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導入事例

 様に導入

  • クラウド
  • SaaS
  • 効率化
  • 最適化
  • コスト

株式会社いい生活

 様に導入

SAP ERP を Azure でクラウド化して運用コストを削減しつつ災害対策を強化、
10 分ごとに自動で遠隔地バックアップ

不動産市場に向けたクラウド サービスを提供する株式会社いい生活。同社は、SAP 導入に際して 2009 年に調達したハードウェアが保守期限を迎えるのを契機に、ハードウェアの維持管理、寿命による更新およびその人員確保を含めたコスト ゼロを目指して、すべての社内システムをクラウド化することを決断しました。その第 1 弾として、SAP ERP の Microsoft Azure への移行を実施、大きな成果を上げることに成功しました。

NPO の ASPIC が国内で優秀かつ社会に有益な ASP/SaaS/クラウド サービスを表彰する「ASPICクラウドアワード2015」において、「ESいい物件One」が社会・業界特化系グランプリを獲得

NPO の ASPIC が国内で優秀かつ社会に有益な ASP/SaaS/クラウド サービスを表彰する「ASPICクラウドアワード2015」において、「ESいい物件One」が社会・業界特化系グランプリを獲得

<導入背景とねらい>
社内システムの全面的なクラウド化を目指し、SAP ERP と SAP CRM のクラウド化を決断

写真:株式会社いい生活 Webソリューション開発グループ 業務システム部 部長 長峯 太郎 氏

株式会社いい生活
Webソリューション開発グループ
業務システム部 部長
長峯 太郎 氏

株式会社いい生活は、不動産市場向けの革新的なクラウド サービスを開発、提供している「不動産情報テクノロジー」企業です。不動産業界には売買仲介、賃貸仲介、賃貸管理といった業態が存在しますが、同社の主力サービスである「ESいい物件One」は「物件」に関する情報データベースを核にしてすべての業態における業務を実現、1 つのデータベースに集約することで新たな不動産情報流通のしくみを提供しています。同社はこのサービスの展開を通して、5 ~ 6 年後をめどに顧客企業を現在の約 1,300 社から 5,000 社に増やすことを目標としています。

同社は事業の拡大に備えて社内システムについても積極的なクラウド化を推進しており、中期的にはすべての社内システム用のサーバーを廃止することを目指しています。その理由を、株式会社いい生活 Web ソリューション開発グループ 業務システム部 部長 長峯 太郎 氏は次のように説明します。

「当社顧客は日本全国に広がっていることから、東京のデータセンターが使用不能になる規模の災害を想定した BCP を求められています。しかし、オンプレミス環境では現実的なコストと実効性のある形でこれを策定することは困難と考えていました」(長峯氏)

また、SAP のクラウド化においては運用コストの削減も重要なテーマでした。

「社内システムを担当する業務システム部のスタッフは OA 担当も含めて 6 名です。その人数で最新技術をキャッチアップし、SAP などの業務アプリケーションだけでなくサーバー、ネットワークなどのインフラも運用、管理していく必要があります。しかし、情報システム部門としては IT 活用、業務改善を推進して利益に貢献する活動に注力したい。そこで 2014 年 4 月、最大規模の社内システムである SAP システムの OS /サーバー更新時期が迫っていることや、IaaS 環境がこなれてきたことを背景としてオンプレミスのシステムをなくすという方針を決めました」(長峯氏)

<導入の経緯>
スペックや SAP の認定、東西データセンターなどを総合的に判断して Azure を選択

写真:株式会社NTTデータグローバルソリューションズ CTO Next Generation Platform 推進室長 広木 太 氏

株式会社NTTデータグローバルソリューションズ
CTO
Next Generation Platform 推進室長
広木 太 氏

そこで同社は、SAP のクラウド化の検討を開始。しかし早い段階から、具体的な選択候補は Microsoft Azure と Amazon Web Services (以下 AWS) の 2 つに絞られました。その理由について、同社のオンプレミス版 SAP の保守を担当し、今回のクラウド移行プロジェクトも支援した株式会社NTTデータグローバルソリューションズ (以下、NTTデータグローバルソリューションズ) の広木 太 氏は次のように説明します。

「テクニカル面では、SAP の認定があることと、クラウドとしての性能と信頼性が十分であること。ガバナンス面では、たとえばクレジット カードの認証である PCIDSS など、第三者機関の各種認証がとれているかどうかをチェックしました。この両面で、初期の段階から Azure と AWS に絞られました」(広木氏)

2 つに絞られた段階で、2014 年 11 月からさまざまな検証を開始。社内のシステムの一部を社員の手で両方のクラウドに構築し稼働させてみて、機能、性能、実際の運用感などを確認し、Azure と AWS はいずれも問題ないと判断されました。しかし、最終的に同社の目的に最適なプラットフォームとして選択されたのは、Azure でした。その理由を、長峯氏は次のように説明します。

「Azure では Enterprise Agreement (EA) という契約を結べるのがポイントでした。当初から、SAP システムを始めとした全社内システムをクラウド上で稼働させ最適化するには、試行錯誤が必要だと考えていましたので、一定の金額の中でインスタンスを自由に変更できるマイクロソフトの EA は、当社の目的に合っていたのです」(長峯氏)

