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導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • 効率化
  • 最適化
  • コスト

国立大学法人 広島大学

 様に導入

理系研究に欠かせない HPC 環境を柔軟に確保すべく "新たな学認クラウド" Microsoft Azure を活用。研究費の透明性を保つ課金制度で、負担のない運用を実現

写真:国立大学法人 広島大学

国立大学法人 広島大学

広島大学 情報メディア教育研究センターでは、理系の重要な研究活動を支える計算リソースとして、従来からオンプレミスのクラスター コンピューティング環境を学内共同利用のために構築・運用してきました。その稼働率は常に 95% 前後と高く、急な計算ニーズや新規の研究を促進する上で、新たな計算リソースの確保が課題となっていました。そこで、サーバー ハードウェアの更新時期が迫った 2015 年に、パブリック クラウド サービスを HPC として並行活用するプランを検討。その結果、コスト・機能・信頼性など、さまざまな要件を満たすサービスとして選ばれたのが、Microsoft Azure でした。

<背景とねらい>
「スーパーグローバル大学創成支援事業」や「研究大学強化促進事業」を後押しできる学内 HPC を

国立大学法人 広島大学では、2004 年の「国立大学法人化」という構造変革が実施されて以降、長期ビジョンに基づく、さまざまな変革を実施。2014 年度スーパーグローバル大学創成支援のタイプ A (トップ型) 13 大学の 1 つに、中国四国地方で唯一採択されるなど数多くの実績を積み重ね、11 学部 11 研究科を擁する日本でも有数の総合研究大学として発展してきました。
現在も、グローバル人材を持続的に輩出し、知を創造する世界トップ 100 の大学を目指す「スーパーグローバル大学創成支援事業」、世界水準の優れた研究活動を行うための研究環境を整備する「研究大学強化促進事業」など、教育力・研究力を両輪とした大学改革を強力に推進しています。

そうした取り組みの一環として、2016 年から新たに実施された変革があります。それが、重要な研究活動に欠かせない、学内 HPC (High Performance Computing) 環境へのパブリック クラウド活用です。

写真:国立大学法人広島大学 副理事 (情報担当) 情報メディア教育研究センター長 教授 相原 玲二 氏

国立大学法人
広島大学
副理事 (情報担当)
情報メディア教育研究センター長
教授
相原 玲二 氏

写真:国立大学法人広島大学 情報メディア教育研究センター 教授 西村 浩二 氏

国立大学法人
広島大学
情報メディア教育研究センター
教授
西村 浩二 氏

写真:国立大学法人広島大学 情報メディア教育研究センター 准教授 近堂 徹 氏

国立大学法人
広島大学
情報メディア教育研究センター
准教授
近堂 徹 氏

広島大学では従来から、学内利用に限定して学内のサーバー ルームに、IA サーバーで構成されたクラスター コンピューティング環境「HUC11 (2010~2015年)」「HUC12 (2015年~)」を構築し、日常的な研究に活用。大規模~超大規模な計算には、旧帝大の全国共同利用センターが所有するスーパーコンピューターなどを活用してきました。

しかし、学内の研究活動を促進するためには、「日常的に使用する計算リソースを増強する必要があった」と、副理事 (情報担当) であり、情報メディア教育研究センター長を務める、相原 玲二 教授は言います。

「高度科学技術計算を行う HPC 環境は、理系の重要な研究活動を支える、必要不可欠なインフラです。ここで課題となっていたことは、HUC11 のノード稼働率が 24 時間 365 日、95% 前後であるために『学会が近いので、至急、計算を行いたい』といった急なニーズに対応することが適わなかったことです。しかし一方で、学内の人数比率で考えれば、HPC を必要とする研究者は少数に過ぎません。その少数に対して投資できる予算には限りがあります。」

こうした状況を打開し、十分な計算リソースを確保するために広島大学がパブリック クラウドを採用した背景には3 つの明確な理由がありました。

■ パブリック クラウド導入の主なねらい

  1. 急な研究ニーズにも柔軟に対応できる計算リソースの確保
  2. 大学内 ICT 調達の効率化・健全化
  3. BCP (Business Continuity Plan) への対応

特にポイントとなったのが、「各々が利用する計算機 (インスタンス) の種類と稼働時間に応じて課金し、研究費の適正運用を図ること」でした。
相原 教授は、次のように説明します。

「パブリック クラウドを HPC として活用する場合、事業者からの従量課金が生じます。この費用について、それぞれの研究費から負担してもらうしくみを第一に考えました。パブリック クラウドは、外部から提供されるリソースです。インスタンスの稼働時間に対して請求されるため、研究費用の流れも明確に管理されます。大学にとっても、研究者にとっても、一切の無駄なく HPC を活用することができるのです。
さらに、災害時復旧を考慮すれば、物理サーバーを大学内で管理するオンプレミス環境と、遠方にあってサービス事業者が厳重に管理するパブリック クラウドを併用するメリットは明白です。BCP の実現を大きく後押ししてくれることでしょう。」

