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株式会社フジテレビジョン

 様に導入

日本初の 24 時間総合編成のインターネット有料放送「フジテレビNEXTsmart」の提供基盤をクラウド化。加入者の急増から 4K / 8K 放送まで柔軟に対応できる環境を実現

常にメディアの可能性に挑戦している株式会社フジテレビジョンでは、2014 年 3 月から、"第 4 のテレビ" とも位置付けられる、フジテレビNEXTsmart のサービス提供を開始しています。同局では、フジテレビオンデマンドおよび、スカパー!オンデマンドを窓口として提供が開始されたこのサービスの提供基盤を、10 月のニコニコチャンネルでのサービス開始に合わせてクラウド化。24 時間 365 日の放送サービスを支えるに足る信頼性を求め、複数のクラウド サービスを詳細に比較検討した結果、選ばれたのが Microsoft Azure でした。

<導入背景とねらい>
CS とのサイマル (同時) 放送をベースとした、まったく新しいサービス領域を開拓

写真:窪田 正利 氏

株式会社フジテレビジョン
統合開発局 メディア開発センター
ペイTV事業部長
窪田 正利 氏

写真:関 克哉 氏

株式会社フジテレビジョン
統合開発局 メディア開発センター
ペイTV事業部
テクニカルプロデューサー
関 克哉 氏

写真:平野 雄大 氏

株式会社フジテレビジョン
統合開発局 メディア開発センター
ペイTV事業部 推進担当部長
平野 雄大 氏

株式会社フジテレビジョン (以下、フジテレビ) が、メディアの可能性を広げる一手として 2014 年 3 月にスタートさせた新規事業が、フジテレビNEXTsmart です。
フジテレビNEXTsmart は、有料 CS 放送として提供されているフジテレビ ONE TWO NEXT (フジテレビ ワン ツー ネクスト) という 3 つのチャンネルのうち、スポーツやライブ コンサートなどを中心に据えた「フジテレビNEXT ライブ・プレミアム」のサイマル放送 (同時放送) をベースとした、日本初の 24 時間総合編成のインターネット有料チャンネルです。

その特色は、PC やスマートフォンなどマルチ デバイスから視聴できる点にあります。加えて、F-1 やブンデス リーガなどの海外スポーツが日本時間の早朝・深夜に中継されることが多い背景なども考慮して、1戦ごとに切り出して VOD (Video On Demand) 形式で提供する「見逃し配信」というサービスまで実装。視聴者に、時間と場所を選ばない自由な視聴体験を提供しています。

フジテレビNEXTsmart を開始した背景について、フジテレビジョン 統合開発局 メディア開発センター ペイTV事業部長 窪田 正利 氏は次のように説明します。

「国内約 5,500 万世帯に液晶テレビが普及している中で、私たちペイTV事業部がかかわる "有料放送" への加入世帯数は、BS と CS を合わせて約 1,100 万世帯に限られています。その背景には、BS や CS の視聴には、アンテナ工事などの手間が発生するという事情もあります。その点、インターネット サービスであれば、申し込んですぐに視聴できます。さらに、マルチ デバイスに対応することで、外出先でもスポーツや音楽コンサートを楽しむことができます。有料放送の可能性を広げる上で、インターネットへの進出は必要不可欠だと判断したのです」。

フジテレビNEXTsmart にはさらに、同時刻に行われるブンデス リーガの試合を両方ともライブで配信し、どの試合を観戦するかは視聴者が選べるようにするなど、従来の放送では実現できなかったサービスにも踏み込んでいます。このような試みも、「VOD とは異なる、24 時間の総合編成だからこそできる面白さです」と、窪田 氏は続けます。

「テレビの魅力には、『目当ての番組を見た後、チャンネルを変えずにいたら面白い番組に出会えた』という、偶然の楽しさも含まれます。これは、VOD では提供できない面白さです。さらに、『見逃し配信』や試合の選択視聴なども、フジテレビNEXTsmart が、24 時間ライブ放送を行っているからこそ、できる取り組みです」。

