネクシス光洋) が提供する営農情報管理システム「J-Map」を活用し、地域全体の継続的な改善活動に役立ててきたと柿林 氏は続けます。
「米の生産は、簡単なことではありません。米の品質を決める基準の 1 つに『タンパク値』があり、6.8 以下の低タンパク米を目指して作付けしているのですが、たとえ隣り合った圃場で同じ品種を育てていても、このタンパク値が異なるのです。理想的なタンパク値の米を育てるにはどうすればいいか。土壌の違い、肥料の違い、育て方の違い。さまざまな情報を比較する必要があります。また、各農家の圃場は広い範囲に点在していますから、GIS の活用は、とても有効な手段なのです」。

こうして生産履歴、GAP、そして GIS 活用に取り組んできた JAたいせつでは、常に生産農家の負担を減らし、これまで以上の効率化を図るために 2014 年から非常に先進的な取り組みを進めています。

それが、Microsoft Surface Pro シリーズ (以下、Surface) と、独自に開発した Windows ストアアプリの活用です。
OCR で行われていた生産履歴の記帳や GAP の登録をこのアプリケーションによって完全に電子化することで、労力を大幅に軽減。さらに、電子データを蓄積することで、GIS システムと生産履歴のデータ連携を可能にすることで、より効率的な営農指導へとつなげていくことが、目的となっています。

<導入の経緯とシステム概要>
営農指導などに、積極的に "出向く農協" を実現するために、タブレットでデータを活用

写真:寺林 修 氏

株式会社ネクシス光洋
代表取締役
寺林 修 氏

写真:山本 透 氏

株式会社ネクシス光洋
空間情報グループ
システム開発担当スタッフ
山本 透 氏

写真:熊谷 修一 氏

株式会社ネクシス光洋
取締役・室長
熊谷 修一 氏

写真:長谷川 玲奈 氏

株式会社マーベリック
ソフトウェアデザイナー
長谷川 玲奈 氏

実は JAたいせつでは、2012 年に独自アプリとして「農薬希釈計算機」を開発、活用するなど、早くからタブレットおよびスマートフォンの活用に積極的でした。JAたいせつがこうしたモバイル端末の活用に注力する背景には、「出向く農協の実現」という、大きな目標があると、柿林 氏は言います。

「生産農家がこちらへ来てくれるのを待つのではなく、こちらから専門のスキルを持った職員が積極的に出向いて、さまざまな課題解決に当たることが重要だと感じています。たとえば、生産農家の中には、耕地を持っていても、作付けを行っていないところもあります。そうした生産農家へこちらから出向き、相談に乗らせていただく。また、生産履歴を記帳するにも大変な手間がかかります。生産履歴が提出されなければ出荷ができませんので、生産農家にとっては重要な問題です。しかし、収穫の多忙な時期に、細かな項目が並んだ書類を手書き作成するのは大変な手間です。それならば、こちらから出向いて積極的に支援する。こうした活動を支えるためには、きちんとしたデータを携帯し、活用できる端末が重要となるのです」。

こうした柿林 氏の想いを背景に 2014 年に新たに開発、導入されたのが、Surface のタッチ操作を前提としたアプリケーション――「生産履歴」と「GAP」、そして GIS を活用した「耕地図システム」を統合したしくみです。
このアプリケーションは、ネクシス光洋が上川地方の 1 市 6 町の農業関係機関が参加する協議会に提供している、ネットワーク型の GIS をベースとして、ネクシス光洋と JAたいせつの営農部と総務部が協力して開発されました。

総務部 総務課 係長 下村 祐一 氏は、既存の類似アプリケーションを採用するのではなく、独自開発にこだわった理由について、次のように説明します。
「今回のアプリ開発で大切にしたことは、『営農を支える現場の方々の負担を減らすこと』です。そのために、操作が難しくなっては意味がありません。各メーカーから類似の既成品も出ているのですが、見てみるとどうも、項目が多く、複雑になりがちでした。そこで私たちは、営農部の協力を得て、現場の声を積極的に取り入れることで開発を進めました」。

こうして進められたアプリケーション開発は順調に進行。ネクシス光洋にとっても初めての経験となる Windows ストアアプリの開発にも関わらず、大きな波乱もなく約 1 年半で完了し、2014 年の収穫期から無事にサービスインしています。