こうした明確なねらいの下、広島大学では数あるパブリック クラウドの中から最適なサービスの検討を実施。選ばれたのが、マイクロソフトが提供する Microsoft Azure でした。

<Microsoft Azure の導入の経緯とシステム概要>
「実績」と「信頼」と「価格メリット」の 3 要素を満たしたパブリック クラウドとして、Microsoft Azure を採用

広島大学が HPC として活用するパブリック クラウドを選定する際に、まず重視した基準が、「市場への普及率」であったと、相原 教授は言います。

「パブリック クラウドは数多く存在します。各社が競争を重ねる中でサービスが一層充実し、私たちユーザーにも新たなメリットが生まれていくことでしょう。その点において、大学内で活用するクラウド サービスを 1 つに絞り込むことは考えていません。常に複数の選択肢を擁し、適材適所で使い分けていくことが望ましいと考えます。しかし、どのようなサービスでも良いというわけでありません。活用実績が少なければ信頼性が疑わしくなり、グローバルに普及が進んでいないサービスであれば尚の事、長期的活用に不安も生じます。市場に広く普及し、セキュリティや信頼性の評価も高く、活用実績を積み重ねているサービスであることが、選定の第一条件でした。」

広島大学におけるパブリック クラウド活用は、今回が初めてではありません。
2014 年には、メールなどの学内情報共有基盤に Microsoft Office 365 を採用。その導入に際して、認証基盤となる Active Directory を Azure 上に構築 (ADFS on Azure) した経験があり、Microsoft Azure のデータセンター (東日本リージョン) と広島大学間のレスポンスについても評価するなど、事前準備ができていました。

また、Office 365 導入に際しては、マイクロソフトのボリューム ライセンス プログラムの 1 つである「教育機関向け総合契約 (EES)」を締結しており、Azure のライセンスも一元的に管理できる上に、価格面のメリットまで得られる状態にありました。

こうして、「実績」と「信頼」と「価格メリット」の 3 要素を満たした Azure を活用した新たな HPC 環境は、「HUC12 (パブリック利用)」と命名され、2016 年春からトライアル サービスを開始しています。

学内の「利用登録システム」をカスタマイズして課金などを管理し、クラウド活用におけるガバナンスを大学側が主導

広島大学が新たに構築した学内 HPC 環境は、従来通りオンプレミスで構築された「HUC12」と、Azure を活用した「HUC12 (パブリック利用)」の 2 本立てになっています。学内の研究者たちは、まず基本的な試験や環境構築を、従来通り無償利用できる HUC12 で行い、研究予算に応じた活用を、HUC12 (パブリック利用) で行うことになります。 これは、「研究者・学生にとって "もっとも使いやすい形" を検討した結果」であると、情報メディア教育研究センター 西村 浩二 教授は説明します。

写真 : HUC12

「従来から稼働率の高い HUC11 を、すべてパブリック クラウドへ切り替えた場合のコストを試算した結果、利用料金がとても高額になってしまうことが分かりました。また、計算に必要な環境を構築する作業は、オンプレミス環境で行う方が、スムーズです。そこで、最低限の HPC 環境をオンプレミスで構築し、パブリック クラウドと併用することにしました。」

2015 年の夏にサーバー更新時期を迎えていた「HUC11」は、IA サーバーの性能向上と仮想化技術の併用によって、これまでの稼働実績から割り出した必要な処理能力を満たしつつも、サーバー ハードウェアの台数を大幅に削減。これまで 3 ラックを使用していた構成が、今では 1 ラックでも余裕を感じるほどスリム化されており、コスト低減に大きく貢献しています。

「HUC12」と「HUC12 (パブリック利用)」の HPC 活用に際しては、情報メディア教育研究センターが学内に提供している「利用登録システム」を通じて、申請を行う必要があります。
申請が受理された後に発行される「予約番号」を使って、「HPC ポータル」上でサービスを起動すると、インスタンスが自動生成され、予約内容に準じた「占有クラスター」を利用できるしくみになっています。

図:HUC12 (パブリック利用) 活用フロー

図:HUC12 (パブリック利用) 活用フロー

この「利用登録システム」によって、間違いなく課金できると共に、「企業が提供するサービスと、学内の研究者たちとの接点を、大学側で管理していること」が、パブリック クラウド活用において、もっとも重要なポイントになっていると、西村 教授は強調します。