フジテレビNEXTsmart が、"日本初のサービスを生み出す" という重荷を負いながら、前述のような新しい面白さを積極的に追求しているのは、「時代の要請でもある」と、同 ペイTV事業部 推進担当部長 平野 雄大 氏は言います。

「今はフジテレビオンデマンドのように放送後の番組をストリーミング配信するサービスが定着しているほかにも、テレビを見ながら、情報をスマートフォンで検索するといった、マルチ スクリーン環境が一般化しています。この流れは不可逆です。いずれ放送とインターネットの境が消える時には、フジテレビが一歩先んじていたいと考え、たどり着いた 1 つの形が、このフジテレビNEXTsmart なのです。放送とインターネット、双方の長所を存分に活かした番組提供を行って行きたいと思います」。

しかし、365 日 24 時間のインターネット放送を支えるインフラの構築は、容易ではありません。2、3 年前に 24 時間のインターネット サービスが構想された当初から、フジテレビではサービスの提供基盤にクラウド サービスの活用を考えていたと言います。

「構想自体は、かなり前から練っていました。そして 2013 年の夏には、クラウド サービスの具体的な検討を始めています。オンプレミスでは、長期的なスケーラビリティや将来的な拡張性の確保が、難しいですから。放送開始後にシステムがダウンしてサービスが途絶えるような事態は許されませんので、約 1 年をかけて、複数のサービスをじっくりと検討しました」(窪田 氏)。

そして 2014 年 7 月に、フジテレビが採用決定したクラウド サービスが、Microsoft Azure だったのです。

<システム概要と導入の経緯>
顔の見える安心感と、過去の実績、そして将来にわたる信頼性を基準に選定

24 時間 365 日の放送に耐えうる信頼性を求めて、国内外複数のクラウド サービスを比較したというフジテレビでは、早い段階から Azure と AWS (Amazon Web Services) の 2 つを最終候補に絞り込み、詳細な検討を重ねてきたと、同 ペイTV事業部 テクニカルプロデューサー 関 克哉 氏は振り返ります。

「映像配信における実績と信頼感をベースに絞り込むと、Azure と AWS の 2 択に落ち着きました。最終的に Azure を選んだ理由はいくつかありますが、個人的にも重要視したポイントが 2 つあります。 1 つは、マイクロソフトの方々に直接相談しながら、アメリカの最新情報を得ると同時に、当社の要望を本社にエスカレーションしていただくなど、柔軟に対応いただけたこと。そして、もう 1 つが、『クラウド ファースト』、『モバイル ファースト』というキーワードが強く打ち出されるなど、Azure に対する "勢い" が感じられたことです」。

さらに窪田 氏も、Azure の実績と信頼感について、次のように話します。

「ソチ オリンピックの際には、約 1 億人を対象とした公式サイトの基盤に Azure が採用され、もっとも人気を集めたアイス ホッケーのアメリカ対カナダの試合では、210 万ユーザーが、HD クオリティの映像をオンライン視聴した実績があると聞いています。これも、非常に大きな安心材料です。さらに、日本リージョンのデータセンターが開設したことによって、通信速度の心配も減りました。クラウドに対する長期的な戦略と、それを支える研究投資など、Azure には、私たちが求める安心材料がすべて揃っていたのです」。

    ■ Azure の採用に至った、主な評価ポイント
  1. 2014 年のソチ オリンピックのインターネット配信の実績 (アメリカ)
  2. 東日本、西日本の 2 つのリージョンを備えた日本データセンターの開設
  3. クラウド分野に対する、積極的な研究投資の実績

高い技術力を持ったパートナーにより、運用負荷のかからない映像管理体制を実現

こうして、2014 年 7 月に採用が Azure の採用が決まると、わずか 3 か月後の 10 月には、ニコニコチャンネルをプラットフォームとしたサービス開始に向けた短期プロジェクトがスタート。当初のスケジュール通りに、無事サービスインを迎えています。