また、生産履歴などのデータはすべてクラウド上に保存されるため、Surface を携帯することに関して、データの喪失や破損などの心配も、ほとんどないと言います。

ノート PC とタブレットの二面性を備えた Windows タブレットで、全局面を効率化

これまでに、iPad や Android 端末を活用した経験のある JAたいせつが、Surface を採用するに至った理由について、下村 氏は、「ほかにはない、二面性を備えていた端末だから」と説明します。

「最新の Windows を搭載した Surface の優れたところは、Microsoft Office とキーボードを備えたノート PC として、日常業務に不足なく活用できる側面と、軽快なタッチ操作と優れた携帯性を備えたタブレット端末としての側面を併せ持っていることにあります。特に、Windows 8.1 になってからは画面を 2 分割して 2 つのアプリを同時に活用できるようになり、『生産履歴を確認しながら、耕地図システムを操作する』といったように、利便性が大幅に向上しています。そうした意味では、競合となるタブレット端末は特にありませんでした」。

事実、組合長である柿林 氏はすでに、日常の書類作成にも Surface を活用していると言います。今はまだ、既存の業務用システムとの兼ね合いから、Surface の全面採用には至っていませんが、いずれは最新の Windows が持つ二面性をフルに活かせるように、拡大導入を進めていく方針であると、下村 氏は言います。

そして、JAたいせつでは、アプリケーションの効果を最大限に引き出すためにタッチ操作に適したユーザー インターフェイス (UI) にもこだわり、開発がほぼ完了した段階で、ソフトウェアのデザインなどを得意とする株式会社マーベリックに、UI のリファインを依頼。大幅なデザイン変更を行っています。

マーベリック ソフトウェアデザイナー 長谷川 玲奈 氏は、次のように振り返ります。
「ご依頼いただいた段階では、アプリケーションの開発はほとんど完了していましたので、機能や画面遷移など、内部構造への影響を最小限に抑える方向で UI のリファインを行いました。生産農家の方々も直接操作されることを前提に、レイアウトや色彩などのルールを設定し、いくつかのビジュアル パターンを提案させていただきました。実装に際しては、ネクシス光洋の山本 様たちと直接コミュニケーションを取らせていただくことで、スムーズに進めることができたと思います」。

<導入メリット>
従来 3 ~ 4 か月を要していた OCR のデータ化をわずか 1 週間で完了

こうして練り上げられたアプリケーションを搭載した Surface 導入は、高齢化の進む生産農家の方々にも、非常にスムーズに受け入れられたと、たいせつ農業協同組合 営農部 部長 金塚 仁司 氏は言います。

「Surface の活用を始めてみると、驚くほど好評でした。生産農家の方々も、初めから普通に操作されていました。開発当初は、『本当に使っていただけるのか?』と不安もあったのですが、フタを開けてみるとまったく問題なく受け入れてもらうことができ、安心しました」。

2014 年の収穫期から活用の始まった Surface およびアプリケーションがもたらした効果として、大きく分けて次の 3 点が挙げられると、金塚 氏は続けます。

■主な導入効果

  1. 従来、3 ~ 4 か月を要していた生産履歴のデータ化が、わずか 1 週間程度で完了
  2. 農業に関する専門知識が浅い若手職員でも、生産履歴のヒアリングが可能
  3. データ化完了までにかかる費用を、大幅に削減

「今までは、OCR 用のシートに生産履歴が手書きされていました。手書きですから認識精度も低く、目視による再入力などの手間がかかりました。そのため 9 月の収穫期に提出された 340 戸分の OCR シートすべてをデータ化するまでに、年をまたぐのが当たり前となっていました。しかし、今では 1 件あたり、10 ~ 15 分でヒアリングが完了し、その場で電子データが揃います。1 週間もあれば、全戸分のデータが整うようになったことは、劇的な変化です。コストの面から考えても、再入力を依頼するオペレーターの人件費を含め、大幅に削減できました。良いことばかりです」(金塚 氏)。