「"最新の利便性" を "柔軟に運用" できるパブリック クラウド サービスは、大学内の ICT を最適化する目的で、全国的にも、今後さらに活用が進むと思います。ただし、サービス活用におけるガバナンスは、大学側できちんとハンドリングすることが重要です。今回、HPC の課金に関する管理システムを、私たち自身で Azure に合わせてカスタマイズして運用しているのも、それが目的です。サービス事業者に過度に依存することなく、大学として適切な運用を続けていくためには、こうした工夫がとても重要になると思います。」

<Microsoft Azure 導入効果と今後の展望>
リーズナブルかつ効率的に構築した HPC 環境で計算リソースを上限なく、柔軟に活用

こうして運用が開始された「HUC12 (パブリック利用)」は、すでに効果を発揮していると、情報メディア教育研究センターで HUC12 の実運用を担当する 近堂 徹 准教授は話します。

「冒頭に説明があったように、学内の研究者が無償で利用できる HUC11 は、常に 95% 程度の稼働率がありました。そのため、計算に必要とされるノード数によっては、新たな申請をすぐに受理できないケースもありました。しかし、今は Azure を使ったパブリック クラウド環境がありますので、ほとんどの要望に応えることが可能になりました。しかも、リソースに上限はなく、必要なだけサービスを提供することができます。この点は、非常にありがたいです。」

相原 教授は大学経営の観点から見て、「とてもリーズナブルに、高度な理系研究の促進に必要十分な HPC 環境を実現できたこと」と、「利用登録システムという、"研究費の透明性を保ちながらクラウド活用できるしくみ" そのものが、大きな成果である」と強調します。

「オンプレミスとパブリック クラウドを並行活用することで、とてもリーズナブルに、本学が必要とする HPC 環境を整えることができました。また、利用登録システムによる申請・インスタンス生成・課金のしくみが構築できました。このしくみが、当初のねらい通りに機能すれば、学内の予算運用を大きく変革し、研究活動を支える学内 ICT のコストを最適化する取り組みが大きく進展することでしょう。
科学研究費補助金などの外部資金をパブリック クラウドの支払いに充てることができるようになれば、さらに大きな可能性が開けてくると思います。」

SINET5 への接続や学内ホスティング サービスとしての活用など 今後、ますます広がる Azure 活用の可能性

しかし、広島大学における Azure 活用が、その真価を発揮するのは「これから」だと、3 氏は声を揃えます。その理由の最たるものが、「SINET5 への接続」です。

2016 年 5 月 25 日に正式にアナウンスされた Azure の SINET5 への接続によって、「よりセキュアで高速なネットワーク環境が得られるようになれば、HUC12 (パブリック利用) も、さらに便利な存在になるでしょう」と、西村 教授。

また、Azure ExpressRoute という専用線接続サービスを使い、安定した通信速度の確保と、より確かなセキュリティを確保した上で「パブリック クラウドを使ったホスティング サービス」などを実施。学内課金の適用範囲を広げていくことも視野に入れていると言います。

「学内には、研究・学習で生じる膨大な『画像』や『記録映像』などを保存するストレージ サービスへの要望も多く、オンプレミス環境では、容量を確保することが難しい状況があります。その点、EES による Azure のライセンス メリットを活かして、膨大なストレージを、学内に安価で提供することも視野に入れています。
そのほか、Azure の機能やサービスが将来に渡って拡充していくことで、用途も広がっていくでしょう。非常に期待にしています。」(西村 教授)

相原 教授と西村 教授は最後に、「パブリック クラウド活用は、大学内の ICT 環境を支える主流になるだろう」と声を揃えます。

「私たちが今回の調達において意識したことの 1 つに、RFP (提案依頼書) の作成方法があります。今までは、私たち自身が、用途に則したスペックを考慮し、RFP に記載していましたが、今回から『用途・使用規模 (ユーザー数など)・使用頻度』などの情報や要望を記載し、事業者から適切なサービスを提案していただき、試用環境で確認する方法に、意識して切り替えたのです。そうすれば、私たちの手間も少なくなりますし、過剰なスペックに縛られることがなくなります。こうした柔軟な調達が行えるのも、パブリック クラウドのメリットでしょう。今回は特に、HPC という特殊な環境にパブリック クラウドを活用しましたが、日常的に使用する ICT 環境については、全国でもますますクラウド サービスの導入が進んでいくと思います。」(西村 教授)

「パブリック クラウド活用には、非常に多くのメリットが存在します。とは言え、私たち大学組織が理想とするコストやライセンス条件が、一朝一夕に実現するとは考えていません。まずは、大学内に確かな『需要』があることを示し、サービス事業者と対話する必要があると思います。今回の Azure 活用も、将来の理想実現に向けた、重要な一歩となるでしょう。」(相原 教授)

写真:3 名様集合写真

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