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公立大学法人 岩手県立大学

 様に導入

研究開発基盤のクラウド (Microsoft Azure) 移行を進め異分野との学際的研究を加速

写真:公立大学法人 岩手県立大学

公立大学法人 岩手県立大学

その年に発表された研究論文の中から各賞が贈呈される「情報処理学会全国大会」において、工業系大学を差し置き毎回多数の学生奨励賞受賞者を輩出し続ける、公立大学法人 岩手県立大学 (以下、岩手県立大学)。産業界との人的交流、受託研究、共同研究に力を入れる同大学では、研究の更なるレベルアップとスピードアップを目指し、研究用 IT 基盤のクラウド (Microsoft Azure) シフトを進めています。

<背景とねらい>
新規システム導入時の時間やコストなど、オンプレミス環境の課題が学際的研究の足枷に

写真:公立大学法人 岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 教授 村田 嘉利 氏

公立大学法人 岩手県立大学
ソフトウェア情報学部 教授
村田 嘉利 氏

研究開発において今や欠かせない存在となっている IT ですが、従来のオンプレミス環境の場合、新規システム導入時に事前検証や開発環境準備のための時間とコストがかかります。また、自前のデータセンターを持つ国内大学の多くは、その拡充のために毎年多額の予算を投入していますが、新しい技術が次々と登場し多くは数年で陳腐化してしまうという問題もあります。こうした従来の問題を解決する "切り札" として、同大学のソフトウェア情報学部 村田教授が進めているのが、研究開発用 IT 基盤のクラウド移行です。

「少し前、ビッグデータがブームになりましたが、我々のような規模の大学が単独でデータセンターを維持していくのはそもそも無理があります。便利なツールが揃っている Azure を一度使ってしまうと、もはやスタンドアロンのシステムを現場に運んで立ち上げてセッティングする・・・という作業は面倒なだけです。クラウド化してネットワーク上で統合してしまった方が、クラスタリングができる、進捗管理もできる、ビジュアルアウトプットもカンタン、といいことづくめです」(村田 氏)。

<システム概要と選定理由>
Case.1: 「聴診演習・教育システム」を学部間コラボで開発

写真:公立大学法人 岩手県立大学 看護学部 講師 三浦 奈都子 氏

公立大学法人 岩手県立大学
看護学部
講師 三浦 奈都子 氏

村田教授が手がける、クラウド (Microsoft Azure) を活用した研究の 1 つが、看護学部とソフトウェア情報学部のコラボによる「聴診演習・教育システム」です。同システム開発の発端は、看護学部の三浦講師が、学生の聴診器を用いた診断スキル向上のために、より高機能で安価な演習機材を開発できないか、大学の知財や産学官連携を担当している地域連携室に相談したことでした。

「健康な学生同士の演習では疾患音を聴き分ける訓練にならず、スピーカー埋め込み型で疾患音が出せる教育用シミュレーターは 1 体約 400 万円と非常に高価でした。もっと安価で臨床に近い設定で演習できるシステムがあれば・・・と考え、まず開発パートナー探しを始めたのです」(三浦 氏)。

地域連携室を介して紹介された村田教授との共同研究によって開発されたのが、Kinect で患者役の人物の肩や腰のスケルトン データを取得、聴診器を識別し追跡するシステムのデータと組み合わせることで、聴診器が正しい位置に当たっているかを判定し、あらかじめ登録しておいた疾患音を鳴らす「聴診演習・教育システム」です。

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右手前の Kinect で、被験者の骨格データを取得&聴診器の三次元座標を追跡。両データを組み合わせることで、聴診器が正しい位置に当たっているかを判定

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モニターに骨格データと聴診器の位置が表示されている。モニター左のスピーカーから被験者の呼吸にあわせて疾患音が鳴るしくみ

「我々の研究目的はあくまで新しい技術の開発です。それを使いやすくするためのインプリメンテーションには時間とお金をかけたくない。Azure ならその部分を省略して本来の研究に集中できる・・・というのがありがたいのです」(村田 氏)。

なお、本システムはすでに特許出願済みで、医療・看護と理・工学の連携による「看護理工学会」の次回学術集会の場で発表予定とのことです。

Case.2: 臨床心理士との会話から生まれた「表情検知 & 診断システム」

写真:公立大学法人 岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 准教授 プリマ・オキ・ディッキ・アルディアンシャー氏

公立大学法人 岩手県立大学
ソフトウェア情報学部
准教授 プリマ・オキ・ディッキ・アルディアンシャー氏

もう 1 つ、同大学における学際的研究の事例としてご紹介するのが、インドネシア出身で日本に来てかれこれ 20 年というプリマ准教授の研究室で開発中のものです。こちらは、心理学研究に資するデータを提供する表情検知 & 診断システムです。