利用者を選ばないユーザビリティーの高さで JA 内のダイバーシティー促進にも期待

さらに素晴らしい点として、「誰でも、生産履歴のヒアリングが行えるようになったこと」があると、金塚 氏は強調します。
「今までも、記帳の遅れている生産農家には、こちらから出向いてサポートを行っていましたが、1 つ、大きな制約がありました。それが、『農業に関する十分な知識をもった職員でなければ対応できなかった』という事実です。聞き取りを行いながら OCR 用紙の空欄を正しく埋めていくためには、十分な知識が必要だったのです。しかし、今は違います。タッチ操作の液晶画面を示しながら、項目ごとに質問をして、必要な項目を埋めていくだけで完了します。それこそ、新人の女性職員を 1 人で派遣しても問題なく完遂できるレベルにまで、効率化されました。これは、私たちが『出向く農協』を実践していく上で、非常に重要な意味を持っています」。

下村 氏も、次のように話します。
「今回のアプリケーション開発を通じて、『人が直観的に操作できるシステムは、何の抵抗もなく受け入れられていくのだ』ということを、強く実感しました。高齢化が進む中、細かい文字を手書きするよりも、タブレットにわかりやすく配列されたボタンをタッチして、サクサクと入力できる方が喜ばれることも分かりました。生産農家の方々は、農業のプロフェッショナルとして、素晴らしい品質の作物を収穫されています。JAたいせつが出荷する農作物への信頼を高めていくためにも、こうして営農の現場における ICT を整備して、消費者の信頼を得られるよう、データを蓄積、活用していくことが重要なのだと改めて実感できました」。

生産農家にとっても、JA にとっても大きなメリットをもたらした、この "使いやすいシステム" について柿林 氏は、「ダイバーシティーの実現」という観点からも高く評価しています。

「農協の中は、一般企業に比べて、まだまだ女性の立場が弱い側面があるように思います。しかし、このアプリケーションのように、誰でも平等に作業が行える環境が整っていけば、女性の働き方も変わっていくでしょう。今は、結婚や出産をしたからといって、専業主婦になるという時代ではありませんからね。ICT 活用による業務の効率化を、JA 内の女性の雇用改善につなげていけるよう、今後も継続して取り組んでいきたいと思っています」。

<今後の展望>
上川地方全体で耕地図システムを共通基盤として活用することも視野に

今後の活用拡大について柿林 氏は、「耕地図システムの充実が鍵を握っている」と話します。
「農業は、土地を相手にする仕事です。その意味において、私が一番に実現したかった機能が、生産履歴と GIS を連携させた『耕地図システム』です。(2014 年 10 月時点では) まだ、生産履歴データの組み込みが完了していませんが、今後データの蓄積が進み、システムが育っていけば、長期的な農地運用の効率化にきっと役立つことでしょう。高齢化や転業など、さまざまな理由によって、作付け農家の入れ替わりが生じます。そうした中、タッチ操作で簡単に、地図情報から、その圃場がいかに手入れされてきたか、どのような収穫実績があったかという生産履歴と、土壌検査の結果などを一覧できたら、後を引き継いで作付けを行う方々にとっても有益です。日本の農業を継続させていく上でも、とても役に立つのではないかと思っています」。

ネクシス光洋が構築したネットワーク型 GIS をベースとしたこのシステムは、他の都道府県への応用も可能であると、ネクシス光洋 代表取締役 寺林 修 氏は言います。
「現在、農林水産省も GIS の活用を推奨しており、何らかの形で地図情報を取得されている地域も多くあると思います。本来、航空写真測量には億単位のコストが発生します。そこで当社では、最新鋭の UAV (Unmanned Aerial Vehicles : 無人航空機) を活用することで、コストを抑えて、圃場のデータを作成することを可能にしています。今回のアプリケーションを、他の都府県に応用する場合に、すでに何らかの地図情報をお持ちであれば、まずはそれを活用させていただくことが可能ですし、圃場のデータ作成段階からご協力させていただくことも可能です」。

もちろん、北海道、特に上川地方に関しては、何の問題もなくこのアプリケーションを活用できる下地は整っていると、柿林 氏と寺林 氏は声を揃えます。

「上川地方には、全部で 13 の JA があり、私はその連合会の理事会長も兼任させていただいています。今回のシステムについてはぜひ、この連合会においても紹介して、好評であれば上川地方共通の基盤として活用できればいいと思っています。まぁ、今はまだ将来の夢に過ぎませんが、GIS の活用はすでに上川の 1 市 6 町で行われていますから、障壁は少ないだろうと感じています」(柿林 氏)。

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