また広木氏も、最終的に Azure を推した理由を、次のように説明します。

「当社は AWS も大きく扱っておりますので、そのメリットも十分に理解しています。そのうえで、東西にデータセンターがあってディザスタ リカバリ (DR) システムを容易に構築できることと、マイクロソフトの最新テクノロジを利用できることから、総合的に判断して Azure を選択することになりました」(広木氏)

こうして、2015 年 2 月に Azure に正式決定。3 月にプロジェクトがスタートし、約 4 か月の移行期間を経て、7 月 21 日、SAP ERP が Azure 上で本稼働を迎えることになりました。

<導入の成果>
パフォーマンス向上と業務の効率化、遠隔地バックアップが月に 1 回から 10 分に 1 回へ

写真:株式会社いい生活 執行役員 CIO Webソリューション開発グループ 鈴木 隆喜 氏

株式会社いい生活
執行役員 CIO
Webソリューション開発グループ
鈴木 隆喜 氏

今回のプロジェクトの主眼は、SAP のプラットフォームをオンプレミスから Azure に移行することでした。このため、SAP の機能そのものには、大きな変更点はありません。ただし、Azure への移行により、パフォーマンスとコストの観点で想定以上の効果が得られました。株式会社いい生活 執行役員 CIO 鈴木 隆喜 氏は、次のように説明します。

「パフォーマンスについては、Azure の EA の下、さまざまなインスタンスで試行錯誤できました。その結果、当初の想定よりもパフォーマンスを向上させ、かつコストを抑えることができています。この柔軟さは、一度購入したら簡単には変更ができないオンプレミスにはもちろん、最初にインスタンスをある程度決め打ちしなければならないタイプのクラウド サービスにはないメリットです」(鈴木氏)

さらに情報システム部門は、従来のようなハードウェアのトラブル対応、リプレースなどの作業からも解放されました。

「Azure でシステムを構築しているとき、一度サーバーが落ちたことがありました。もちろん落ちるのはよいことではありませんが、すぐさま復旧した点に Azure のメリットを実感しました。もしもオンプレミスで同じことが起きたら、データセンターまで出向いてハードウェアの修理、交換に立ち会うなど、時間も手間もかかります。その意味では、障害時の復旧においても、クラウドのメリットは大きいと改めて肌で感じました。また、サポートが充実している点も助かっています。当社の情報システム部門は、少人数で社内システムの運用、ユーザー サポートなどさまざまな業務をこなさなければなりません。したがって、インフラ面でしっかりとしたサポートを受けられる Azure は、とても安心感があるのです」(鈴木氏)

特に想定以上の効果が得られたのが、バックアップ業務の効率化と BCP の強化でした。

「以前は毎月 1 回わざわざ担当者がデータセンターまで出向いてテープを交換し、バックアップ後に遠隔地保管する作業を行っていました。しかしこれでは万が一のときに復旧まで数か月を要し、データも最大 1 か月前まで戻ってしまうため実効性には目を背けてきたと言わざるをえません。Azure 移行後は、東日本から西日本のデータセンターに 10 分に 1 回、自動バックアップできるようになりました。東西のデータセンターが非常に安定したバックボーンで結ばれているため、10 分に 1 回でもまったく問題ありません。また、複数部員がオンライン操作のみで西日本データセンターに SAP システムを復旧できるようになり人的リスクも大幅に低減できました」(長峯氏)

なお、バックアップ機能は SQL Server 2014 の新機能である「SQL Server Backup to URL」により実現されました。当初の予定にはなかったものの、プロジェクト進行中にリリースされ、NTTデータグローバルソリューションズ側の提案により実装されたのです。このように、マイクロソフトの最新テクノロジが反映され、標準で利用可能になるのも、Azure を選択したメリットでした。

<今後の展開>
最終的に全システムをクラウド化、情報分析の強化も視野に

SAP 以外の社内システムについても、ハードウェアや OS が古くなったものから順次 Azure に移行し、2017 年には全社内システムをクラウド化する予定です。その際には、今回のプロジェクトで構築したしくみや得られたさまざまなノウハウが活用できるだろうと長峯氏は語ります。

現在は SAP ERP に続いて SAP CRM の Azure への移行プロジェクトが進行中です。SAP ERP と同様にパフォーマンスのチューニングが行われていますが、移行が完了すれば新たな可能性が広がると、鈴木氏は次のように期待を込めます。

「SAP CRM が Azure に移行すると、CRM のデータを分析する BI のプラットフォームも Azure 上で利用できるようになります。Azure のスケーラビリティを活かせば、従来の顧客、契約関連の情報に加えてアクセス ログなどのさまざまな情報を組み合わせて分析可能になります。その先には、Azure Machine Learning の活用といった可能性も広がるかもしれません。システムで管理する情報は事業に活かされてこそ投資した意味があるというものです」(鈴木氏)

株式会社いい生活にとっては、同社のお客様である不動産会社に最良のクラウド サービスを提供することが最も重要なテーマです。社内システムのクラウド化の目的は、堅牢かつ柔軟な業務基盤を現実的なコストで導入し、それによって可能となる情報活用や業務の効率化を通じて広義のサービス向上を実現することにほかなりません。この目的を実現するため、今後も Azure は積極的に活用されることでしょう。

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