「心理学教育で一般的な行動観察実習では、グループで会話している人の視線の動きや、頷きの回数、タイミングなどを測定し分析することがあります。実際には 1 人ひとりの表情を録画して、それを見ながら専門の装置でデータ化するのですが、この装置が 100 万円近くするうえに、1 人ずつ手入力のため時間や労力がかかって大変・・・という話を、コミュニケーションを研究している心理学者からお聞きしたことから、システム開発がスタートしました」(プリマ 氏)。

開発した解析ソフトウェアでは、自作の全周囲カメラと組み合わせることで、全員の表情や視線など (誰が誰を見ながらどんな表情・頷きをしているのかまで! ) を一度にリアルタイムで計算して三次元表示 & 記録でき、録画を見ながら手入力での解析が不要になります。心理学の国際学会で発表したところ各国研究者から大好評を博したとのこと。

「Azure 側で喜怒哀楽の感情分析がかなりできるようになってきていることが、Microsoft Azure を選んだ理由です。記録、解析したデータを Azure に上げて表情についての機械学習は任せることで、私たち研究者は、検査や診断などより実世界に近い応用分野に集中できるようになります」(プリマ 氏)。

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3 人で会話する様子を全周囲カメラで一度に撮影し、1 人ひとりの表情や行動をリアルタイムで分析[拡大図]新しいウィンドウ

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1 人ずつの分析結果をタイムライン表示している
[拡大図]新しいウィンドウ

ユーザー拡大を目指し学内開催したハンズオン「IoT ALGYAN (あるじゃん)」が Azure 導入のきっかけに

写真:株式会社 タイプ・アール 取締役 高瀬 秀樹 氏

株式会社 タイプ・アール
取締役 高瀬 秀樹 氏

岩手県立大学が、数あるクラウドの中から Microsoft Azure を選ぶきっかけとなったのが、クラウド & IoT の可能性についてマイクロソフトのエバンジェリストが語る全国キャラバン・ハンズオン「IoT ALGYAN (あるじゃん)」の学内開催でした。学生達に最新技術に触れる機会を与えたい・・・という同大学の要請を受け、2016 年 2 月、パートナー企業: 株式会社タイプ・アールの協力を得て開催されました。当日は約 30 名の学生が参加し、IoT デバイスを使って実際に動くところまでを体験しました。

「IoT ALGYAN (あるじゃん) では、一定レベル以上の知見に達した参加者を、今度は初心者をフォローする側に回っていただく・・・というランク認定制度があります。今回参加された学生さんを中心に、どんどん学内で IoT の研究が拡がっていくと嬉しいですね」 (タイプ・アール 取締役 高瀬 氏)。

<導入効果と今後の展望>
クラウドに演習データを蓄積することで演習・教育プログラムとしての可能性が拡がる

県立岩手大学が、研究開発用 IT 基盤のクラウド移行を推し進めるねらいは、研究開発の現場にいちいちサーバーを運び込んでセッティングする手間がなくなる「システム運用の省力化」だけではないそうです。

「「聴診演習・教育システム」の場合、クラウド (Microsoft Azure) で提供することで、演習データの蓄積や分析、グラフ化などの後工程もシームレスにでき、PDCA を回しやすくなる。また、学生 1 人ひとりの習熟度をリアルタイムで把握でき、習熟度に応じた個別プログラムを提供することによって、より高い演習効果が期待できる。更には、被験者との会話の音声データと顔の表情を取得して分析すれば、接遇改善プログラムとしても使える。このようにクラウドを利用することによって、研究本来の目的 (この研究の場合は優れた「演習・教育システム」の開発) が効率的に達成できるようになることこそが重要です」(村田 氏)。

学際的研究を進めるうえで最新クラウドの活用が "鍵" に

学際的研究に共通するポイントは 3 つあります。まず、IT と異分野のスペシャリストが直接コミュニケートし、課題を共有することがきっかけとなっていること。次に、最新 IT を使いこなすことでその課題を解決していること。最後に、様々なデータをクラウドに貯めて活用しようとするビッグデータ的アプローチです。進化したクラウド (Microsoft Azure) は、このような学際的研究の現場に新たな価値を提供しつつあります。

「ウチのような規模の大学が単独でデータセンターを持って維持していくのは無理があります。それよりも Azure でも提供している機械学習のような優れた機能を利用する方が現実的です」(プリマ 氏)。

「学部の垣根を越えた総合学では、データの蓄積やビジネス展開をどうするか考える必要がありますが、音声・画像認識やビッグデータ解析の Power BI など、必要なツールがすべて揃う Azure を活用すればこれらの課題を簡単にクリアできます。私たちの取り組みや成果を広く知っていただくことで、ほかの大学でもクラウド活用が拡がり、研究開発のスピードアップにつながればと思います」(村田 氏)。

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