このスピード開発の実現を支えたのが、Azure を活用した映像配信サービスに豊富な実績を持つ株式会社 EVC (以下、EVC) です。EVC は、マルチ デバイスへの映像配信を容易にする Azure Media Services や Azure CDN といった、Azure の標準機能をフルに活用。さらに、EVC 独自の映像管理・配信システムである Bizlat on Azure を使うことで、フジテレビNEXT ライブ・プレミアムのサイマル放送から、「見逃し配信」の VOD コンテンツをリアルタイムで生成し、配信期限の設定などを行って公開するという、複雑な管理を、管理画面上で非常にシンプルな操作で完結できるようになっています。

写真:国分 秀樹 氏

株式会社EVC
代表取締役社長
国分 秀樹 氏

EVC代表取締役社長 国分 秀樹 氏は、次のように説明します。
「フジテレビ様から特にご要望いただいた点は、24 時間 365 日止まることのない信頼性、そして、運用管理の負荷を最小限に抑えることの 2 点でした。信頼性については、Azure の強みである東日本と西日本の 2 つのリージョンのデータセンターにまたがって運用することで、十分な可用性を確保しています。運用負荷の軽減については、Bizlat の管理画面で、コンテンツの登録から配信期限の設定など、管理画面でチェックを入れるだけで設定できるようになっています。これによって、VOD の管理業務も、社内の、最小限のリソースで行っていただけるようになっています」。

そして、フジテレビNEXTsmart の信頼性の確保についてもう 1 点、画期的なテクノロジーが導入されていると、国分 氏は続けます。それが、EVC が開発した「Active Client Switch」です。

「通常のストリーム配信では、サーバー側から提供される複数の映像ソースからどのソースを選択するかは、PC などの端末側の判断に委ねられています。しかし、これではインターネット接続の不確実さを減らすことができません。そこで開発したのが、Active Client Switch です。この技術を利用すると、サーバー側から、端末側へ『このストリームに切り替えるように』と、指示を送り、主体的にストリームの切り替えを制御できます。そのため、サーバーのメンテナンス時に別のストリームを指定したり、災害時には緊急放送に切り替えるなどの管理が、マルチ デバイスを対象としながら、確実に行えるようになります」。

管理イメージ"

国分 氏はさらに、「こうした付加価値の高い開発にリソースを集中できるのも、Azure 活用のメリット」だと言います。

「私が Azure の優位性として感じているのは、Azure Media Services のように、ファイルのエンコード管理やコンテンツ保護機能など、事業者側が必要とする機能が標準で用意されていることです。最終的な配信のしくみとなる CDN についても、アメリカにおけるソチ オリンピック中継で確かな実績を残しています。こうした、確かな機能を活用することで、当社の開発リソースを、独自機能に注力できたことが、非常に大きなメリットとなっています」。

こうして、F-1 のシーズン開始となる 2014 年 10 月から、ニコニコチャンネルにおけるサービスの提供が、滞りなくスタート。同年 3 月に、フジテレビオンデマンドと、スカパー!オンデマンドをプラットフォームとしてフジテレビNEXTsmart がスタートした時点では、フジテレビが持つ既存のデータセンターをインフラとしていましたが、2015 年 3 月からは、フジテレビオンデマンドからの配信も Azure に切り替えられ、安定稼働を果たしています。

<導入効果>
わずか 40 分で加入者数が約 20% も増加するインターネットの変化の速さにも、即応できる安心感

フジテレビNEXTsmart という新たな挑戦が開始されてから約 1 年が経過し、多くの視聴者に歓迎されています。
平野 氏は、「新たな視聴者層を開拓する手応えを感じている」と言います。

「アンテナ工事などの負担もなく、インターネット経由で申し込んだらすぐに視聴できる手軽が受け入れられているのか、入会者数は、好調に推移しています。年齢層も、従来のフジテレビ ONE TWO NEXT に比べて、10 ~ 15 歳若くなっており、視聴者との接点が確実に広がっていることを実感しています。また、Bizlat の管理画面から、トラフィックなどのデータを把握できることも大きなメリットです。プラットフォームごとに異なる人気番組の傾向なども即座に把握できるので今後の番組編成に活かしていけるでしょう。さらに言えば、インターネット媒体では急きょ決まった番組でも、即座に告知できます。こうして、フィードバックとアウトプットの両輪が早められたことで、フジテレビNEXTsmart の進化もスピードアップできると思います」。

窪田 氏も、インターネット放送における視聴者の反応が早いことと、クラウド活用との相性の良さを実感していると言います。

「もっとも印象的だったのは、サッカーの香川 真司 選手が、2014 年 9 月にマンチェスター ユナイテッドからドルトムントに復帰後、初めて出場した試合の中継です。この試合前日の練習を早退したというニュースもあり、香川 選手が注目されていましたが、試合開始 40 分前まで、出場の可否がわかっていませんでした。しかし、公式 HP に香川 選手の試合出場が発表されるや、試合開始までの短時間にフジテレビNEXTsmart への入会が殺到し、約 20% も加入者数が増えたのです。単体のイベントでは、過去最大の加入者増でした。このような変化にも耐えるサーバー リソースを運用できるのは、クラウドだけです。サービスの提供基盤を Azure に切り替えたおかげで、今後は安心して対応できます」。

この安心感は、Azure 活用によって、必要なサーバー リソースを柔軟に増減できることから生まれますが、窪田 氏はさらに、「従量課金制によって、無駄なコスト負担を避けられることも大きい」と続けます。

「オンプレミスで基盤を構築する場合には、どうしてもトラフィックの最大予測に従ってサーバーを調達せざるを得ませんし、一度調達してしまえば、その後も同じ規模を維持し続ける必要が生じます。その点、Azure ならば管理画面から、簡単にサーバー リソースを増減することができ、利用した分だけ課金されます。新たなサービスを開始するにあたって、過剰投資を避けることができるのも、クラウド活用の大きなメリットです」。

UHDTV をグローバルに配信できるシステムで、将来のシェア獲得に一歩リード

さらに、平野 氏は「Azure を活用することで、4K (800 万画素、3,840 × 2,160 ドット) / 8K (3,200 万画素、7,680 × 4,320 ドット) の UHDTV (Ultra High Definition Television : 超高精細テレビ放送) にも対応したシステムが、すでに実現している」と、続けます。

「今回、EVC さんと共に Azure を活用していく中で、その柔軟性と拡張性の高さに感心しています。システムが出来上がってみると、 当初想像していた以上に機能が整っており、4K / 8K への対応準備も完了しています。後は 4K のデータ配信に必要なネットワーク帯域が整ってしまえば、すぐにサービスをスタートできます。その点においても、Azure には、とても満足しています」。

<今後の展望>
数年先の目標に向かって、さらにプロジェクトを加速

4 名様近影。お台場の夜景をバックに

今後のシステム拡張についても、積極的に進めていくと、関 氏は言います。

「今回のシステム構築は、マイクロソフトと EVC と親密なリレーションをもって、柔軟に進めていくことができました。おかげで、私たちが実現したいと思っていた通りのシステムができました。しかし、まだ終わりではありません。今後も、厳しい要求をさせていただくかもしれません。しかし、このチームワークと、Azure のテクノロジーがあれば、クリアしていけるものと期待しています」。

最後に窪田 氏は、次のように締めくくります。

「日本初のサービスを実現させようと、スタッフが一丸となってフジテレビNEXTsmart を推進してきました。しかし 2014 年 3 月にオンプレミスのシステムでスタートした時には運用負荷が高く、スタッフも疲弊していました。そうした環境で加入者が増え続けていけば、運用がもたないだろうという危機感もありました。しかし、Azure への切り替えが進んだ今、何年も先までの未来図が、一気に目の前に開けてきたように感じています」。

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